トリック・オア・トリート! 10月31日はハロウィンです。古代ケルトの民間信仰に端を発するとされるもので、日本でいうなら収穫祭とお盆が一緒になったような行事ですが、今ではすっかり「コスプレして歩き回る日」みたいになってますね。2017年の今年は当日が平日ということもあって、すでに繰り上げてイベントを実施したところも多いようです。

 子供たちが思い思いの仮装をして「トリック・オア・トリート!」とお菓子を求めて様々なところを回る姿はかわいらしいのですが、特に車椅子に乗る身障者の場合、なかなか仮装をして歩き回るのは難しいものです。でもやっぱり、仮装して楽しみたいという願いを叶えられたら……。

 その点ハロウィンの本場、アメリカは違います。「車椅子も一緒に仮装しちゃえばいいじゃない!」とばかりに、造形師たちが子供たちの車椅子をステキに改造。なりたいキャラクターに合わせた姿にして仮装(コスプレ)を実現しちゃう慈善団体がオレゴン州に存在します。その名も『Magic Wheelchair』。

MagicWheelchair

 この団体の創設者であるウェイマー夫妻には5人のお子さんがいるのですが、そのうち3人が脊髄性筋萎縮症(日本では指定難病になっている)で車椅子なしでは生活できない状態でした。毎年ハロウィンに、お父さんのライアンさんが子供たちの車椅子に装飾してコスプレし、パレードに参加していたそうです。ある時それがニュースで報道され、それを見た車椅子のお子さんを持つ親御さんから「ウチの子にも作ってほしい」という依頼が世界中から寄せられました。これをきっかけに2015年「すべての車椅子の子供たちに笑顔を」を合言葉に、この団体の活動が始まったのです。

 これまでに様々な『車椅子コスプレ』が誕生しました。ハロウィンだけでなく、各地で開かれるコミコン(コミケットに類似したコミックやゲーム、SF、ファンタジー作品のファンイベント)でのコスプレも行なっています。最新作はサンディエゴのコミコンで披露された、2017年11月公開の映画『ジャスティス・リーグ』に登場するDCコミックスのヒーロー&ヒロインたち。バットマンにワンダーウーマン、フラッシュ、サイボーグと、それぞれのキャラに合わせたコスチュームと、乗り物に仕上がっていますよ。しかし見事な造形。





 他にもミュータント・タートルズとかポケモン、スターウォーズに出てきたスピーダーバイクに乗った惑星エンドアの住人、リトルマーメイドに扮したものもあります。




 もちろん、作品のコスプレ以外にも、子供たちの夢を実現したようなものも。消防士さんになりきってみたり、豪華なキッチンでスターシェフになったり……。なにより、子供たちの笑顔が印象的です。


 これらのコスプレにかかる費用や運営費については、協力企業や一般の人々からの寄付や、クラウドファンディングでも資金調達をしています。クラウドファンディングでは、有効なクレジットカードを持っていれば日本からも寄付が可能です。

 日本でも車椅子でコスプレを楽しむ方がいるのですが、車椅子まで改造するというのはなかなか目にすることがありません。日本でもこんな車椅子コスプレが、笑顔とともに広がるといいですね。

(咲村珠樹 / 画像提供:Magic Wheelchairメディアセット)