「特撮映像館」、今回は数々のアニメ作品や特撮作品にかかわってきた樋口真嗣監督の『ローレライ』を取り上げます。その見どころはいえば、やはり…。
『新世紀エヴァンゲリオン』などのアニメ作品や平成『ガメラ』シリーズの特撮監督として知られる樋口真嗣が監督した本格的な劇場映画の第一作といってもいいだろう。
広島に原爆が投下された直後、極秘の命令によって、ドイツが開発した新兵器「ローレライ」を搭載した潜水艦「伊五○七」が発進する。合衆国のさらなる原爆投下を阻止するのがその使命だったのだが…。
ほとんどのシーンは潜水艦内という狭いスケールではあるが、その狭苦しさはあまり効果的には見せられなかったような気がする。
本作の見どころはなんといっても香椎由宇。旧海軍の軍服を来た男たちに混ざってサイバーなコスチュームを着込んだ彼女の存在こそがこの映画のポイントだ(もちろん映画のタイトルでもある「ローレライ」に関係していることもあるわけだが)。これは『新世紀エヴァンゲリオン』の第1話における綾波レイの登場シーンにも似ているような気がする。まったく場違いなのにそこに存在しているという違和感がそのあとの展開を知りたいという興味になるのだ。
作品としてまとまっているしよくできているのだが、できればもう少し「ローレライ」の活躍(?)を見たかったという気もする。
潜水艦自体がドイツ製ということで、そのデザインなども日本海軍のものとは異なっているのだけれど、「ローレライ」という特殊装置を艦から切り離して使用するところなど、どうしても小沢さとるの潜水艦マンガを連想してしまう。
本編のほか特撮も樋口自身が担当。絵コンテでは庵野秀明が協力している。
架空戦記もの、SFファンタジーとして見るのもいいが、役所や柳葉といった俳優たちによって戦争映画(潜水艦映画)としても充分リアリティーのある仕上がりになっている。
余談だが、かつて石黒 賢はテレビドラマ『振り返ればやつがいる』に出演した際、共演の織田裕二が演じたような悪役をやってみたいと語っていたが、本作ではその希望がかなったような役柄だった。
監督/樋口真嗣
キャスト/役所広司、妻夫木聡、香椎由宇、石黒 賢、柳葉敏郎、堤 真一、鶴見辰吾
、ほか。
2005年/128分/日本
(文:猫目ユウ)