おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

生や半生のジビエ食べたら6カ月は献血しないで!日本赤十字社が注意を呼びかけ

 野生の鳥獣たちを捕獲して食用とするジビエ。シカやイノシシなどが人気で、害獣駆除と食肉利用の一石二鳥の効果がある一方、思わぬ危険もあるようです。

  •  平成30年1月31日に開催された平成29年度第5回薬事・食品衛生審議会薬事分科会血液事業部会運営委員会において、輸血により、患者さんがE型肝炎ウイルス(以下HEV)に感染した事例が報告されました。2月1日に報道された内容によると、多発性骨髄腫の治療を受けていた80代の女性が輸血由来の血液製剤を通じてE型肝炎ウイルスに感染し、約100日後に劇症肝炎を発症して死亡したケースが報告されたという事です。この事例では、献血の2か月前にシカの生肉を食べた供血者がHEV感染に気が付かないまま献血に行ってしまい、血液中にHEVがある状態にもかかわらず検査をすり抜けて血液製剤化され使われてしまった結果のようです。

     献血された血液は誰がいつ献血したものかを明確にしており、血液製剤も誰の血液から造られているか一つ一つ把握できるようになってます。これまで、HEVの検査は感染率の高い北海道地区でのみ献血時の検査に組み込まれていましたが他の地域での感染者によるこうした事故は発生していなかった為、献血時の検査に含まれていませんでした。

     これを受けて、日本赤十字社は2018年3月9日付けで「E型肝炎ウイルスに対する安全対策へのご協力のお願いについて」という発表を出し、HEVに感染するリスクのあるブタ、イノシシ、シカの肉や内臓を生又は生焼けで食べた人は、狩猟解体や食べた時点から6カ月間は献血をしないよう呼び掛けており各血液センター・献血ルームにもポスターなどの掲示で呼びかけています。

     HEVは野生の獣肉に多く、しっかり加熱すればウイルスが死滅するので特に問題はないのですが加熱が不十分な場合は獣肉の血液内にウイルスが死滅せず残ってしまう為食べた人はHEVの保菌者、または感染者となります。

    ■E型肝炎(HEV)って怖い?

     肝炎ウイルスにはたくさんの種類がありますが、特にA、B、C、E型がよく知られています(ちなみにD型はB型がいないと増殖できない不完全なウイルスと言われており悪さをした試しがないため無視されています)。このうちAとEは感染しても約半年で感染している期間が終わる上、A型に至っては非常に一過性で劇症化もありますが、症状が出ても対症療法で治ります。

     よく問題視されているB型とC型ですが、一度感染するとウイルスが残り持続的な感染状態となってしまい肝硬変や肝臓がんなどの原因となる為、インターフェロンによる治療などが必要となります。この2つは主に血液や体液などからの感染が主なルートとなります。ちなみにワクチンがあるのは現在A型とB型。B型肝炎は未然に防ぐ事ができる為ワクチンの接種が推奨されており乳児の標準接種スケジュールにも組み込まれています。

     今回問題視されているE型は、A型とともに汚染された水や食品などによる経口感染が主な感染ルート。ジビエの生食で感染が成立してしまう事から今回の血液製剤による劇症肝炎の発生に繋がったといえます。ジビエの解体時などに獣肉の血液などが口や粘膜内に飛んで感染する事も。付着したHEVが増殖し発症するまでの間(潜伏期間)は約6週間と言われており、悪心、食欲不振、腹痛等の消化器症状を伴う急性肝炎となります。症状としては、褐色尿 を伴った強い黄疸が急激に出現し、これが12〜15日間続いた後、通常発症から1カ月を経て完治という経過。対症療法で治まってしまうのが多いのですが、怖いのが、免疫力や体力が低下している場合の感染。劇症化に繋がり急激な激しい症状は時に命にかかわる事も。高齢者や妊婦の死亡率が高い事も知られています。

     こうした事を防ぐため、今回、日本赤十字社は野生の獣肉を生や半生で食べた場合の献血は最低6か月はしないよう呼びかける事となりました。現在、日本赤十字社では北海道で行われているHEVの検査を全国的に行うように対策を進めています。

     しっかり加熱処理していれば野生の獣肉も特に怖くはないのですが、ジビエがブームになっている今、野生の獣肉の扱いには特に気を付けていってもらいたいと思います。

    <参考資料>
    E型肝炎ウイルスに対する安全対策へのご協力のお願いについて|日本赤十字社
    E型肝炎とは|国立感染症研究所
    E型肝炎ウイルスの感染事例・E型肝炎Q&A|厚生労働省

    (梓川みいな / 正看護師)

    あわせて読みたい関連記事
  • セルフケアに積極的な新社会人はワークライフバランス重視の“二刀流”!?第一三共ヘルスケアの調査で明らかに
    社会, 経済

    セルフケアに積極的な新社会人はワークライフバランス重視の“二刀流”!?第一三共ヘ…

  • HPVワクチンのキャッチアップ接種、期間が延長されているの知ってた?
    社会, 経済

    HPVワクチンのキャッチアップ接種、期間が延長されているの知ってた?

  • 井上咲楽さん公式Xより
    エンタメ, 芸能人

    女優・井上咲楽、気づくと右目が緑色に!心配の声が上がるも「大丈夫なやつです」

  • Geroさん公式X(@Gero2525)より引用
    エンタメ, 芸能人

    Geroさん、尿路結石再発も「ビッグサンダーマウンテン療法」に異論

  • 「格付けチェック!」で話題のカンガルー肉はどれほど牛肉と味が似ているのか?食べ比べてみた
    グルメ, 食レポ

    「格付けチェック!」で話題のカンガルー肉はどれほど牛肉と味が似ているのか?食べ比…

  • (写真左から)江崎グリコ株式会社 健康イノベーション事業本部 商品開発部の池田紀子さん、日本料理店「和敬」店主の竹村竜二さん、江崎グリコ株式会社 執行役員の木村幸生さん
    企業・サービス, 経済

    江崎グリコ、「おいしく減塩」に挑戦 減塩食品の革命を宣言

  • 「煩悩祭り2024」にて50個限定のメニューとして登場。価格は1つ1980円。
    商品・物販, 経済

    “脳みそ”入りグラタンコロッケ風バーガー「脳コロバーガー」発売

  • 「カロリAI」で食事の写真を読み込ませた画面。AIが分析して材料や量、カロリーを推定する
    インターネット, サービス・テクノロジー

    カロリー管理続かない人が作った「カロリAI」が話題に 管理をスマート化して“自分…

  • ジョンソン・エンド・ジョンソン「人生100年時代のヘルスリテラシー白書」公開!デジタルツールの活用が都市圏で拡大
    企業・サービス, 経済

    「人生100年時代のヘルスリテラシー白書」公開 デジタルツールの活用が都市圏で拡…

  • ICIによるがん免疫療法のいまとこれから
    企業・サービス, 経済

    がん治療“第4の柱”「免疫チェックポイント阻害薬」製薬会社がセミナー開催

  • 梓川みいな看護師(正看護師有資格者)

    記事一覧

    一般内科、呼吸器科、整形外科、老年科、発達障害などを得意とする。医療・介護福祉等に高反応。雑多なネタも紹介していきます。
    娘二人(ともに発達障害あり)とネコ二匹の母。シングル。

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 災害ボランティアに行く前にやっておくべき大切なこと
    社会, 雑学

    災害ボランティアに行く前にやっておくべき大切なこと

  • お餅での事故を防ぐ ここがポイント!(出典:政府広報オンライン)
    社会, 雑学

    お餅での事故を防ぐ 3つのサインと3つのポイント!

  • 【ナースなコラム】MRIに禁忌なアレコレ え?増毛パウダーも!?
    ライフ, 雑学

    【ナースなコラム】MRIに禁忌なアレコレ え?増毛パウダーも!?

  • みかんは体に良いってほんと? 効能は?適量は?
    ライフ, 雑学

    みかんは体に良いってほんと? 効能は?適量は?

  • 【看護師コラム】実はこれやっちゃダメなんです!処方薬の使いまわし
    ライフ, 雑学

    【看護師コラム】実はこれやっちゃダメなんです!処方薬の使いまわし

  • エクストリーム! 全自動マーブルチョコの色分けが装置爆誕
    インターネット, おもしろ

    エクストリーム! 全自動マーブルチョコの色分け装置が爆誕

  • トピックス

    1. ガシャポンの魅力&世界観を全身で体感!「ガシャポンに超夢中展2025」内覧会レポ

      ガシャポンの魅力&世界観を全身で体感!「ガシャポンに超夢中展2025」内覧会レポ

      10月31日から11月2日までの3日間、池袋・サンシャインシティにて「ガシャポンに超夢中展2025」…
    2. 缶コーヒーの「#マーク」に隠された意味 コカ・コーラ社に聞いた“色が変わる理由”

      缶コーヒーの「#マーク」に隠された意味 コカ・コーラ社に聞いた“色が変わる理由”

      徐々に寒さが増し、そろそろ温かい飲み物が恋しくなってくる季節。近ごろSNS上で、「ホットコーヒー缶に…
    3. イーロン・マスク氏、Xの不具合を報告 「フォローしている人の投稿が少ない」原因はバグだった

      イーロン・マスク氏、Xの不具合を報告 「フォローしている人の投稿が少ない」原因はバグだった

      SNS「X(旧Twitter)」のオーナーであるイーロン・マスク氏が、日本時間10月27日深夜、自身…

    編集部おすすめ

    1. 集英社、生成AIによる権利侵害へ厳正対応を表明 Sora2公開後の「類似映像大量発生」を受け

      集英社、生成AIによる権利侵害へ厳正対応を表明 Sora2公開後の「類似映像大量発生」を受け

      集英社は10月31日、生成AIを利用した権利侵害への対応について声明を発表しました。今秋、OpenAI社の生成AIサービス「Sora2」が公…
    2. 菊水産業「お菊社長」なりすましに接触 ウザ絡みして目的を探ってみた

      菊水産業「お菊社長」なりすましに接触 ウザ絡みして目的を探ってみた

      10月14日、国産つまようじ製造を手掛ける「菊水産業株式会社」の公式Xアカウントが、同社代表取締役・末延秋恵さんのなりすましアカウントが出現…
    3. 職員室を自由に物色! 体験型展示「あの職員室」が11月15日より開催

      職員室を自由に物色! 体験型展示「あの職員室」が11月15日より開催

      株式会社チョコレイト(CHOCOLATE Inc.)は、あの頃入りたくても入れなかった職員室を体験できる展示企画「あの職員室」を、11月15…
    4. カービィのエアライダー、桜井政博こだわりの「酔い対策」が話題 アクセシビリティ配慮に称賛の声

      カービィのエアライダー、桜井政博こだわりの「酔い対策」が話題 アクセシビリティ配慮に称賛の声

      2025年10月23日22時より配信されたNintendo公式番組「カービィのエアライダー Direct 2」にて、ゲームクリエイター・桜井…
    5. 「なぜ誹謗中傷は起きたのか」 にじさんじ運営が加害者心理を公表

      「なぜ誹謗中傷は起きたのか」 にじさんじ運営が加害者心理を公表

      ANYCOLOR株式会社は10月22日、所属ライバーである甲斐田晴さんをめぐる極めて悪質な誹謗中傷・荒らし行為への対応結果を、加害者側の意識…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト