「特撮映像館」、2010年最後を飾るのはゴジラに続く大怪獣、ラドンです。大空を舞う超音速の大怪獣。その特撮は屈指の出来でした。
『ゴジラ』に続く大怪獣として、怪奇実話などで知られる作家、黒沼 健に原作を依頼して誕生した作品。ちなみに東宝特撮作品では初のカラー撮影でもある。
原作にあたる黒沼 健の『ラドンの誕生』は映画公開に先だって「中学生の友」昭和31年10月号の付録として発表されたが(映画公開は同年の12月26日)、香山 滋が『ゴジラ』の小説版でしたように、黒沼も主人公を少年に設定するなど映画本編とはところどころ違う点もある。また小説版では古代生物であるラドンが現代に蘇る理由として地球の温暖化を大きく取り上げているが、映画本編では理由として弱いと見たのか、「地球が温暖化しているようだ」というセリフにとどまっている(加えて平田昭彦演じる古生物学者の推論として核兵器の影響をあげている)。
ストーリーは、九州・阿蘇山近くの炭鉱に始まり、炭鉱に事故が起こり、行方不明者や捜索に入った人々が鋭い刃物のようなもので殺されているのが発見される。行方不明となっている男のひとりが犯人と目されたが、実はメガヌロンという古代昆虫の幼虫の仕業だったことがわかる。
炭鉱内でメガヌロンを退治しようとしたとき落盤が起こり、主人公である河村は行方不明となってしまう。ところがしばらくして阿蘇山付近で起こった深度の浅い地震によってできた陥没地帯で河村は発見される。しかし河村は記憶をすっかりなくしていたのだった。
同じころ航空自衛隊が未確認の超音速飛行物を発見。追跡するものの飛行物体のために撃墜されてしまう。飛行物体は九州を中心に周辺の空で目撃され旅客機が墜落するなどの被害も起こるのだった。そして阿蘇火口付近で行方不明になったカップルが落としたカメラに移されたフィルムから巨大な生物の羽のようなものが確認されるのだが…。
記憶をなくした河村は文鳥の卵を見て、落盤事故のあと迷い込んだ地下の空洞で巨大な卵から孵る生物と、その生物がメガヌロンを餌としてしていた光景を思い出すのだった。
そしていよいよハッキリとその姿を現したラドンは戦闘機の攻撃により福岡の街に降下、多大な被害をもたらすのだった。
戦車や戦闘機による攻撃の中、もうひとつの飛行物体が福岡に飛来する。ラドンは2匹いたのだ。
阿蘇火口の洞窟の中を巣とするラドンに対して、決死の攻撃が始まる。
鳥型の巨大生物は造型的にも撮影的にも難しいようで、円谷作品でも鳥型の生物が登場するとどうも「作り物」的に見えてしまうことが多い。が本作においてはそうとうな努力があったようで、少なくともぬいぐるみアクターが入った状態でのシーンでは翼のある巨大生物が違和感なく鑑賞できる(ところどころ頭を支えるピアノ線が見えてしまうのは残念だが)。
またラドンの羽ばたきによる風圧で建物などが吹き飛ばされるシーンは、その後もゴジラ作品やウルトラシリーズなどでも流用されている見事な撮影である。
佐原健二はこれが初主演作品。撮影の裏話などは『素晴らしき特撮人生』という自叙伝にも語られている。もっとも苦労したという記憶喪失状態の演技も初主演とは思えないしっかりしたものだった。
監督/本多猪四郎、特技監督/円谷英二
キャスト/佐原健二、白川由美、平田昭彦、ほか。
1956年/82分/日本
(文:猫目ユウ)