2018年2月14日(現地時間)、カナダはNATOが構築している早期警戒管制システム(AWACS)プログラムに復帰すると発表しました。
NATOには、ドイツのガイレンキルヒェン基地に司令部を置く、早期警戒管制任務部隊(NAEW&C Force)があります。ガイレンキルヒェン基地では16機のE-3A、イギリスのワディントン空軍基地で6機のE-3D早期警戒管制機(AWACS)を運用しています。運用に参加しているのはNATO加盟国のうち、アメリカ、イギリス、イタリア、オランダ、ギリシャ、スペイン、チェコ、デンマーク、ドイツ、トルコ、ノルウェー、ハンガリー、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、ルクセンブルク(民間人のみ)の17カ国。このたびカナダが復帰することで、18カ国となります。
航空自衛隊でもE-767を運用していますが、早期警戒管制機はどのような役割を果たすのでしょうか。簡単に言えば「空飛ぶレーダーサイト兼管制塔」という感じです。地上に配備したレーダーサイトは、非常に有効な警戒監視システムですが、大きな弱点があります。レーダーは電波を使っていますが、電波は直進するという特性があります。このため、地平線・水平線の向こうには電波が届かず、監視することができないのです。もちろん、山の向こう側も同様です。
これを克服するには、山などよりはるかに高い「展望台」にレーダーを置くのがほぼ唯一の解決策。E-3は高度3万フィート(約1万m)の高さからレーダーを使い、地上からよりもはるかに広い範囲(およそ半径400km以上)を警戒・監視することが可能です。また、このレーダーは敵だけでなく味方の航空機もキャッチできますから、これをもとに味方機を管制・誘導することができます。地上では対処できない場合も、AWACSを使うことによって任務をこなせるわけですね。
カナダは1978年にNATO早期警戒管制任務部隊が発足した当時から、このプログラムに参加してきました。しかし2010年の国防省報告で予算に見合う有効性が疑問視されたことを受け、2011年にAWACSプログラムから離脱した経緯があります。
しかし現在、カナダ軍はNATOの一員としてラトビアに駐留しており、ヨーロッパでの任務が増えたことでNATOのAWACSプログラムの恩恵を受ける機会が多くなりました。そのため、改めてプログラムに復帰した、というわけです。背景として、ヨーロッパ北部でロシアの動きが活発化しており、その脅威に対処する必要が出てきているということでもあるようです。
Image:NATO
(咲村珠樹)