おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【うちの本棚】205回 ロンド・カプリチオーソ/竹宮恵子

ウェディングライセンス「うちの本棚」、今回はフィギュアスケートをテーマにした竹宮恵子の『ロンド・カプリチオーソ』を取り上げます。

 これでもかというくらいに悲劇に悲劇を重ねていく手法は、竹宮作品というより、作品の発表されたこの時代の特徴であったかもしれませんね。

  • 【関連:204回 ウェディングライセンス/竹宮恵子】

    ウェディングライセンス ウェディングライセンス

    『ロンド・カプリチオーソ』は『ウェディングライセンス』に続く連載作品。フィギュアスケートをテーマにしたストーリーで、兄弟の愛憎が描かれている。

     個人的にフィギュアスケートには興味がなく冬季五輪もまったく見ないのだが、一般的にはスケート選手の人気は芸能人並で連日マスコミを賑わせているのは承知している。とはいえこの作品が連載されていた当時、スケートがこれほど注目されていたかといえば、そうでもなかったのではないかという気がする。それを示すように作中、ところどころにフィギュアスケートに関する用語の説明も見られる。

     世紀の天才といわれたスケーターの父を持ち、その後継者として成長している14歳のアルベル。完璧とも言えるそのスケーティングではあったが、6歳の弟ニコルに父は自分の夢を託していた。兄弟の間に生まれる愛憎はこれを発端に、スケート技術で、そして愛する女性を巡って複雑に廻り始める。

     自動車事故により両親は死亡。ニコルも視力を失ってしまうのだが、それでも天性の才能はニコルにスケートをあきらめさせない。本作の本当のドラマはここから始まるといっていいだろう。

     その作品の多くで、シリアスな展開の合間にもコメディ調な表現を描くことの多い竹宮が、本作ではシリアスに徹しているのも本作の特徴といえるだろう。ニコルは才能を認められながら失明するが、それ以前に体が弱く、心臓に疾患がある。ニコルの純粋な性格が悲劇をより一層色濃くしていくという展開は竹宮作品にはよく見られるものかもしれない。

     ところで、本作は語り手の回想から始まる。この手の演出は珍しいものではないし、漫画を始めとして小説や映画等で使われるものでもあるが、竹宮作品において語り手の回想で始まる作品がけっこう多いのではないかという気がするし、竹宮作品の特徴といえるのではないだろうか。

    初出:小学館「週刊少女コミック」1973年10月号~

    書 名/ロンド・カプリチオーソ(全2巻)
    著者名/竹宮恵子
    出版元/朝日ソノラマ
    判 型/新書判
    定 価/350円(2巻とも)
    シリーズ名/サンコミックス・竹宮恵子傑作シリーズ
    初版発行日/昭和51年12月30日(2巻とも)
    収録作品/ロンド・カプリチオーソ

    (文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

    あわせて読みたい関連記事
  • 商品・グッズ

    竹宮惠子の御朱印帳第2弾は「地球へ…」

  • ニュース・話題

    ふるさと納税の返礼で竹宮恵子先生のエッセイや画集が手に入る!

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】217回 ファラオの墓/竹宮恵子

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】216回 集まる日,/竹宮恵子

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】215回 ここのつの友情・作品集版/竹宮恵子

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】214回 空が好き!/竹宮恵子

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】213回 魔女はホットなお年頃/竹宮恵子

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】212回 森の子トール/竹宮恵子

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】211回 アストロツイン/竹宮恵子

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】210回 ここのつの友情/竹宮恵子

  • 猫目 ユウWriter

    記事一覧

    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
    仮想空間「Second Life」やってます^^

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • コラム・レビュー

    複数社から発売された『墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)』を振り返る

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】262回 こいきな奴ら/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】259回 デザイナー/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】258回 わらってクイーンベル/一条ゆかり

  • トピックス

    1. 汗冷え対策は「ヒートテックの下にエアリズム」 ユニクロ公式発の裏ワザが再び話題

      汗冷え対策は「ヒートテックの下にエアリズム」 ユニクロ公式発の裏ワザが再び話題

      屋内と屋外で寒暖差が大きく、着る服に悩みがちなこの季節、SNS上で「エアリズムの上にヒートテックを着…
    2. 「ドラクエ7リメイク」にキーファ再会エピソード追加 衝撃展開にSNSでは「恨み節」も

      「ドラクエ7リメイク」にキーファ再会エピソード追加 衝撃展開にSNSでは「恨み節」も

      2025年11月12日午前7時に配信された「State of Play 日本」にて、「ドラゴンクエス…
    3. アカウント1の投稿

      【前編】それでも私は、書くことを選んだ―― Temu不審アカウントに挑んだ無名記者の記録

      ある日の調査作業の過程で、SNS「X」上において、急成長中の越境EC大手「Temu」のサポート担当を…

    編集部おすすめ

    1. 「シテの花」作者が続報投稿 前担当の不備めぐり編集部と協議、認識を整理

      「シテの花」作者が続報投稿 前担当の不備めぐり編集部と協議、認識を整理

      小学館「週刊少年サンデー」で連載中の漫画「シテの花 -能楽師・葉賀琥太朗の咲き方-」の作者・壱原ちぐささんが11月18日18時、新たな投稿を…
    2. 松山ケンイチ「誰も傷つけない悪口選手権」を開始 SNS時代に投げかける新たな試み

      松山ケンイチ「誰も傷つけない悪口選手権」を開始 SNS時代に投げかける新たな試み

      俳優の松山ケンイチさんが11月17日、自身のXアカウント「松山ケンイチ(@K_Matsuyama2023)」でユーモア企画「誰も傷つけない悪…
    3. 悔しさと葛藤を語った「シテの花」作者 掲載順問題が大きな反響呼ぶ

      悔しさと葛藤を語った「シテの花」作者 掲載順問題が大きな反響呼ぶ

      小学館「週刊少年サンデー」で連載中の漫画「シテの花 -能楽師・葉賀琥太朗の咲き方-」の作者・壱原ちぐささんが11月17日、作品の掲載順に関す…
    4. 今年もやってきた“本番環境の事故録” Qiitaの「やらかしアドベントカレンダー2025」開幕

      本番環境などでの失敗談が集結 Qiitaの「やらかしアドベントカレンダー2025」開幕

      稼働中のサーバーでの作業ミスによるトラブルの顛末をつづる「本番環境などでやらかしちゃった人 Advent Calendar 2025」が12…
    5. 床掃除はおまかせ!「モップ機能つき生ルンバ」と化すビションフリーゼがかわいい

      床掃除はおまかせ!「モップ機能つき生ルンバ」と化すビションフリーゼがかわいい

      頭をぐりぐり動かしながら、床の上を滑っていく1匹のワンちゃん。飼い主さんが「モップ機能つき生ルンバ」と呼ぶビションフリーゼ・せとくんの動画が…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト