おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

パリ航空ショーでフランス・ドイツ・スペイン共同開発の次世代戦闘機モックアップ公開

 2019年6月17日(現地時間)に開幕した、2年に一度の世界最大級の航空ショウ、国際パリ・エアショウ(サロン・ド・ブルジェ)。その初日である17日、フランス、ドイツ、スペインが共同開発する次世代ステルス戦闘機FCAS(Future Combat Air System)計画最初の技術実証機に関するフランスのダッソーとドイツのエアバスとの開発協定調印式が、フランスのマクロン大統領はじめ3か国の防衛大臣立会いのもと行われました。あわせて、その実物大模型(モックアップ)も初公開されています。

  •  パリ郊外のル・ブルジェ空港を会場に、6月17日~23日の期間開催される第53回国際パリ・エアショウ。イギリスのファーンボロ国際エアショウと交互に開かれる、世界最大級のエアショウです。日本からも三菱航空機のスペースジェット(MRJ)をはじめ、川崎重工のP-1(海上自衛隊)とC-2(航空自衛隊)が実機を地上展示して参加しています。

     この初日となった6月17日、フランスのマクロン大統領、パルリ軍事大臣、ドイツのライエン国防大臣、スペインのロブレス国防大臣が来場。フランス・ドイツ・スペインが共同開発する次世代ステルス戦闘機FCAS計画における最初の技術実証機に関する、フランスのダッソーとドイツのエアバスとの製造協定調印式に出席しました。3か国とも軍事・国防大臣が女性というのも興味深いですね。

     フランス、ドイツ、スペインは、いずれもF-35の国際プログラムに参加しておらず、導入予定がありません。このため、現在の主力戦闘機ラファールやユーロファイターの後継を共同で開発しよう、という計画が持ち上がったのです。まずフランスが主導する形で、ドイツとの共同開発に合意して計画がスタートし、その後スペインが参画しました。

     FCASは「システム」という名称からも分かる通り、ただの戦闘機ではありません。大きな空中戦闘システムの一部として機能する、空飛ぶネットワークコンピュータのような役割を果たします。ほかのFCASだけでなく、ドローンや巡航ミサイルともネットワークを通じて相互にデータリンクを行い、それぞれの状況に応じて多彩な攻撃オプションを選択できるのです。すでにエアバスでは2018年、1機の有人機で5機の無人機(ドローン)をコントロールする試験に成功しており、これを踏まえた技術が実装されるとみられます。

     今回製作される最初の技術実証機は、2019年から2021年のうちに開発がスタートし、次世代戦闘機としての能力だけでなく、ドローンの遠隔操作技術、そして相互にネットワーク化された「エア・コンバット・クラウド(ACC)」を開発して実装。実機の初飛行は2026年を目標にしています。ダッソー・アビアシオンとエアバスの役割分担ですが、戦闘機の機体についてはダッソーが主契約社となり、ドローンの遠隔操作技術やエア・コンバット・クラウドに関してはエアバスが主契約社となりました。この開発には、コントロール可能な巡航ミサイルを含む火器管制システムやレーダーシステムの面で、MBDAとタレスも参画しており、並行してサフランとMTUが共同して新しいエンジンも開発していきます。

     この調印式において、技術実証機の実物大模型(モックアップ)も初公開されました。正面から見ると、2つの垂直尾翼が大きく外側に開く形で取り付けられており、かなり扁平な印象。水平尾翼を省略したダブルデルタの主翼といい、アメリカのF-22やF-35よりも、ロシアのSu-57に近い感じがします。

     ダッソー・アビアシオンのエリック・トラピエ代表は「2019年1月の共同研究スタートから、この数か月の進捗は非常に素晴らしいものです。このFCASは、2020年代におけるヨーロッパで最も決定的な軍事航空分野での計画となり、ヨーロッパの主権確立に関して力強いムーブメントとなってくれることでしょう」と調印式で述べています。

     エアバス・ディフェンス・アンド・スペースのディルク・ホケCEOは「共同研究合意からこれまでのダッソーと我が社との間における、信頼とパートナーシップのレベルには非常に満足しています」とコメントしており、これからも透明性の高い関係を続けていくと語っています。

     この調印式をもって、実機製作のお膳立ては整いました。ダッソーとエアバスは、2019年の第四四半期(9月~12月)には政府間の調整を経て、技術実証機の発注が行われるものと見込んでいます。

    <出典・引用>
    ダッソー・アビアシオン プレスリリース
    エアバス プレスリリース
    Image:Dassault Aviation/Airbus

    (咲村珠樹)

    あわせて読みたい関連記事
  • ダーウィンに到着した航空自衛隊のF-2A(画像:Commonwealth of Australia)
    宇宙・航空

    空自F-2が初参加 オーストラリアで17か国参加の共同訓練「ピッチ・ブラック」

  • 宇宙・航空

    サウジアラビア向けのF-15SA 最終号機が納入完了

  • 宇宙・航空

    フランス航空宇宙軍に新たなディスプレイチーム「ヴァトゥー・ブラボー」誕生

  • 宇宙・航空

    イギリス駐留のアメリカ空軍F-15 別の基地への機動展開訓練を実施

  • 宇宙・航空

    アメリカ空軍F-16 ブルガリアでNATO防空任務開始

  • 宇宙・航空

    ブラジル空軍向けグリペンE ブラジルでの初飛行

  • 宇宙・航空

    カナダ空軍戦闘機部隊 ルーマニアでのNATO防空任務を開始

  • 宇宙・航空

    イギリス国防省 ユーロファイター・タイフーンのレーダー刷新計画を発表

  • 宇宙・航空

    インド空軍ラファール第1陣が新型コロナウイルス用医療物資とインドへ移動

  • 宇宙・航空

    アメリカ空母ニミッツとレーガン 南シナ海で再度共同訓練

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 北海道産のチーズを2種類使った秋冬限定フレーバー「かっぱえびせん 北海道Wチーズ味」
    商品・物販, 経済

    北海道産チーズのW使い!「かっぱえびせん 北海道Wチーズ味」がこの秋登場

  • クリスプ のりしおバター味
    商品・物販, 経済

    カルビー、「クリスプ のりしおバター味」発売 レアな“ホシ型クリスプ”も登場

  • 特別災害対策本部車(国土交通省)
    社会, 経済

    消防車も自衛隊車もNERVも! 防災車両がずらり「ぼうさいモーターショー2025…

  • ウィキペディアのページビュー
    インターネット, サービス・テクノロジー

    AI時代でウィキペディア苦境 人間の閲覧数8%減、財団が警鐘

  • ChatGPTが“全年齢対応AI”を卒業? アルトマン氏が語った「成人向けエロティカ解禁」方針
    インターネット, サービス・テクノロジー

    ChatGPTが“全年齢対応AI”を卒業? アルトマン氏が語った「成人向けエロテ…

  • ガンホー「ケリ姫スイーツ」2026年1月末に終了 2012年配信開始から13年
    ゲーム, ニュース・話題

    ガンホー「ケリ姫スイーツ」2026年1月末に終了 2012年配信開始から13年

  • トピックス

    1. 目指せ去勢マスター!「繁殖」テーマのローグライクゲーム爆誕

      目指せ去勢マスター!「繁殖」テーマのローグライクゲーム爆誕

      海外の映画やゲームが日本向けにローカライズされる際、タイトルも和訳されることもしばしばですが、「あま…
    2. 実家の一室をレトロゲームショップ風に改造 本物の什器も揃えた昭和男児の夢空間

      実家の一室をレトロゲームショップ風に改造 本物の什器も揃えた昭和男児の夢空間

      一歩足を踏み入れると、そこはまるで平成初期のゲームショップ。ショーケースにはファミコンソフトがずらり…
    3. ケーキの上は只今工事中!3歳のわが子に作った「工事現場ケーキ」が楽しそう

      ケーキの上は只今工事中!3歳のわが子に作った「工事現場ケーキ」が楽しそう

      「はたらくくるま」が好きな人に刺さること間違いなしな「工事現場ケーキ」がXで話題です。説明がなければ…

    編集部おすすめ

    1. 職員室を自由に物色! 体験型展示「あの職員室」が11月15日より開催

      職員室を自由に物色! 体験型展示「あの職員室」が11月15日より開催

      株式会社チョコレイト(CHOCOLATE Inc.)は、あの頃入りたくても入れなかった職員室を体験できる展示企画「あの職員室」を、11月15…
    2. カービィのエアライダー、桜井政博こだわりの「酔い対策」が話題 アクセシビリティ配慮に称賛の声

      カービィのエアライダー、桜井政博こだわりの「酔い対策」が話題 アクセシビリティ配慮に称賛の声

      2025年10月23日22時より配信されたNintendo公式番組「カービィのエアライダー Direct 2」にて、ゲームクリエイター・桜井…
    3. 「なぜ誹謗中傷は起きたのか」 にじさんじ運営が加害者心理を公表

      「なぜ誹謗中傷は起きたのか」 にじさんじ運営が加害者心理を公表

      ANYCOLOR株式会社は10月22日、所属ライバーである甲斐田晴さんをめぐる極めて悪質な誹謗中傷・荒らし行為への対応結果を、加害者側の意識…
    4. 「バック・トゥ・ザ・フューチャー」公開40周年 タイムサーキット型時計が登場

      「バック・トゥ・ザ・フューチャー」公開40周年 タイムサーキット型時計が登場

      株式会社Gakken(学研ホールディングスグループ)は、同作の映画公開40周年を記念して、劇中の「タイムサーキット」を再現した時計「バック・…
    5. 電気通信大学が注意喚起 京王線の車内広告に何者かが不審なQRコード“貼り付け”か

      電気通信大学が注意喚起 京王線の車内広告に何者かが不審なQRコード“貼り付け”か

      電気通信大学が10月21日朝、公式Xアカウントに声明を掲載。「京王線車内の本学の広告にQRコードは記載しておりません」と述べ、車内広告にQR…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト