アメリカ海軍は、洋上を航海中の艦船へ素早く物資を補給する手段として、無人航空機(UAS)の活用を検討中。海軍航空戦闘センター航空機部門(NAWCAD)が主導し、メリーランド州パタクセントリバー海軍航空基地において、2021年から実験が進められる予定です。

 海軍航空戦闘センター(NAVAIR)は、海軍で航空関連装備品の研究開発を実施しています。洋上で活動する艦船に対し、突発的に欠品した物資の補給を行う手段は、C-2A輸送機やヘリコプター、V-22オスプレイといった航空機が用いられています。

 しかし、海軍の統計によると、欠品して任務に支障が生じる物資のうち、およそ90%は重量50ポンド(約23kg)未満の部品とのこと。そのために大きなヘリコプターやオスプレイを動かすのは、あまりにもコストパフォーマンスが悪いと言わざるをえません。

 そこで海軍が目を付けたのが、民間船で小規模荷役に利用されている無人航空機。海軍の洋上補給にも使えないかと、民間の無人機「ブルーウォーター・マリタイム・ロジスティクスUAS」を海軍の要求仕様に沿って改修したものを10月下旬に調達し、実験を始めることにしたのです。

 海軍航空戦闘センター航空機部門(NAWCAD)の責任者、ジョン・レモン少将は「ブルーウォーター・マリタイム・ロジスティクスUASは海軍のため、海軍によって開発試験が実施されます。NAWCADには、ほかには見られない有機的に連携した才能と設備があります。議会の承認により、調達の自由度が高まったことも相まって、この取り組みでは我々がどのように物事を進めていけるか、ということを示しています」とコメント。調達の仕組みが緩和されたことによって、民生品をうまく活用できる環境が生まれたことに言及しています。

 港内の小規模荷役と違い、洋上での物資輸送は様々な環境の違いがあります。このプログラムを主導するビル・マッキオーネ氏は「この要求項目は、Amazonなどが検討している配送用ドローンとは少々異なります。海軍の物資輸送においては、強風や港湾とは違う外洋、揺れ動く艦船といった困難な状況でも、確実に届けることが求められます」と語っています。

 海軍は無人航空機メーカーに対し、アメリカ国防総省が規定するグループ3サイズの無人航空機(最大離陸重量598kg以下、飛行高度55m以下、飛行速度時速463km以下)で、25マイル(約40km)離れた船へ20ポンド(約9㎏)の荷物を無補給で配送できる、という要求能力を提示して公募を実施。2019年の実証試験を経て、65種類の候補機の中から、テキサス州オースチンにある小さなベンチャー企業スカイウェイズ(Skyways)の製品を選定しました。

 スカイウェイズの無人機は、8つの浮上用プロペラと、胴体後部に推進用プロペラを1つ装備した固定翼の垂直離着陸機。滑走路のある場所では通常の飛行機のように離着陸し、そうでない場所では浮上用プロペラを使用し、クワッドコプターのように垂直離着陸をします。

 今後、この無人機はメリーランド州パタクセントリバー海軍航空基地にある第24無人航空機試験評価飛行隊(UX-24)のもと、開発と実験が実施されます。電気とジェット燃料の両方で飛行できるシステムづくりや、胴体内格納分と外部装備での貨物運送、艦船での運用に欠かせない主翼の折り畳み機構や、航海中で移動し続ける配送先を自律的に発見して飛行する能力など、実用化までの様々な課題を解決していきます。

 NAWCADではシステムの調整を行った後、大西洋にて実験を行うこととしています。2021年をほぼフルに使って、様々な状況での実験が繰り返される予定です。

<出典・引用>
アメリカ海軍 ニュースリリース
Image:U.S.Navy/Skyways

(咲村珠樹)