アニメ「ガールズ&パンツァー」を思わせる、戦車によるスポーツ大会「戦車バイアスロン世界選手権2020」が8月23日(現地時間)、ロシアの首都モスクワ近郊のアラビノ訓練場で開幕しました。今年は16か国が参加し、2部に分かれて競技が実施されるほか、ゲーム「WAR THUNDER」とコラボし、ゲーム内で戦車バイアスロンがプレイできます。

 戦車バイアスロンは、毎年ロシアで開催されている防衛フォーラム(見本市)に合わせ、軍人たちが日頃の訓練で鍛えた戦技を「スポーツ」として競う大会「国際アーミーゲーム」の一部門として開催されるもの。ロシア国防省と世界バイアスロン連盟が主催し、戦車兵が戦車操縦の正確性とスピード、そして射撃の正確性を競います。

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、2020年は競技実施が危ぶまれましたが、装備品の徹底的な消毒と、選手や大会関係者の感染防止策を徹底することで、無事開幕することができました。とはいえ、参加国は2019年大会の22か国に対し16か国と、少々寂しいものとなっています。

 戦車バイアスロンは参加国が増えたことにより、チームごとの実力差が拡大したため、2019年大会より参加チームを前年の成績に基づいて分ける2部制を採用しました。2020年大会の第1部、第2部の顔ぶれは以下のとおりです。

■第1部:ロシア、アゼルバイジャン、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギスタン、セルビア、ベラルーシ、中国

■第2部:アブハジア、カタール、コンゴ、タジキスタン、ベトナム、ミャンマー、ラオス、南オセチア

 レースは4チームが出場して争われます。戦車は同じような形をしているため、遠くからでも分かりやすいよう4色塗装を施し、同色の旗を掲げます。この色分けは8月17日に開催された抽選会で、以下のように決定しました。

■第1部:青(ウズベキスタン、ベラルーシ)/黄(カザフスタン、セルビア)/赤(アゼルバイジャン、ロシア)/緑(キルギスタン、中国)

■第2部:青(ミャンマー、ラオス)/黄(タジキスタン、ベトナム)/赤(カタール、コンゴ)/緑(アブハジア、南オセチア)

 競技日程は、個人戦(第1部は各3組エントリー、第2部は1組エントリー)が23日~30日、チーム対抗のリレーが9月1日~9月5日に実施されます。初日の23日は第1部の4チーム、アゼルバイジャン、セルビア、ベラルーシ、中国による個人戦第1レースが開催されました。

 競技に使用される戦車は、アゼルバイジャン、セルビア、ベラルーシがロシア軍の提供するT-72B3戦車、そして中国は国産の96式戦車。今回は第二次世界大戦終結75周年を記念して、当時ソ連軍の主力戦車だったT-34を使用してのレースも行われています。70年以上前に作られたT-34が、コースを全速力で駆け抜けるだけでなく、実際に射撃までするのには驚きです。



 レースは、中国がT-72B3より3トンあまり軽い96式戦車の特性を生かし、コースを最高時速72km(設計上の最高速度は時速65km)というスピードで駆け抜け、19分20秒で第1位。主砲と車載機関銃による射撃も、5回の射撃機会でノーミスという正確さを見せました。


 T-72B3を使う3チームも、最高時速70km(設計上の最高速度と同じ)と速さを見せつけます。第2位には21分57秒でベラルーシが入り、第3位はアゼルバイジャンで22分31秒。セルビアは5回の射撃で1回ミスしたほか、途中の水ごう障害でフェンダーを大きく壊すなどトラブルが重なり、29分59秒と最下位に終わりました。




 2日目となる24日は、第2部の8チームによるレースが行われます。組み合わせは第1レースがカタール、ベトナム、ミャンマー、南オセチアの4チーム、第2レースがアブハジア、コンゴ、タジキスタン、ラオスとなっています。

 戦車バイアスロンの創設以来、常に優勝してきた王者ロシアは25日の登場。ウズベキスタン、カザフスタン、キルギスタンと戦います。

 第1部の個人戦は、26日~27日にウズベキスタン、カザフスタン、キルギスタン、ロシアの2組目と3組目のレースが行われ、28日~29日にアゼルバイジャン、セルビア、ベラルーシ、中国の2組目と3組目のレースを実施。個人戦の成績上位3組が表彰されます。

 チーム対抗リレーは9月1日~2日に第1部・第2部の準決勝が実施され、それぞれの成績上位4チームが9月4日~5日の決勝レースに臨みます。

 また、今年は世界的に人気のオンライン(MMO)コンバットゲーム「War Thunder」と戦車バイアスロンがコラボ。実際の競技日程と同じ2020年8月23日~9月5日の期間限定で、イベント「戦車バイアスロン」が開催されます。実際に戦車バイアスロンのレース(4名まで同時プレイ可能)も体験できるとのことなので、興味のある方はチェックしてみるといいかもしれません。

<出典・引用>
ロシア国防省 ニュースリリース
戦車バイアスロン連盟 公式サイト
Image:ロシア国防省

(咲村珠樹)