「うちの本棚」第三十回は、超短編作品の名手、阿保美代をご紹介いたします。
あまり知られていないが阿保美代という漫画家がいる。このひとは短いときは見開き2ページで心に響く物語を描いてしまう。
けっこう多くの作品を描いているのだが、その大半が4~5ページの、小説で言えばショートショートのような作品なので、単行本としては5、6冊程度にしかまとめられていなかったりする。
ひとことで言うとファンタジーや童話チックな作品を多く描いているのだが、短いページでまとめるということもあってか画面構成の自由さも魅力である。
この「陽だまりの風景」は阿保の2冊目の単行本だったと思う。目次に記されたタイトルは6作品だが、「ある村の詩(うた)、」「ロマンシリーズ」など、その中に短い作品がいくつか含まれているものもある。というか、それが阿保作品の大半なので、この単行本に納められた『トク トク トク』『霧のむこうに…』などの10ページを越える作品はむしろ珍しいといえる。
もし、少女マンガ名作全集のようなものを企画するとしたら、ぜったいに阿保美代はラインナップに含めたい。この人の作品にはそれだけの輝きがいまもあるのだから。
書 名/陽だまりの風景 著者名/阿保美代 出版元/講談社 判 型/新書判 定 価/350円 シリーズ名/フレンドKC 初版発行日/昭和52年6月15日 収録作品/ある村の詩(うた)、トク トク トク、とても美しい小さな朝、ロマンシリーズ、ティルの誕生日、霧のむこうに… |
■ライター紹介
【猫目ユウ】
ミニコミ誌「TOWER」に関わりながらライターデビュー。主にアダルト系雑誌を中心にコラムやレビューを執筆。「GON!」「シーメール白書」「レディースコミック 微熱」では連載コーナーも担当。著書に『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』など。