おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

江戸時代の大掃除では仕上げに胴上げ? 不思議な風習の意味は

update:

 新年を迎えるにあたり、多くの家庭では大掃除を行います。日頃の掃除では落としきれなかった汚れを落とし、すっきりした気分で新年を迎えるわけですが、江戸時代の商家などでは、大掃除の最後に主人を胴上げする風習があったんだとか。なぜ、大掃除と胴上げが結びつくのか、これにはちょっとした理由がありました。

  •  年末の大掃除やすす払いは、日常の掃除では落としきれていなかった、1年の汚れを落として新たな年を迎えようという行事。これは正月に歳神を迎えるにあたり、家を清浄にしようというところから来ています。いわば家の潔斎(神社で神前へ進むのに先立ち、心身を清めること)のようなものです。

     江戸時代、多くの人が働く商家では、大掃除も人数をかけて大々的に行われました。店や生活の場である奥までもきれいにし、新年も商売が繁盛するよう、願掛けにも似た気持ちがあったのではないかと思われます。

     大掃除も終わり、1年の汚れをきれいさっぱり落とした後、締めくくりの儀式として行われたのが、主人の「胴上げ」。今ではスポーツで優勝した際に見られる光景ですが、優勝したわけでもないのに、なぜ主人が胴上げされるのでしょうか?

     胴上げは古くは「胴ぶるい」とも呼ばれ、民間信仰の中で祭礼などイベントの際に「神送り」の儀式として行われるケースがあります。また、大掃除で家の汚れを払った後、今度は家の主人についた汚れを胴上げで落とし、歳神を迎えるにふさわしい状態にしようという側面もあったようです。

     現在でも大相撲の世界では、土俵に神様をお迎えして場所が滞りなく終わった千秋楽、神様を天にお返しする「神送り」として、神事をおこなってきた行司さんを全員で胴上げする伝統があります。元々は親方を胴上げしていたようですが、さすがに元力士は重くて事故が起きたことがあり、身軽な行司さんを代わりに胴上げするようになったんだとか。

     また、この胴上げをネタに、ちょっとしたイタズラもあったようです。胴上げは屋内で行われるため、少し力を加減して主人を天井にわざとぶつけたりすることも。

     現在では、主人を胴上げする風習はほとんどなくなってしまいましたが、もし人数が揃った場合は体験してみるのも良いかもしれません。ただし、わざと落としたり、天井にぶつけようとイタズラだけはしないでくださいね。

    <参考>
    日本相撲協会公式Twitter(@sumokyokai)

    (咲村珠樹:宮崎県民俗学会員)

    あわせて読みたい関連記事
  • 画像提供:深海マザーさん(@deepseaMOTHER)
    インターネット, おもしろ

    イカの形をしたお餅にX上が騒然!お味はイカが?

  • 揚げ餅+お吸い物は「背徳の味」 読者推薦「餅消費レシピ」がヤバかった
    グルメ, 作ってみた

    揚げ餅+お吸い物は「背徳の味」 読者推薦「餅消費レシピ」がヤバかった

  • 画像提供:鯨武長之介さん(@chou_nosuke)
    インターネット, おもしろ

    90%OFFシールつきお年玉が話題 もらった子どもたちは「詐欺だ!」

  • お餅での事故を防ぐ ここがポイント!(出典:政府広報オンライン)
    社会, 雑学

    お餅での事故を防ぐ 3つのサインと3つのポイント!

  • 「ちびまる子ちゃん~笑って年越し!さくら家と一緒に大みそか~」
    アニメ/マンガ, 放送・配信

    大みそかは6年振り!「ちびまる子ちゃん」12月31日に放送決定

  • 信州・長野で古くから伝わる正月の風習「かにの年取り」。
    季節・行事, 雑学

    信州・諏訪で古くから伝わる正月の風習「かにの年取り」

  • 正月恒例の親戚で集まり食事
    インターネット, 感動・ほのぼの

    お寿司のネタが消えた!?お正月の食事会でのエピソードを描いた4コマ育児漫画にほっ…

  • 写真:山口弘剛
    季節・行事, 雑学

    小正月の「どんど焼き」はどんな行事?各地で名称が違うことも

  • 「ミニチュア習字セット7」のガチャ 300円
    商品・物販, 経済

    ミニチュア習字で「書き初め」は可能か!?実際に試してみた結果……

  • 鳩森八幡神社「富士塚」は都内に残る最古のもの
    季節・行事, 雑学

    小さくても山登り気分 都内現存最古の「富士山」登ってみた

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 時事通信、男性カメラマンを厳重注意 生配信中に「支持率下げてやる」発言
    社会, 経済

    時事通信、男性カメラマンを厳重注意 生配信中に「支持率下げてやる」発言

  • ゴロっとチキンのカレーナポ
    商品・物販, 経済

    パンチョ初の人気投票1位「カレーナポ」が進化 期間限定で復刻登場

  • 山崎賢人さんと坂口憲二さん(※山崎賢人さんの崎の字は正しくは「たつさき」です)
    イベント・キャンペーン, 経済

    サントリー生ビール新CMメイキング公開 山崎賢人ら“生ひげ”姿で掛け合い

  • なか卯に「黒トリュフ薫る きのこ親子丼」が期間限定で発売
    商品・物販, 経済

    なか卯に「黒トリュフ薫る きのこ親子丼」が期間限定で発売

  • Discordの発表
    インターネット, 社会・物議

    「Discord」で外部委託先に不正アクセス 一部ユーザーの個人情報が影響か

  • 江口拓也さん&鬼頭明里さん、“声で伝える広報”第2章へ ENEOS「#こえ報部」新企画が始動
    イベント・キャンペーン, 経済

    江口拓也さん&鬼頭明里さん、“声で伝える広報”第2章へ ENEOS「#こえ報部」…

  • トピックス

    1. これでもう怒られずにすむ? 息子が作った「ママの攻略本」の実力は

      これでもう怒られずにすむ? 息子が作った「ママの攻略本」の実力は

      親に怒られてしまった子どもが、その後に取る態度はさまざまです。落ち込む子もいれば、しっかり反省する子…
    2. 警告ポップアップで強引に広告誘導 悪質業者が仕掛ける正規サービスを悪用した罠

      警告ポップアップで強引に広告誘導 悪質業者が仕掛ける正規サービスを悪用した罠

      インターネットを使っていると、ふとした瞬間に現れる「警告ポップアップ」。 近ごろでは「サポート詐欺」…
    3. 母に何気なく70年万博の話をしたら……“55年前の資料”にテンション爆上がり

      母に何気なく70年万博の話をしたら……“55年前の資料”にテンション爆上がり

      大阪・関西万博をきっかけに、55年前の1970年の大阪万博(以下、70年万博)に興味を抱くようになっ…

    編集部おすすめ

    1. 時事通信、男性カメラマンを厳重注意 生配信中に「支持率下げてやる」発言

      時事通信、男性カメラマンを厳重注意 生配信中に「支持率下げてやる」発言

      時事通信社は10月9日、自民党本部での取材中に「支持率下げてやる」などと発言した本社映像センター写真部の男性カメラマンを厳重注意したと発表し…
    2. 「ちいかわの世界に行きたい」ファン、考えた末に鎧さん化 再現度がガチすぎた

      「ちいかわの世界に行きたい」ファン、考えた末に鎧さん化 再現度がガチすぎた

      言わずと知れた人気コンテンツ「ちいかわ」。かわいくもハードなあの作品世界に入っていきたいと願う人は多いはず。筆者もその1人です。しかし二頭身…
    3. ネカフェの個室に不気味なトランプが……Xユーザーの“恐怖体験”に17万いいね

      ネカフェの個室に不気味なトランプが……Xユーザーの“恐怖体験”に17万いいね

      キーボードに差し込まれたトランプのジョーカーと、その裏に書かれた「げぇむすたあと」の文字。Xユーザーの「たーけ」さんが、たまたま入ったネット…
    4. フライドポテトで、白ごはんを食べる……?ドンキ新作が過去イチ理解できなかった件

      フライドポテトで、白ごはんを食べる……?ドンキ新作が過去イチ理解できなかった件

      「みんなの75点より、誰かの120点」を合言葉にドン・キホーテが展開している偏愛メシシリーズ。10月1日に「本当にこの組み合わせが好きな人が…
    5. 将棋倶楽部24、2025年末でサービス終了 27年の歴史に幕

      将棋倶楽部24、2025年末でサービス終了 27年の歴史に幕

      オンライン将棋対局サービス「将棋倶楽部24」が、2025年12月31日をもって終了することが発表された。運営する席主の久米宏氏が10月1日付…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト