アメリカ海軍の強襲揚陸艦ボノム・リシャールで発生した火災は、出火から丸4日たった2020年7月16日、ようやく鎮火に向かいつつあると、ボノム・リシャールが所属する第3遠征打撃群司令官のフィリップ・E・ソベック少将が記者会見で明らかにしました。いまだに火元は分かっておらず、被害の程度も判明していません。
前方配置されていた佐世保から定期整備のため、2018年にカリフォルニア州のサンディエゴ海軍基地にやってきていた強襲揚陸艦ボノム・リシャール。火災が発生したのは、現地時間7月12日の朝8時30分ごろです。
定期整備中のため、1000名あまりいる乗組員はほとんどが艦を離れており、火災発生時に艦にいたのは160名ほど。艦の消防隊を除いてはすぐに避難し、火災での負傷者は海軍側で17名、民間人が4名が病院で手当てを受けましたが、全員が軽傷です。
火元不明の火災は艦内に広がり、サンディエゴ海軍基地消防隊、サンディエゴの連邦消防隊らも駆けつけて消火作業にあたります。火の勢いが強く、密閉空間の艦内では温度が上がって消防隊が活動できないので、上空からHSC-3のMH-60Sが飛行甲板に、海側からはタグボートが船体に放水し、温度上昇を防ぎます。
一時は艦橋構造物の頂上からも炎が噴き出す状態になったボノム・リシャール。昼夜を分かたず消火作業は続きます。
発生から3日目となった7月14日、サンディエゴに停泊していた空母エイブラハム・リンカーンなど12隻の消防隊、4か所の連邦消防隊、そして近傍の海兵隊からも消防隊が駆け付け、消火作業に加わりました。幸い燃料タンクには影響がない、という情報もソベック司令官から発表されています。
発生から丸4日が経過した、現地時間7月16日16時20分に出されたソベック司令官のステートメントによると、発見できた火についてはすべて消すことができたとのこと。ただ、まだ分からないところで燃えている可能性は残されています。
艦を外側から冷やし、消防隊が艦内で活動できるようサポートしていたHSC-3の空中放水は昼夜1500回以上におよび、同様にタグボートからも休みなく放水が続けられました。また、消防隊のうち海軍側で40名、民間人23名が消火作業中に煙を吸い込むなどで手当てを受けたとのこと。
現在のところ、まだ火元は分かっておらず、被害の状況も把握できていないとのことで、ソベック司令官は「船が今後どうなるか、それを口にするのは時期尚早だ」としています。艦内各所をくまなくチェックし、すべての火を消し止めてからでないと被害の調査は始められない、と発表されました。
7月17日には海軍の制服組トップ、マイク・ギルデイ作戦部長(CNO)がボノム・リシャールを視察。火災の状況を直接確認しています。
この火災の消火作業が続く中、7月15日にはアメリカ級強襲揚陸艦の2番艦、トリポリ(LHA-7)が就役し、ボノム・リシャールと同じ第3遠征打撃群に配属されました。
新しい強襲揚陸艦が就役したものの、火災でボノム・リシャールは大きなダメージを受けており、当初予定していたスケジュールで戦列復帰するのは不可能な状況。修復するか廃棄になるかは現時点では分かりませんが、アメリカ海軍にとって大きな痛手であることは間違いないようです。
<出典・引用>
アメリカ海軍 ニュースリリース
Image:U.S.Navy
(咲村珠樹)