4月6日、海上自衛隊鹿屋航空基地を飛び立った、航空自衛隊飛行点検隊の飛行点検機U-125が消息を絶ち、捜索の結果、鹿屋航空基地の北方に位置する高隈山地の御岳で、墜落した機体が見つかりました。乗員6名も死亡が確認されています。
事故原因については現在のところ、全く判りませんので言及することは避けます。ここでは飛行点検隊の業務や、パイロットについてご紹介しておきます。
飛行点検隊は航空自衛隊の航空支援集団に属し、埼玉県の入間基地に所在しています。任務は、陸海空自衛隊の全43飛行場にある、165の各種航空保安施設の飛行点検です。
現在、飛行点検機(フライトインスペクター)としてYS-11FCとU-125、それぞれ3機ずつ保有して任務に当たっています。機体は遠くからでも視認できるよう、赤と白の目立つ塗り分けがなされています。
飛行場には、航空機の飛行を支援する様々な施設があります。代表的なものでは、飛行場の位置を知らせる無線施設や、着陸時に滑走路の向きや正しい進入角を知らせる無線や光学施設など。これらが正しく設置され、正常に作動していなければ、航空機は正常に飛行することができませんし、事故にもつながります。
これらが正常に作動していることを点検するのが、飛行点検隊なのです。定期的な点検のほか、施設の装置が更新された際にもやってきて、その都度点検を行います。
飛行点検隊のパイロットは、非常に高い操縦技量が求められます。というのも、航空保安施設が正確に作動していることを確かめるには、何より自分が「正しいコースを正確に」飛行しなければなりません。しかも確認の為、一度だけでなく何度も同じコース、同じ高度を正確に飛行することも要求されます。
この為、飛行点検隊のパイロットは、死亡した機長の平岡3佐のように、元ブルーインパルスの飛行班長(1番機・編隊長)や、操縦教官資格を持つ人材が揃っています。テストパイロット同様、腕利き揃いの飛行隊なのです。
腕利きのパイロットが操縦していてもなお、事故が起こってしまったのは痛恨の極みです。特に機長の平岡3佐は、ほんの少し前までブルーインパルスに在籍していたこともあり、航空祭でサインをもらったり、華麗な展示飛行を目にした方も多いでしょう。
一体事故機に何が起こったのか。事故原因の究明が待たれます。
(文:咲村珠樹)