年末目前になるとクリスマスやお正月料理として毎年話題になる、2ちゃんねる発祥の「鳥はむ」。格安で手に入る庶民の味方「鳥のむね肉」を使用するレシピとあり、世の奥様方を魅了してやまないレシピとなっています。

 レシピ自体は塩、砂糖を肉にすりこみ1日おいて、塩抜きをし、さらに湯煎でゆであげるというのが基本となりますが、取り組む人が多い一方で、塩加減で失敗する人が多いレシピ。編集部でも何人か挑戦していますが、「味が薄い」「味が濃くなりすぎた」など失敗談が続々聞こえてきます。そこで今回部内で話しに上がったのが、筆者の趣味「キャンプ」で作る「キャンプレシピ」の応用で何かないかというもの。

 簡単で、取り返しもついて、失敗率が低く、だれでも作れるもの。うーん。そんな便利で楽なレシピ……「あるよ」

 失敗する確率は「ない」とまでは言い切れませんが、少なくとも今ネットにある手順よりは確率を低くできる方法があります。本稿では筆者がよく酒のおともとしてぼっちキャンプ場で行う「燻製」をヒントに、湿塩法(ソミュール法)で紹介。なお、紹介にあたり一般の鳥はむレシピと食べ比べもしましたが、結論から先に言うと「湿塩法(ソミュール法)」で作った物の方がよりハムに近づけ美味しかったです。

 さて、まずは作り方の手順から。
詳細や理屈は後で、ソミュール液・ピックル液の説明も後に回します。以降は、ソミュール液と一括りで記載します。

■手順

1:ソミュール液をつくる

水を沸騰させたら塩、砂糖、スパイス、ハーブを入れ15分~20分煮る。(分量は記事下部に別途記載。)
煮立ったら茶こしなどでこして液体を常温以下に冷ます。冷蔵庫に入れても良し。
※ソミュール液は冷蔵庫で1週間ほど保存できます。事前につくっておいてもかまいません。

(ソミュール液・ピックル液)

(ソミュール液・ピックル液)

2:鳥むね肉の下処理

皮をはがし、肉の厚みが均一になるよう包丁で切り込みを入れ開いていきます。終わったら肉の何カ所かにフォークを刺す。液のしみを良くするためです。なお、皮は使いませんがもったいなので別の調理ででも使ってください。

(厚みが均一になるよう開く)

(厚みが均一になるよう開く)

3:肉を液に入れ1時間放置

ソミュール液を常温以下まで冷ましたら、ビニール袋に液と肉を入れ、空気を抜いて閉じる。1時間放置。

4:液を拭き取り味見

袋から取り出したらキッチンペーパーでしっかり水気を拭いてください。しっかり拭いたら端っこを少し切り取り、電子レンジでチンして味見を。この時の塩加減が、完成直後のものとほぼ同じになります。
基本的にはキッチンペーパーでしっかり塩分をとれば味調整の必要はありませんが、濃すぎる場合にはさっと水で流し、キッチンペーパーで水気をとり再度味見してください。作った後時間をおいて食べる場合・燻製する場合には若干薄味になるよう調整してください。熟成され味が濃くなるので。

5:巻いていく

鶏肉を巻いていきます。巻き上がったら空気を抜きつつサランラップで何重かに巻き、最後はキャンディー状に両端をしばります。この時、真ん中部分をたこ紐や輪ゴムで数カ所しばるとなおよし。完成したときに、真ん中までしっかりつまった形状に仕上がります。なければしなくても問題はありません。
肉の準備ができたら、耐熱性の袋に空気を抜きつつ入れてください。2枚ぐらい重ねる方が水が入り込みにくいです。

(キャンディー状にする)

(キャンディー状にする)


(耐熱性の袋に入れる)

(耐熱性の袋に入れる)

6:保温調理

保温性のある水筒やポットを準備してください。容器に用意した肉の塊を入れます。次に沸騰させたお湯を入れ蓋を閉じる。
キャンプの時にはここまで自宅で行い、ついてから仕上げています。なお電気ポットは安全のため使わないでください。

(保温性のある水筒やポットに入れる)

(保温性のある水筒やポットに入れる)

7:完成

5時間たてば完成です。キャンプでやるときは残ったお湯は皿を洗うとき油を流すのに使えるので捨てずにとっておくと便利です。

取り出すと鶏肉から汁気が出てる場合がありますが、問題ありません。
取り出して水気をかるく拭けばもう食べ頃で。万が一火が通ってない場合には、片面ずつ1分電子レンジでチン。外の場合には1切れずつ火であぶってしまいましょう。

(キャンプ場で仕上げ)

(キャンプ場で仕上げ)


(取り出した状態)

(取り出した状態)


(キッチンペーパーで拭いた後)

(キッチンペーパーで拭いた後)


(きちんと火が通っています)

(きちんと火が通っています)

■ネットレシピ「乾塩法」は実は難しい

 ネットにある「鳥はむ」のレシピをざっと見てみましたが、基本は塩、砂糖を大さじ1~3擦り込んで1日おく方法が主流のようですね。これは「乾塩法」という処理方法にあたります。

 使う、塩、砂糖の量が少なくて済む一方で、まんべんなく塗り込んでも「塩加減にむらができる」などあり、素人が行うには難しい調理法とも言われています。そこで今回提案したのが、「湿塩法」という方法。こちらはあらかじめ塩、砂糖を入れ煮詰めたソミュール液を使用する方法。「湿塩法=ソミュール法」とも呼ばれています。

 この方法は下処理をすませた肉をソミュール液とともにつけ込むだけ。袋の空気を抜くことで液がしみやすく、さらに液体であることから均一につかりやすい利点があります。滅多に肉加工をしない人ならば、この「ソミュール法」の方がまず下処理としては失敗しにくい方法です。

 他にもはソミュール法には利点があり、ソミュール液の塩分濃度を調整することで味の調整がある程度しやすく、さらにつけ込む時間でも味をコントロールできます。筆者の場合は「鳥はむ」を作るのに上記のよう1時間しかつけません。それぐらい乾塩法とは差がでる処理方法なのです。

■細かい分量とソミュール液の説明

 後になっちゃいましたがソミュール液と本稿では一括りに呼んでいますが、「ソミュール液・ピックル液」と呼ばれることもあります。ソミュール液は塩、スパイスなどを入れたベースとなる液、ピックル液はさらにそれに手を加え砂糖、醤油など入れたカスタム液とされていますが、区別が凄く曖昧な部分もあるので「ソミュール液」とまとめて呼ばれるか「ソミュール液・ピックル液」と並べて呼ばれることがほとんどです。

 さて、その分量ですが、基本は塩分濃度5%~20%でつくるものなので、今回は短時間でのつけ込みにあわせて15%・12%・10%での分量を紹介。味見しつつ使い分けてください。初めて作る味見用には12%がおすすめです。

▼ソミュール液(鶏むね肉1枚~2枚に対し)
【15%】やや塩分強め、酒のつまみ向き
・水500cc
・塩75g
・砂糖35g
・ハーブ好みで
・スパイス好みで

【12%】
・水500cc
・塩60g
・砂糖30g
・ハーブ好みで
・スパイス好みで

【10%】やや塩分薄め、前菜に近い
・水500cc
・塩50g
・砂糖25g
・ハーブ好みで
・スパイス好みで

※塩は粗塩、砂糖は三温糖が好ましいです。
※筆者はスパイスやハーブの部分では、黒胡椒少々、ローリエ2枚、ニンニク2かけ(みじん切り)、すり下ろし生姜を入れています。
※砂糖の分量は塩の半分が目安。
※1度使ったソミュール液は使い回さないでください。

 とりあえず1度試しにつくってみて自分にあうソミュール液・ピックル液の濃度を確認することをおすすめします。15%はやや濃いと書いていますが、筆者は酒のつまみとしてこの濃度で毎回何かしら肉燻製をつくっています。12%だと物足りないと思う人もいるかもしれませんので、その点ご容赦を。

(この後さらに手を加えていぶした)

(この後さらに手を加えていぶした)


(燻製鳥はむの完成!酒にぴったり)

(燻製鳥はむの完成!酒にぴったり)

(文:HideI)