日本は47つの都道府県に分かれており、全国各地には「方言」が存在します。言葉の違いはもちろんのこと、細かい言い回しやイントネーションの違いまで含めると、おそらく数百種パターンにも及ぶことになりそうですが、一体どれほどの種類があるのか?ふと気になったので、弊社ツイッターアカウントにて質問してみることにしました。

 質問の内容は「『買っておいたプリン食べた?ないんだけど。腹立つ』をそれぞれの方言にして教えてください」というもの。2023年1月に行い、投稿には59件の返信と、24件の引用によるコメントが寄せられ、多くの方言が確認出来ました。ご協力をいただいた皆様、誠にありがとうございました。

■ 北海道・東北地方

 北から順番に見ていきます。まずは北海道の方。

・買っておいたプリンがめた?ねぇえんだけど。がっつ腹立つ(北海道函館)
・買ったったプリン食べた?(or 食べたのかい?)ないんだわ。腹立つ(北海道札幌市)

 といったコメントが寄せられました。比較的分かりやすい言葉ではありますが、津軽海峡側にある函館の方は、一部東北弁のような表現も見られます。さすがは広大な土地をもつ北海道。その言葉も地域によって大きく違うようですね。

 続いては、方言強豪県を多く抱える東北地方。

・買ってあったプリン食ったのな?ねんだばって!わぃきまやげるじゃ!!(青森県青森市)
・買っといたプリン食ったんであんめ?にっしゃ!っこの!いぢやげっごど!!(福島県いわき市南部)
・買ってあったプリン食ったんだが?無(ね)でばよ!頭(あだま)さ来るでゃ(秋田県秋田市)
・かっでだプリンくっだが?ねども。おかはらわりな(秋田県横手市)
・買ってだプリン食べだが? ねんだげっと。ごしっぱらやげる(宮城県大崎市)

 東北はなんとなく訛りの強い印象がありますが、イメージ通り言葉のクセもやや強め。特に「腹が立つ」の部分は各県独特の言い回しがあるようで、他地方の方からするとなかなか解読が難しいと言えるでしょう。

■ 中部地方

 次は、中部地方。石川や静岡など、環境も個性も異なる県が多い印象です。

・買っといたプリン食べたんけ?ないがいね。はげぇー(石川県小松市)
・買っといたプリン食べたが?ないがやぜ。はがやしい!(富山県砺波市)
・買っとったプリン食べてまった?あれへんけど。でらむかつくが!(愛知県尾張地区)
・買っといたプリン食べた?ないんだけん。腹立つ~(静岡県静岡市)

 9県からなる中部地方ですが、地方によって方言の強弱がある模様。北陸側はやや強く、東海側は比較的標準語に近い言葉であるようです。この辺りは人口や人口密度によっても差があると言えそう。

■ 関東地方

 あまり方言のイメージがない関東からもよせられています。

・買っといたプリン食べやがって、ねーんだよ、ムカつく!(東京都東村山市)
・買っておいたプリン食べちゃった?ないんだけど。腹立つ(東京都新宿区、中野区、渋谷区)
・買っといたプリンくっちった?ねんだけど。いっぢやけんな(茨城県央)

 東京都については、地区によってやや言葉が荒っぽくなるものの、いわゆる標準語で全国どの地域でも伝わる言葉ですね。一方茨城県は、やや方言色が強め。今回はコメントがありませんでしたが、栃木県や群馬県の方言も聞いてみたかったところです。

■ 近畿地方

 お次は近畿地方。関西の言葉といえば、TVなどを通じて標準語の次によく耳にする言葉です。しかしながら県ごとの細かい違いは、他の地域の人にはあまりわかりません。どんな違いがあるのか?

・こうといたプリン食べはった?あらへんねんけど、かなわんわぁ(京都府京都市)
・こうといたプリン食うた?なんでや!ごーわくわ~(兵庫県姫路市)
・こぅてたプリン、くぅた?あられへんやん。めっさムカつく(大阪府泉州エリア)
・買っといたプリン食べたん? ないやん! 腹立つなぁ(三重県四日市市)

 寄せられたの声の内、3府県の方言で同じなのは「買っておいた」を「こうといた」と話す点。まさに関西弁といったところでしょうか、近い地域ならではの共通点があるようです。兵庫県の「ごうわく」は「業が沸く」を縮めた言葉だそうで、はらわたが煮えくり返っている様子が伝わりますね。

■ 中国地方

 続いて中国地方。山口や岡山など個性豊かな県を抱えていますが、どんな違いがあるのでしょう?

・買うちょったプリン食べたん?ないんじゃけど。ぶち腹立つ(山口県下関市)
・買(こ)おとったプリン食(く)うたんか?ねえが。ちばけな(岡山県岡山市)
・こーちょったプリン食(く)ったかいの?のーなったに。えらくらしい!(島根県松江市)

 こちらでも近畿地方同様に、「買う」を「こう」と表現する言い回しが見られる模様。「ちばけな」「えらくらしい」など、「腹が立つ」の言い方にも、特徴が見られます。

■ 四国地方

 続いては四国地方。4つの県が隣り合った地域です。方言的にもかなり影響をうけあっていそうですが、違いはあるのか?

・買(こ)ちゃあったプリン食べたが?ないやいか!しょうまっこといよいよ腹が立つが違う!(高知県香南市)
・こうとったプリン食べたん誰なん?ないんやけど。腹立つわ~(香川県丸亀あたり)

 四国地方で寄せられたコメントは2件。気になるのはやはり高知県の方言です。やたらと文字が増えていますが、なんでも土佐弁で「とても」は、しょう、いよいよ、まっこと、ほんとう、等があり、重ねるほどに怒り度がアップ。さらに「~が違う」でその感情を強調するのだとか。

■ 九州・沖縄地方

 最後に東北と同じく方言強豪県を多くかかえる九州・沖縄地方。

・買っとったプリン食った?ないんやけど。でたんイラつくわぁ(福岡県北九州市)
・買っとったプリン食ったね?なかっちゃけど!がばむかつく(福岡県久留米市)
・買っちょったプリン食べた?ないけんが。くらすぞ(福岡県田川市)
・買っとったプリン食うた?なかばってん。はらんたつ(熊本県北)
・こうとったプリン食べた?なかとけど!はらんたつ!(長崎)
・買っちょいたプリン、食べた?なんか無いんじゃけんど。あー、はがいいなぁ!(大分県中部地方)
・買っちょったプリン、食うた? なかっちゃけど?がいむかつく(佐賀県佐賀市)
・買っちょったプリン食べた?ないっちゃけど?でげむかつく(宮崎県宮崎市)
・買てぃあたんプリンかでぃな?ねんど!ゆむねぃたさ!(鹿児島県大島郡瀬戸内町)
・やーわーが買ってたプリン食べたば?ないやっし。でーじ腹立つやっさー(沖縄県)

 九州地方は全県からコメントが寄せられました。中でも福岡県が多く、「腹が立つ」の言い回しを久留米市では「がばむかつく」、田川市では「くらすぞ(殴るぞの意)」とより強烈な言葉で表現しています。

 ちなみに筆者も鹿児島県鹿児島市出身者。「こうちょったプリン、たもいやった?なかけど。はらんたつ!」といったところでしょうか……。離島の大島郡ともまた異なることがお分かりいただけると思います。

 以上、寄せられたコメントを一部抜粋してご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?同じ文章でもこれだけ違う言葉になるなんて面白いですよね。同じ県内でもあなたの住んでいた地域の方言とちょっと異なるというものもあったのではないかと思います。

 国土面積は狭いながらも、山や川などで隔てられた地理的要因や、江戸時代に藩で分けられたことで形成されたとされる、歴史の深い方言。しかしながら、話し手の減少によって、その文化は徐々に失われつつあるのだとか。地域ごとの特色をあらわす言葉として、積極的に後世に伝えていきたいですね。

<出典>
おたくま経済新聞公式Twitter 2023年1月20日投稿

(山口弘剛)