今回新しく立ち上がりました新企画「おたくのお宅訪問」では、趣味を極めたいわゆる『おたく』と呼ばれる一般の方達に注目し、そのライフスタイルや気になる自宅模様をご紹介していきたいと思います。 第1回目となる今回は、爬虫類から涼宮ハルヒの憂鬱まで広く手がける千葉県在住の「エドガー」さん。
●趣味の継続はリアル「嫁」との戦いの記録でもあった–
今回ご紹介する「エドガー」さん。
「おたくま経済新聞」では初登場となりますが、生き物系のマニア雑誌や、某テレビ番組でも紹介されるなど一部のファンの間では、業界用語で言う「ネ申」とも表される有名人。
以前より「おたくま経済新聞」スタッフもその動向や発言には注目しており、またお話しをさせていただく度に、その趣味への傾倒の深さや情熱に興味をそそられ、ついには「この人の自宅は一体どうなっているのだろう?」という疑問もあって、新コーナーの第1回目賢者としてご登場いただくこととなりました。
さて、訪問日当日。賢者は既婚者という事もあり、事前のやり取りで同居するご家族の了承を得ての訪問となりました。
訪問させていただいたご自宅は、築まだ2~3年という築浅ということもあり、新しい木の匂いが残る綺麗な建物。入り口を入って直には、早速賢者ご自慢の水の生き物達がお出迎えをしてくれました。
リビングに入ると、賢者のご家族である、奥様と息子さん二人とご挨拶させていただき、趣味に関するインタビューから開始。
そもそも賢者のおたく趣味は、生まれた実家の近くを京急や国鉄が走っていた事が発端とか。
子供心に散歩で通るその道すがら、生活の一部として電車の車両を眺めていたところ、気が付くと車両に興味を感じる様になり、硬券(当時の切符)を蒐集する様になり……というルートで、静かにその長くも果てない「おたく人生」の幕は上がったとのこと。
ちなみにエドガーご夫婦。
その出会いのきっかけは、夫婦共通の趣味である鉄道でもあったそう。
子供の頃から続けてきた趣味で、数十年後に奥さんをみつけてしまうとは、流石「ネ申」なればこそ。
<写真左>
玄関ホールでは早速水槽たちがお出迎え。日中のため、岩の下に大半の生き物達がかくれてしまっているが、数十種類の水の生き物を飼育していくとか。
<写真右>
リビングでインタビューに応える賢者とその奥様。後ろにいるのは高校生の長男。音大に入ってもおかしくないほどの腕前でアニソンメドレーを披露していただきました。
また、奥様も現役の多趣味で、若い頃からのマンガ本蒐集は勿論、合唱、演劇、果ては講談まで幅広く楽しまれているそう。
ご主人である賢者とは、マンガ以外の共通の趣味は現在ないものの、互いにそうした「熱中できるもの」を持ち合っている間柄なだけに、こうして年齢を重ねても、良い関係が築けているというのがひしと感じられた。
さて、話は趣味へと戻り、最近熱中している「生き物」とくに「爬虫類」の飼育についての話題に突入。 取材前、事前調査で調べた「おたくま」日記にあった「蛇を購入しようと家族に相談したところ反対された」という話題をふったところ……なんと、奥様実は大の「蛇嫌い」だったらしく、過去黙って蛇を飼育していて一時は離婚の危機もあったという話題も飛び出て取材スタッフ一同ヒヤリ……まさに『やぶ蛇』と感じつつ、お話しを続けさせていただいたところ、現在は蛇も処分しており、蛇だけならず爬虫類が苦手な奥様との協定により、1階にある趣味部屋内のみで全ての生き物は飼育しているというお話し。
結婚をしつつも趣味を続けるというのはある意味、夫婦戦争の上に勝ち得る「忍耐と妥協」の結果なのかもしれない……と感じつつ、インタビューも一区切りついたので早速賢者ご自慢の「趣味の間」へと案内していただきました。
●トカゲに電車にカエルまで……趣味部屋はまるで「大人の秘密基地」
場所を1階にある趣味部屋へ移して、早速写真撮影を開始。賢者ご自慢の部屋の中をアレコレ紹介していただきました。
<写真左>
趣味部屋は賢者にとって大きな宝箱も同然。部屋のあちこちに沢山の水槽がならび、その中には飼育中の生き物から果ては、エサ用のコオロギまで所狭しと陳列されていました。
<写真右>
趣味部屋の一番奥は、鉄道のためのスペース。綺麗に整理された整理ボックスの中には、組み立てられた電車の模型やコレクション類がびっしり。中には今では手に入らない超貴重なお宝もあるとか……。
まず、こちらの部屋は鉄道関連の組み立てを行う際の、作業部屋兼、爬虫類達の飼育部屋として利用しているとのこと。
部屋3面にはビッシリと生き物達がそれぞれにはいった水槽類が積み上げられ、一番部屋奥の側面にはこちらは鉄道関連のコレクションボックスがビッシリ。部屋中央にはそれぞれの作業を行うための作業台が設けてあり、休日には半日近くこの部屋にこもって作業に没頭してしまうこともある……なんて話も。
ちなみにこの部屋では、トカゲを中心とした約20種類もの生き物達を飼育しているとか。飼育している匹数については、部屋内で繁殖したものもあるため賢者自身きちんと把握していないとのこと。
▼趣味部屋で飼育される生き物達 ※一例
生き物達の次は、賢者が最も長くつづけている「鉄道」に関するコーナー。
部屋の一番奥を陣取ったエリアには、透明のボックス内にレールから、模型から関連書籍にいたるまでウン十年の歴史がビッシリ詰まっている。
賢者のモットーとして、模型の場合は「基本組み立てる」、実物の場合は「できる限り撮影する」というのがある様で、組み立てずに置いておくコレクションやネガのままの写真はあまりないとのこと。 よって、鉄道に関するコレクションはただでさえ膨大なのに、なんとこれ以上にも実は存在し賢者のご実家までをも利用して保管しているという。
「おたく」なればこその罪作りな話ではあるが、記者自身プラモデルや本など様々なものをコレクションするコレクターなだけに、「ものを捨てきれない」その気持ちは痛い程によく分かる。
「おたく」の最終形の夢としては、賢者もやはり同じくで「綺麗に陳列してみたい!」という気持ちもあるとのこと、いつの日か趣味部屋の扉を改造して模型や鉄道の写真を綺麗に陳列してみたい……まさしく「おたく」の夢は果てなく尽きないのである。
なお、鉄道コーナーの貴重なコレクション類を一部披露していただいた。
最近の鉄道趣味はもっぱら「音のなる模型」蒐集に始終しているとかで、たまに写真の様に気まぐれに「痛電車」など作って遊ぶこともしているとの話。 ちなみに、このコレクションの中には約20年前で20万以上の価値があった模型もあるとか。現在の価格にすると40数万円はくだらない可能性もあるとかないとか。
▼鉄道関連のコレクション
一とおりの取材が終わったところで、賢者に最後の質問を問いかけてみた。
「今後おたく趣味として夢もしくは欲しいと思うものは?」
取材の際には「現状欲しいものは全て手にいれているので今のところありません。ただ、これからの出会いでみつかることがあるかもしれませんね。」というお話しだった。 取材を終えて数日後、本記事をまとめにかっていた記者の元に一通のメールが届いた。
開封してみたところ、賢者からのメールで「今後の爬虫類」というタイトル。
内容を確認してみると、「取材の際には今後おたく趣味での目指すものはないと応えてしまいましたが、早速出会いが–」と書いてあるではないか。
さすが「ネ申」。
ちなみにその「運命の出会ったもの」とは、オーストラリアで輸出を禁じられている「ストーリーモニター」という貴重なトカゲで、国内で繁殖された数少ない売買のゆるされた個体とのこと。 これまで行きつけの爬虫類店でみかけ、かねてより気にはなっていたそうなのだが「ネ申」曰く。『見てみぬふり』ができないことになり、長期計画での繁殖の挑戦を開始するという内容でメールは結ばれていた。
「あくなき探求」まさしくその言葉がふさわしい「ネ申」ゆえばこその生き様。 取材が終わったあとも、おなじ「おたく」として色々と考えさえられる取材でした。