道を歩いていると、時折道路工事や夏祭り等のイベントで交通規制があり、それを予告する看板が出ていることがありますね。テレビやラジオでも、同様の交通規制情報を放送しています。普段使ってる道が通れずに迂回する時、つい「空でも飛べたらなぁ」なんて思うこともあるのですが、実は空にも同様の交通規制情報があるのです。それがNOTAM(ノータム)です。
NOTAMとは「NOtice To AirMen(航空従事者に対する情報)」の略で、特に空域や飛行場、航空保安施設などが通常とは違う状態になっており、パイロットなど航空従事者に注意を促す目的で、各国の民間航空をつかさどる機関(日本の場合は国土交通省航空局)が臨時に出すものです。長期間、もしくは恒久的に変更がなされる場合は、定期的に改訂・発行される航空路誌(航空機が通る航路や飛行場、利用する際の注意点が記されたガイド)で提供されます。
NOTAMが出される理由は様々です。多いケースは、飛行場内の工事などで、誘導路や滑走路が使えなくなってるよ、というもの。また、航空機の航行を援助する、飛行場灯火や航空保安無線施設などの航空保安施設が故障等で使えなくなっている、というものや、飛行場近傍での障害物(工事でクレーンなど高い構造物が仮設されている)の存在も対象です。
その他、自衛隊や軍の演習、そしてロケットの打ち上げに際してもNOTAMが出されます。この範囲が海に及ぶ場合は、海上保安庁が周辺海域に航行警報を発して、船舶に対しても注意を促すことになっています。ロケット打ち上げでは、JAXAだけでなく、民間会社のインターステラテクノロジズ社や、NPO法人の北海道宇宙科学技術創成センター(HASTIC)がロケットを打ち上げる際も、航空局に申請し、NOTAMが出されています。
基本的に、航空法で定める航空機の航行する最低高度(何もない場所の場合150m)を超える高さに物体を到達させる際は、航空機に大きな影響を及ぼすため必ず航空局に申請し、NOTAMを出してもらう必要があります。気象台が行っている高層気象観測用のラジオゾンデもそのひとつ。これは定期的に同じ時間で放球している為、常に出ているような状態です。
航空祭など、エアショウやスカイスポーツの大会に際しても、NOTAMが出されます。この場合は飛行する機種についての情報もNOTAMで提供されるので、参照することでどんな機種がデモフライトするか、また予行についての情報も知ることができます。
NOTAMなど、航空情報については現在インターネット(AIS JAPAN)でも提供されているので、ユーザー登録は必要(登録の有効期限は最後の利用から半年)ですが、比較的手軽に入手することができます。2015年5月に千葉市で行われた、レッドブル・エアレース千葉大会の際には、このようなNOTAMが出されていました。
簡単に説明すると「千葉市美浜区周辺でエッジ540(EDGE)、コーバス・レーサー(CA41)、MXS、エクストラ300(E300)によるアクロバット飛行。飛行するのは最大1機。高度は海抜5フィート(約1.5m)~1999フィート(約609m)」という感じ。
他には、海外のVIPがやってくる際にも、受け入れ態勢を整えるために飛行場が通常と違う状態になるのでNOTAMが出されます。
季節的なものでは、夏、花火大会のシーズンになると、花火に関するNOTAMがたくさん出されます。打ち上げ花火は10号(尺)玉の場合、到達高度330mを中心とした直径160mの大きさで開くので、十分航空機の航行に影響を及ぼす訳です。
運動会などで打ち上げられる信号用の昼花火(雷)の場合は、到達高度が航空機の最低高度に満たない、小さいサイズのものが多く使われるので、航空局に申請するケースはあまりないようです。
花火大会では、地上の道路も空も「交通情報」が出されてるんですね。
▼AIS JAPAN(利用には登録が必要)
https://aisjapan.mlit.go.jp/
(文:咲村珠樹)