今回の「特撮映像館」はガメラと並ぶ大映特撮が生んだ特撮ヒーロー、大魔神です。穏やかな埴輪の姿から怒りの表情の大魔神に変わるシーンは、何度見ても飽きません。

『大怪獣ガメラ』の成功を受け、第2弾『ガメラ対バルゴン』の制作が決定すると共に、大映京都にも特撮作品の制作が促された。


そしてフランス=旧チェコ映画の『巨人ゴーレム』に着想を得て企画制作されたのが『大魔神』だった。

本作の魅力はなんといってもスケール感のある特撮。巨大ヒーローや怪獣などに比べて設定的にそれほど大きくない大魔神の大きさに合わせたセットが迫力のある画面を生み出すと共に、俳優出演シーンとのカットバックといった編集技術でも臨場感を生み出している。

大魔神といえば埴輪の顔が怒りの表情に変わる瞬間が最大の見どころともいえるわけだが、目を、俳優のものをそのまま活かしたところが実によかった。

また第一作目である本作では、魔神が目覚めてからの荒れようはすさまじく、敵も味方もないような状態。人間を踏みつぶし、握りつぶす暴れっぷりはまさに魔神と呼ぶ以外にない。立ち向かう人間たちも畏れながらも最初はなんとか進行を止めよう、倒そうとするのだが、その力の前に無力感を味わっていく。圧巻は本作での悪の権化とも言うべき城主を、自らの額に打ち込まれたタガネを引き抜いてその胸に突き刺すところだろう。

シリーズ3作は大魔神が最後に消える形がそれぞれ異なるが、本作では土塊となり崩れ落ちる。

大魔神は実物大の模型も造られ、特撮自体も東京の撮影所よりも恵まれた環境にあったらしく、それは本作の完成度にも影響を与えている。ゴジラやガメラ、またウルトラマンといった巨大ヒーローに並んで名作とされるのもこの完成度の高さも理由のひとつだろう。

監督/安田公義 特技監督/黒田義之
キャスト/高田美和、青山良彦、藤巻 潤、ほか。
1966年/84分/日本

(文:猫目ユウ / https://suzukaze-ya.jimdo.com/