「特撮映像館」、今回は2003年、Gackt、HYDEが主演した吸血鬼テーマの作品「MOON CHILD」を取り上げます。アジアの架空の都市を舞台に、そこに生きる少年が出会った吸血鬼は…。激しいガンアクションも見どころのひとつです。

Gackt原案の吸血鬼テーマの近未来SF(?)映画。


吸血鬼映画といえばサイレント時代からブラム・ストーカーの原作を映像化した作品などがあり、『ノスフェラトゥ』『魔人ドラキュラ』やクリストファー・リーの「ドラキュラシリーズ」など映画の1ジャンルといってもいいほどの作品が作られている。70年代までは吸血鬼といえば「ドラキュラ」、ブラム・ストーカーの原作を基にしたものがほとんどで、そのアレンジだったり映画独自の続編だったりしたわけだが、『インタビュー・ウィズ・バンパイア』以降、新しいイメージの吸血鬼映画が作られるようになった印象がある。

日本でも岸田 森の「血を吸うシリーズ」などがあるが、日本を舞台にするということや吸血鬼そのものが西洋からの輸入という印象からか、ストーカーの原作とは離れた作品であることが多かった。本作は新しいイメージによる吸血鬼モノになるわけだが、陽の光で滅びるという吸血鬼の基本的な設定以外は自由に扱われているようだ。また吸血鬼の恐ろしさという恐怖映画的な流れではなく、人の血を吸わなければ生きていけない、あるいは永遠に生き続けるということの哀しさに焦点を当てている。

吸血鬼モノというとキバなどの特殊メイクを想像するが、本作では特に特殊メイクはない。特撮部分に関しても吸血鬼の常人以上の動きを表現するところで使われている以外はとくに吸血鬼としての能力を特撮で表現するということはなかった。このこと自体が吸血鬼を新しい視点で描こうとしているためという印象もあるのだが…まあ予算がなかったからということではあるまい。

舞台設定はアジアの架空都市で、経済破綻した日本からの移民があふれている街。ロケは台湾で行われたようだ。
「MOON CHILD」というタイトルはなかなか素敵で吸血鬼をイメージさせるのには十分であり、作品中月の映像も印象的に使われているのだが、もう一歩、タイトルに結びつくような台詞回しが欲しかったような気もする。

ミュージシャンが主演した映画ということで敬遠するむきもあるかもしれないが、作品としてはなかなかの仕上がり。寺島 進や山本太郎の演技もいい。ちなみに山本は本作でブルーリボンの助演男優賞を受賞している。

監督/瀬々敬久
キャスト/Gackt、HYDE、ワン・リーホン、ゼニー・クォック、寺島 進、山本太郎、石橋 凌、ほか。
2003年/119分/日本

(文:猫目ユウ)