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AIイラストを広報活動で使用するときのあり方 スシローのSNS投稿で注目

update:

 回転寿司チェーン「スシロー」の公式Twitterが4月11日、AIイラストに描かせたという複数のイラストを投稿。「スシローのサーモン」のビジュアルをAIに描いてもらったとのことで、いずれもAIらしい意味不明な仕上がりとなっているのですが……。

 これを「面白い」と受け止める人がいる一方で、学習法などで問題を抱えるAIイラストを「企業が広報活動に使用するのはいかがなものか」などの意見もあり、広報利用における一つの参考ケースとなりそうな様相をみせています。

  • ■ AIイラストが抱える問題

     スシロー公式Twitterアカウントが投稿したAIイラストは、1枚目が「サーモンのお寿司が波にのってサーフィンしているような光景」、2枚目のお題は「焼きとろサーモン」ということもあり、「溶岩地帯の中で良い具合に焦げ目がついたサーモンのお寿司」。

     残りのイラストも似たような「とんちんかん」テイストで、人なら思いつかないだろう作品ばかりとなっています。何も深読みせずに見るとただクスっとしてしまう内容ですが、問題視されているのはAIが生成したものであるということ。

     基本的にAIのイラストには「元となる学習データ(トレーニングデータ)」が存在します。現在世界規模で、特に問題視されているのがその学習方法。

     提供しているサービスによって「画像生成AI」の学習方法はことなりますが、収集先は大きく「2つ」に分かれます。

    【「画像生成AI」の学習先】
    (1)ネット上にあるデータを勝手に学習(無断学習したAI)
    (2)作者に許可を得て倫理的(著作権的)な問題をクリアした上で学習(許可得て学習したAI)

     (2)の場合は作者の同意を得て行われているものなので、不安点もなく問題視されていません。例えば「Shutterstock」がこれに該当します。
    (「厳密にはサービスの準拠法にもよるのでは?」「ベルヌ条約の影響については?(キリッ)」という深掘りの声が聞こえてきそうですが、(2)の場合は権利処理がされているので、何かあれば運営会社の判断にまかせてここでアレコレ想像するのはひかえます)

     一方、強く問題視されているのが(1)のパターンの「無断学習したAI」によるAIイラスト。誰かがインターネット上に投稿したイラストを「学習データ(トレーニングデータ)」として勝手に学習しているからです。

     現在多くのサービスが(1)の学習方法をとりいれています。(2)は、どちらかといえばまだ少数。

    ■ 「無断学習したAI」の問題点

     とはいえ、「無断学習したAI」でも「倫理的な問題」は残しつつ、学習すること自体は「日本の法律では原則問題ない」と判断されています。根拠は「著作権法第三十条の四」(※1)です。

     「じゃぁ何が問題なんだよ!」ということになるわけですが、AIが描いたAIイラストの権利の扱いです。

     AIが出力した絵は「原則として著作権は認められない」というのが現行法の考え方です。根拠は「著作権法第二条一項一号」(※2)です。ちなみに、人が手を加えた場合は別。認められる可能性があります。

     これだけ聞くと「じゃぁやっぱりAI単体の作品なら問題ないじゃん!著作権ないなら自由に使えるんでしょ」となりそうなのですが、まだ議論する部分は残されており「元データ(学習先)の翻訳権などの扱い」。

     これはAIに学習された元データの著作権者が「私の作品をもとにしてる!」「作風パクった!」と主張し訴えた場合、「結論がどうなるか」「どの権利にまで及ぶのか」まで判断がついていない部分。海外でも訴訟が始まったばかりです。

     現状、(2)のパターンの画像生成AIサービスでは、運営社と元の著作権者間で問題をクリアにしているのでこの点心配ありませんが、(1)の場合は突っ込まれる可能性を残しています。つまり、著作権の扱いについて国内外でまだ議論する、結論を待つ部分を多く残している状態。

    ■ 広報利用の際は説明が必須かも

     こんな現状もあり「企業が広報利用のためにAIイラストを使用するのはいかがなものか」と、言われてしまった今回のスシローの投稿。

     しかしながら、スシローのケースでいえば「(2)作者に許可を得て倫理的(著作権的)な問題をクリアした上で学習(許可得て学習したAI)」というパターンの画像生成AIを使っていれば問題クリアとなります。スシローが何の画像生成AIサービスを利用したか公表してない以上、あくまで仮の話ですが……。

     まぁ、スシローの例を参考にするならば、今後AIイラストを広報活用する際には(2)のようなサービスを使って画像生成し「著作権問題をクリアした画像生成AIを使用し制作しました」や、「使用した画像生成AIサービス名は~」など一言添えると、変な誤解はうけずにすみそうです。さらに著作権を意識するなら、(2)のようなサービスを利用しつつ「人が作品に手を加えて」発表すること、その旨含め公表することが大事になってくるかと思います。

     AI活用は全世界でまだ始まったばかり。現在政府では法整備、業界ではルール作りが模索されている状態ですが、追いついていないのが現状です。「ネットでは大丈夫だと書かれていた」「専門家に聞いたから間違いない」と一人二人の意見を参考にするにはまだまだ危うい状態。今後どう転ぶかわかりません。

     新しいサービスは魅力的です。だからこそ使い始めるときは、いつも以上に注意を払う必要があるといえます。

     特に「会社の顔」になる広報活動においてはより一層。こんな激動の時代に「広報職」を担当するのは大変なことだな、と端から見ていて本当に思います。過去には私も広報職を担当したことがあるため、個人的には「頑張れ広報さん!」と応援しています。

    (※1)【著作権法第三十条の四】
    (著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用)
    第三十条の四 著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

     一 著作物の録音、録画その他の利用に係る技術の開発又は実用化のための試験の用に供する場合

     二 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。第四十七条の五第一項第二号において同じ。)の用に供する場合

     三 前二号に掲げる場合のほか、著作物の表現についての人の知覚による認識を伴うことなく当該著作物を電子計算機による情報処理の過程における利用その他の利用(プログラムの著作物にあつては、当該著作物の電子計算機における実行を除く。)に供する場合

    (※2)【第二条一項一号】
     著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」

    <参考・引用>
    スシロー公式Twitter(@akindosushiroco
    著作権法
    AIによって生み出される創作物の取扱い(内閣官房知的財産戦略推進事務局
    画像生成AIは新たなアート? それとも著作権侵害? 最前線に迫る(NHK
    アーティストの作品でAI訓練 「無断で複製された」米国で集団提訴(朝日新聞
    ※見出しの画像はスシロー公式Twitterのスクリーンショットです。

    【筆者プロフィール】
    宮崎美和子:鹿児島県産。放送関連、印刷、ソフト開発会社を渡り歩きさまざまな職種を経験。ライターデビューもこの頃。その後ゲーム会社に転職しMD(主にサブライセンス管理)を担当。2社目のゲーム会社ではマーケティングの後、運営・システム関連を管理職として担当。2008年にWEBライターとして独立。得意分野はオカルト、ネットの話題、過去職の経験から著作権と雑多。趣味は読書。40才すぎてバレエを習い始めました。

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