少し前にSNS上にて、「水溶き片栗粉で魚焼きグリルの掃除が楽になる」というライフハックが注目されていました。
固まった水溶き片栗粉が吸着シートのような役割を果たすというのです。本当に役立つ技なのか、実際に試してみました。
■ 水溶き片栗粉で魚焼きグリルを簡単お手入れ!実は定番のライフハック
キッチン周りの備品で五徳並みあるいはそれ以上に掃除がめんどくさい魚焼きグリル。もしもこの水溶き片栗粉のライフハックが本当に有用なら、我が家のキッチン掃除に革命が起きるかもしれません。
片栗粉はでんぷんが主成分なため、水に溶いて加熱すると粘度が増して糊状になる「糊化」という現象が起きます。そして糊化した片栗粉を冷却すると今度は粘性が失われゲル状になるのです。このライフハックは片栗粉のこうした性質を利用したものになります。
ちなみに記事化にあたって編集長に相談したところ「これ昔からあるライフハックだから、きちんと調べた方が失敗しないで済むよ」とアドバイスをもらいました。昔からあるんだ、知らなかった。
定番のライフハックの再発見。これがSNSのいいところですね。そしてライフハックとは方法そのものではなく「お前のライフをハックできたか」までがセットではないでしょうか。人には人のライフハック。検証レポートとともにお伝えすることにこそ、大きな意義があると私は考えます。
■ 実際に検証!自宅で魚が調理できない筆者、成功すればキッチン革命だが…
筆者がみかけたSNSの投稿では、水溶き片栗粉の分量までは書いていなかったので、検証の前に編集長のアドバイス通りGoogleで検索しました。
すると分かったのが、基本的な分量は「片栗粉大さじ1に対して、水100ml」。これを基本に、魚焼きグリルのサイズにあわせて、必要な量を用意します。
ネットで調べたところ、一般的なサイズの魚焼きグリルの場合は、2倍のケースと3倍のケースが紹介されていました。どちらに使用か迷ったのですが、今回は3倍を選択。以下の分量で実験を行います。
・水:300ml
・片栗粉:大さじ3杯
片栗粉と水をまぜあわせて、水溶き片栗粉を用意していきます。
出来上がった水溶き片栗粉は、魚焼きグリルの水受け皿に流し込みます。
ちなみに現在の家に住んで2年半ほどが経っているのですが、魚焼きグリルを「魚を焼くため」に使用するのは今回が初めてです。これまで魚を焼くのは基本的にフライパンでした。
というのも我が家は同居人が大の魚嫌いで、臭いでさえダメなため、家で魚を調理することが好ましく思われていないのです。基本的には同居人に配慮して魚を調理しないようにしていますが、ときどき無性に魚を食べたくなることがあります。
そんなときは同居人がいないタイミングで手早く、可能な限り痕跡が残らない方法で調理をする必要があります。なので一発で魚が焼いたと分かってしまうグリルは使用できなかったというわけです。
しかしもしこの水溶き片栗粉のライフハックが有用なのであれば、筆者は今後堂々とグリルで魚を調理することができます。頼むぞ、マジで。
今回焼く魚はサンマです。
今の時期が旬というのもありますが、選んだ1番の理由はフライパンで調理できないから。フライパンで調理するにはサンマは長すぎます。
我が家の魚焼きグリルは片面ずつしか焼けないので5分ほど焼いたのちに一度ひっくり返します。この時点では水溶き片栗粉はまだ糊化しきっておらず、大部分に白みが残っていました。
裏返した面もじっくり焼いていくと、しばらくして水溶き片栗粉の白みが完全に消え、透明になっていました。糊化したようです。
ここから40~50分ほど冷却する必要があるので、グリルは一旦放置します。
放置している間に焼いたサンマを食べます。味付けはやはり王道のおろしポン酢。
前述の通り我が家には焼き魚を食べる習慣がないため、サンマに適した長さの皿がありません。頭も尻尾も皿からはみ出してしまっています。サンマの顔もどこか切なげです。いや料理は見た目じゃない、味だ味!
私は焼き魚として食べるのであればサンマが1番好きなので、今、本当に幸せです。2年半ぶりに食べるサンマ。うまい、うますぎる。
脂ののったジューシーな身と、少し辛めなおろしポン酢のさっぱり感が最高にマッチ。長らく食べていなかったこともいい調味料になっています。
さて食べ終えてちょっとゆっくりしている間に水溶き片栗粉の冷却も終わりました。端から指で摘んで持ち上げると綺麗にシート状になって剥がれていきます。気持ちいいです。
ただ確かに剥がれた部分は汚れがなかったのですが、水溶き片栗粉が均一に混ざっていなかったのか、あるいは冷却不足のせいか、はたまた量が多かったのか、受け皿の奥の方にゲル状になれなかった水溶き片栗粉が残ってしまいました。
受け皿内を完璧に綺麗にすることはできず、結局手洗いをすることに。
そこで悲劇が起こります。
■ 同居人に魚を焼いたことがバレる。ライフハックが“ライフクラック”に
受け皿を洗っている最中に玄関の方で音がしました。心拍数が跳ね上がります。同居人が帰ってきたのです。そしてダイニングに入ってきた同居人の第一声が、
「くっっっっっっっっっっっっさっっっっっっっっっっ!!!」
換気扇は強で稼働させ、窓も全開にしてありました。食べ終えたサンマの骨もビニールに厳重に包装してゴミ箱に入れてあります。にもかかわらず同居人の魚嫌いがもたらす脅威の嗅覚はダイニングに残った微量のサンマ臭を検知してしまったのです。
おまけに私は絶賛受け皿を洗い中。言い逃れはできません。完全に現行犯です。
事情を説明して平謝りし、どうにか今回の件は許してもらえましたが「二度と魚を焼くな」とのお達しが出てしまいました。
今回の方法を使うと、グリルの受け皿はある程度綺麗にできます。ただ冷却のために小一時間ほど待たなければいけないことにくわえ、水溶き片栗粉のゲル化に失敗すると結局は手洗いが必要になります。
手間は減るもののゼロにはできませんし、また全体的な所要時間は増えます。時間より手間、という方にはおすすめのやり方ですが、「お前のライフをハックできたか」と言われると私は頷くことはできません。想定以上に時間がかかってしまったため、同居人が帰ってくる前に作業を完了できなかったからです。
というよりむしろ今回の一件で私は家でほぼ完全に焼き魚の調理ができなくなったので、ハッキングというより“クラッキング”されてしまったと言った方がいいかもしれません。
<参考>
農畜産業振興機構「【まめ知識】でん粉のいろいろ ~特性を知ると、料理の幅が広がります~」
(ヨシクラミク)