いつの頃からか知られるようになった「伏せ丼」という謎の文化。

食べた丼ものが美味しかったとき、店への敬意と感謝の意を込め食後の丼をひっくり返して置く行為だそうです。
主にラーメン店で行われているとも言われており、「スープを飲み干すほど美味しかった」という意味もある「知る人ぞ知る」行為なのだとか。

【関連:これはホントの謎文化→福岡県久留米市出身者は高確率で「堀川バスの社歌が歌える」】

美味しそうなラーメン

ところがその「伏せ丼」を実際に行い写真をTwitterに投稿したところ、非難の声が殺到し炎上してしまった……という出来事がつい最近起きています。
寄せられた声は「丼が空でも食後のものを逆に置いておくなんて不衛生」「テーブルが汚れるから店側には迷惑」「食事のマナー違反」などもっともな意見ばかり。

「伏せ丼」は噂どおりラーメン好きの一部に知られている行為のようで、調べてみたところネット上にはいくつか「伏せ丼」を実行した写真も見つけることができました。でも実際やると店側にとっては迷惑な行為。何故こんな事が行われるようになったのか?

■辞書にもあった「伏せ丼」

実用日本語表現辞典に「伏せ丼」があるのを発見しました。しっかり説明項目が用意される程度には需要があるようです。

【伏せ丼】
ラーメン店で、ラーメンのスープを飲み終わった後に、丼を逆さまにする行為を意味して用いられている語。一般的に、スープが垂れてこないほど全部を飲み干したということを表し、作り手への敬意を伝える意味があるとされているが、迷惑行為だと感じる人も少なくないという。山形県が発祥の風習だといわれることもあるが、そのような風習の実在を疑問視する向きもある。
(出典:weblio辞書

辞書に記載されるということはそれなりには知られた文化みたいですね。でもネットを見てみると、同時に知らない人も多いようです。そして発祥は「山形県」となっていますが……ホントの所どうなの!?

■結論:ジョークが広まったっぽい

さらに調べてみると、どうやら「伏せ丼」の発信源は匿名掲示板2chとジョーク話題を扱うブログ記事のようす。
最初は「店が嫌がること」をあえて「通の美学」として冗談で紹介していたものが、情報が一人歩きする内に“ジョーク部分”が失われ、食事事情に敏感な人々のアンテナに引っかかり一部を本気にさせてしまったもよう。

今回の投稿者以外にも過去何度か「伏せ丼」実行者がネットで話題になることがありました。そのいずれもが「店から怒られた」という結末。中には「出禁になった」という方も。
やはり、店にとっては「感謝の意」どころか「迷惑行為」以外なにものでもないようです。また店側も勿論知らない文化。ラーメン店を経営する知人に電話でこの「伏せ丼」を知っているか聞いてみたところ「全く知らない」という回答が返ってきました。20年近くラーメン業に携わっているそうですが、「聞いたことも無い」とし、「されたら嫌がらせかと思う」とも……。

発祥と名指しされている「山形」についてですが、こちらも知人の山形県民に電話で聞いてみたところ「そんなもん聞いたことも無い!山形のせいにしないで!」と激怒していました。一人に聞いた意見なので全てではないかもしれませんが、少なくとも山形民全員が共有する「文化ではない」そうです。

よかれと思ったことが相手にとっては非常に迷惑なものだった。冷静に考えればいくら丼が空でも、逆に置くことでテーブルを汚し店に迷惑をかけることが想像つくと思います。美味しい一杯に巡り会えたら、会計の時にでもお店の人に「美味しかったです」その一言を伝えるだけで、感謝の意は十分に伝わるのではないでしょうか。

というわけで、お店では絶対に「伏せ丼」しないでくださいね。

(「伏せ丼」 写真は編集部内で記事用に撮影したものです)

(「伏せ丼」 写真は編集部内で記事用に撮影したものです)

(文:栗田まり子)