「特撮映像館」、今回は松竹映画の『昆虫大戦争』を取り上げます。タイトルなどからイメージするパニック映画的な印象とは裏腹に、思いテーマを含んだシリアスな作品です。衝撃のラストにも注目。
宇宙怪獣 ギララ』の二本松監督によるSFパニック(?)映画。
猛毒を持った昆虫の群れが人類の絶滅を企てるというのが主な流れではあるが、東西冷戦下の世界で、反戦・反核をテーマにしたシリアスな作品でもある。
昆虫軍団には蜜蜂を使っており、針で刺されるというイメージと羽音で恐怖心を喚起させてはいるが、実際見ているともっとグロテクスな昆虫であったらという気もしてしまう。
水爆を積んだ爆撃機が昆虫の群れに襲われて墜落。パラシュートで乗員と水爆は難を逃れるが、水爆の落下地点はわからなくなってしまう。
アウシュビッツで生き残った女性が、人間不信から毒虫を育てていたりもするが、実のところ昆虫自身の意志で人類の滅亡を目指していることがわかる。それは核という人類以外にもあらゆる生物を滅亡させる兵器を作り、使おうとしている人類に対する自然界からの意志表示ともいえる。
さらにラストが衝撃的。一縷の望みを残しつつも登場人物のほとんどが死んでしまうという絶望的な展開となっている。
特撮は協力という形で日本特撮映画株式会社が参加。川上景司らの名前がクレジットされている。
松竹で作られた怪獣がギララだけだったのは残念であるし寂しい感じがしていたが、本作を見て、怪獣映画が子ども向けになってしまっていた時期に、怪獣を扱ったシリアスな特撮映画が難しかったのではないかという気がした。
とはいえ日本においては特撮でシリアスな内容を描くということがそのあと定着しなかったのは残念なことである。
監督/二本松嘉瑞
キャスト/園田啓介、川津祐介、新藤恵美、チコ・ローランド、キャシィ・ホーラン、ほか。
1968年/84分/日本
(文:猫目ユウ)