皆さんの歯ぐきは、リンゴをかじって血が出たり歯磨きの時に血が出たりしていませんか?こういった事を「よくある事」と20年間放置してしまった結果、歯周病による大惨事が発覚したという実録漫画がツイッターに投稿されました。

 「20年くらい歯医者さんに行ってなかった時の話」と、その当時の事を4コマ漫画にしてツイッターに投稿したのは、漫画家のなるあすくさん。なるあすくさんは武蔵村山市在住の漫画家で、スマートフォンアプリのGANMA!にて「となりの遠距離恋愛」「やすらのキッチン」「武蔵くんと村山さんは付き合ってみた。」などを連載。現在は新連載にむけて準備中です。

 さて、そのなるあすくさんが衝撃的な状況に陥るまでを4コマ漫画にしています。

 歯医者さんに行っていなかった期間が20年ほどあったというなるあすくさん。行かなかった理由は、「特に困っていなかったから」。しかし、時々変な痛みを感じることがあり、歯ぐきから出血が見られても「これくらいはいつもの事」と大して気に留めていなかったのだそう。

 今まで虫歯など一度もなったことがなかったそうですが、ある日、奥歯に異常な痛みを感じる様に。モノが噛めないほどの痛みに困り、20年ぶりに歯医者さんへ。そこで歯科医に言われた事は……。

 「あと少し遅れていたら歯が全部なくなっていた」

 という衝撃の事実。この時点ですでに重度の歯周病ということが判明。痛んでいた右上親知らずの根本にある、歯の土台の骨が少し溶けていたのでした。

20年くらい歯医者さんに行かなかった結果

 続くツイートで、その後緊急手術に突入。健康な歯を1本抜かざるを得なくなった事、歯周病の状態から肝臓の状態も良くないのではと歯科医から告げられた事、案の定、肝臓の状態も悪化していた事を綴っています。

 この頃の様子を詳しく聞いてみたところ、なるあすくさんは幼児期から成人するまでの間、虫歯に一度もかかった事がなく、親知らずも正常な位置に4本生えそろっていたとの事。そのため、15歳から発症した35歳の間まで、一度も歯医者さんで診てもらった事がなかったそうです。

 虫歯や歯医者とは無縁だったからか、口の中の健康には無頓着に。本来なら食べた時などに歯ぐきから出血がある時点で歯周病を疑うべきなのですが、少しだけの出血、普段は特に気にならない状態という期間が長く続いてしまったがために、歯ぐき全体が重い歯周病となっていた事に気づかずに過ごしてしまったようです。

 「今考えると血が出てる時点で異常な状態ですよね……」と振り返るなるあすくさん。

 後日、歯科医の勧めに従い内科を受診した話も詳しくきいてみました。すると「ひどい脂肪肝です、あと少しで肝硬変になるところでしたよ」とこれまた衝撃の事実を突きつけられる事になったそうです。

 当時、なるあすくさんの体重は100Kg以上、暴飲暴食の生活習慣。この生活習慣が脂肪肝を引き起こしました。脂肪肝のうちはまだ健康な肝臓に治しようがありますが、肝硬変となってしまうと、肝臓が悪化した状態から戻らなくなってしまう大変な状態。

 本来、肝臓は摂取したものを分解、代謝して必要な栄養素とその他のものに分ける役割を担っており、健康な肝臓は少し切り取っても元の状態に復元するほどの強い力を持っています。しかし、肝臓に負荷がかかり過ぎると、肝細胞が壊れ、壊れた部分を補うように線維質が蓄積して肝臓が固くなる病変を起こします。こうなると血液が十分に肝臓に流れ込まなくなったり、全体の肝細胞機能が低下するために、腹水、肝性脳症、黄疸、出血傾向など、さまざまな症状が現れてきます。

 実は歯周病は糖尿病でよくみられる症状の一つでもあり、腫れた歯ぐきから細菌が容易に血液内に侵入する事ができるために、全身に多くの影響を与える事が昨今の研究で明らかになっています。このため、歯科医は歯周病予防の啓発に努め、虫歯だけでなく歯ぐきの健康についても指導しています。

 なるあすくさんは、当時の歯周病の状況を「鈍くて重い痛みと共に、歯ぐきが腫れて歯が浮き上がってる感覚が出てきて、お肉などの弾力があるものが段々噛めなくなってきておりました。最初は痛くてもすぐおさまったりなどしてたのですが、段々痛みの周期が短くなり、ついには我慢できなくなったという感じでした」とコメント。

 歯周病については、歯磨き指導などとともに治療を受け、約2年かけて治す事ができたそうです。しかし、肝臓の治療は、パーソナルトレーニングジムに通って2年で30Kgほどの減量とともに、4~5年かけてやっと正常な数値まで戻すことができたのだとか。ダイエットはかなり大変だったようです。

 人間の体はすべての部分が一つながりになっています。どこか1か所不調がある時は、その不調が全身に及ぶ事もよくある話。たかが口の中と思ってはいけません。口の不調は万病のもと。歯周病は若くても起こり得ますので、普段から半年に1度くらいの歯科検診を受け、歯ぐきの健康状態にも気を付けていきましょう。

<参考>
日本臨床歯周病学会
肝硬変ガイド|患者さんとご家族のためのガイド|日本消化器病学会ガイドライン

<記事化協力>
なるあすく(@naruasuku)さん

(梓川みいな/正看護師)