「特撮映像館」、今回から大映の妖怪三部作を紹介していきます。現在でもファンの多いシリーズでもありますし、改めて鑑賞してみるのもいいでしょう。また未見の方はこの機会にぜひシリーズ三作を鑑賞してみてください。

まずはシリーズ第一作『妖怪百物語』。大映がスクリーンに登場させた妖怪たちの怖さとひょうきんさがファンの心をつかみました。


大映の妖怪三部作第一弾としてあまりに有名な一作。全体として怪奇な雰囲気の仕上がりとなっているが、からかさお化けのシーンなどでユーモラスな演出もあり、子供の観客にも楽しめる。

本作の冒頭で「百物語の会」の説明があり、会の終わりにはおまじないをすることが語られ、本編で悪役となる但馬屋が百物語の会の後おまじないをしなかったことで妖怪にたたられるのをさりげなく説明している。同時に古い社を取り壊すなどたたられる要素は複数出てくる。

二作目、三作目にも登場する妖怪のほとんどは本作で登場しているが、造形そのものは使い回しということではなかったようだ。ちなみに本作でインパクトのあるエピソードになっているろくろ首は『妖怪大戦争』に登場しているものの方が肌の質感などはいいようだ。妖怪のデザインは水木しげるがほとんどを担当し、一部大映映画の『赤胴鈴之助』に登場したものを改造したりしたものもあったようだ。

この時期、テレビではアニメの『ゲゲゲの鬼太郎(白黒)』の放送も始まり、怪獣ブームから妖怪ブームに移行していくことになるのだが、本作もそのきっかけのひとつになったのはいうまでもない。アニメに登場する妖怪たちの実写版といえなくもないという気がする。ちなみに怪獣ブームの中で放送された水木しげるの『悪魔くん』にはブームの影響から怪獣のような妖怪が登場していたが、ゴジラと人気を二分するガメラを生み出した大映から妖怪ブームのきっかけとなる本作が、水木しげるのデザインで映像化されたのも面白い。

また落語ファンには但馬屋で催される百物語の会に登場する林屋正蔵も見逃せないだろう。ここで語られるエピソードとして登場する「おいてけ堀」のシーンは本作のなかでも印象に残るもののひとつ。正統的な怪談といえるだろう。

印象に残るといえば三作共通していえるものだが、ラストシーンの百鬼夜行だろう。本作で描かれるそれは「百鬼夜行図」の映像化ともいえるもので、まさに怪奇な雰囲気とユーモラスな雰囲気が融合した見事なシーンといえるだろう。

公開時の併映は『ガメラ対宇宙怪獣バイラス』で、予算的にも厳しくなったガメラに比べてしっかり作られた感のある本作でもあるので評判もよく、すぐにシリーズ化が決まったようだ。

監督/安田公義 特技監督/黒田義之
キャスト/藤巻 潤、高田美和、平泉 征、坪内ミキ子、ルーキー新一、吉田義夫、ほか。
1968年/79分/日本

(文:猫目ユウ)