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【特撮映像館】Act.51 モスラ

update:

「特撮映像館」、第51回は今年生誕50年になる「モスラ」の登場です。「ゴジラシリーズ」にも何度となく登場し、人気の高い「モスラ」。そのイメージは原点である本作から変化していないのかもしれません。

ある意味ゴジラよりもそのイメージが固定してしまっているのがモスラではないだろうか。本作はその初登場作品である。
『ゴジラ』『空の大怪獣ラドン』に続いて制作された本作の原作は中村真一郎、福永武彦、堀田善衛の合作(連作)による。


  • ティラノサウルス型のゴジラ、翼竜のラドンなど爬虫類・恐竜のイメージから離れ、モスラは巨大な昆虫になった。卵から幼虫が誕生し、繭を作って成虫になるというモスラの変化も本作のアピールポイントになっていた。
    またファンタジックな世界観を打ち出し女性を中心にしたファミリー層の観客も意識したようだが、フランキー堺やザ・ピーナッツなどのキャスティングにもそれはうかがえる。

    それにしてもフランキー堺の存在感は大きい。
    確かにモスラの映像はそれなりにインパクトもあり登場シーンも少ないわけではないのだが、ドラマシーンの印象が格段に強い。加えてザ・ピーナッツの歌がそれを後押しする形でドラマを盛り上げる。また『ゴジラ』では山根博士や芹沢博士の苦悩には触れられていたがもうひとつ踏み込めていなかった感があったが、『モスラ』では登場人物たちの心情もそれぞれに描かれているように感じられた。

    モスラはインファント島の住民、そして意志を通じ合える小美人(ザ・ピーナッツ)を守護するという本能から、目標を達成するために都市を破壊してしまう。インファント島は原水爆実験場となったわけだが、モスラ自体は核エネルギーによって巨大化したり狂暴化したわけではない。作品冒頭には原水爆実験の放射能に触れているものの、小美人の登場以後はそれは一気に押しやられてしまってもいる。

    とはいえ明確な「世界平和」のメッセージを持つ本作はその後の「モスラ」という怪獣のイメージへとつながっていたと思われる。しかし『モスラ対ゴジラ』『ゴジラVSモスラ』が本作のストーリーをなぞったような作品になってしまったのはどうにも不可解という印象はある。それだけ本作が「モスラ」に与えた印象、メッセージ性が強かったということなのかもしれない。

    監督/本多猪四郎、特技監督/円谷英二
    キャスト/フランキー堺、小泉 博、ザ・ピーナッツ、香川京子、ジェリー伊藤、ほか。
    1961年/101分/日本

    (文:猫目ユウ)

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    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
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