「うちの本棚」第三十三回は、忘れられたSFヒーロー『サイボーグエース』を取り上げます。宇宙からの侵略に立ち向かうエースの勇士をご堪能ください。

昭和46年9月から「少年サンデー」に連載された北野英明、初の週刊誌連載作品。


物語の舞台は連載時から10年後の1981年9月に設定されていた。
異常気象により強力な砂嵐が東京を襲い、東京は砂に埋まってしまう。また日本の各地でさまざまな異常現象が起こり、多くの犠牲者がでる。

東京の砂嵐を治めるため時限装置付きのミサイルを打ち込むが、ミサイルの爆発を待たず砂嵐は消え、さらにミサイルは不発となって砂の中に突き刺さった状態となっている。主人公である健太郎を含めた爆発物処理班がそのミサイルの弾頭を処理するため、ミサイルのある場所に到着したところからストーリーは始まる…。

不注意から放射能防護服を傷をつけてしまった健太郎はゴローと共に班を離れ本部に戻ることになったが、残った処理班は、そのミサイルがすり替えられたもので地球上にはない金属でできていることに気づき、さらにはミサイルからでる光と音波によって意識を失い、防護服のヘルメットの中に何かを侵入させられてしまう。

一方本部に戻った健太郎は、念のため薬液シャワーを浴びることになるが、シャワールームで死んだ父の幻影に話しかけられ気を失ってしまう。父の幻影は赤ん坊だった健太郎と両親を襲った恐ろしいできごとについて語っていたのだが…。

病室のベッドで目覚めた健太郎のもとにゴローがやって来て、ミサイルと処理班の全員が消えてしまったという。それを確かめに行こうとする健太郎の前に戻ってきた処理班だったが、どうも様子がおかしい。処理班のメンバーは司令室を襲い、日本の征服、いや地球の侵略を始めようとするのだった。

ミサイルのあった場所に戻った健太郎とゴローは流砂のため車ごと砂の中に。窒息して死んでしまうところを救ったのは「サイボーグエース」と名乗る超人だった。

エースが語るところによると、これはプラズマ星人の地球侵略だという。こうしてサイボーグエース、そして健太郎とゴローの戦いが始まるのだった。
 
細かい説明は後回しにしてスピーディーに展開するストーリーはなかなか楽しめるが、プラズマ星人が地球を狙っていることをなぜエースが知っていたか、また赤ん坊だった健太郎と両親に起こったことの真実については語られることなく終了してしまったのは残念だ。実は健太郎の両親がこの物語の重要なカギを握っているのだが、そこまで話を進める前に終了してしまった感がある。

巨大ロボットが登場したかと思えば、それは要塞であり宇宙戦艦でもあるというのはなかなか面白いアイデアだったが、そのスケール感ももうひとつ活かしきれなかったような気がする。

北野の描く線はスッキリしていて読みやすく、虫プロでアニメーターを経験したことがマンガ作品でも活かされているのだろう。

北野はこの作品のあと麻雀劇画の第一人者となり、そのジャンルで活躍することになり、この『サイボーグエース』は忘れられた作品のような印象があるのだが、こんなヒーロー作品もあったということを知っておいてもらいたい。

書 名/サイボーグエース
著者名/北野英明(画)、ジャック=ラカン(作)
出版元/若木書房
判 型/新書判
定 価/380円
シリーズ名/コミックメイト
初版発行日/昭和47年10月1日(第1巻)、昭和47年11月10日(第2巻)
収録作品/サイボーグエース

■ライター紹介
【猫目ユウ】

ミニコミ誌「TOWER」に関わりながらライターデビュー。主にアダルト系雑誌を中心にコラムやレビューを執筆。「GON!」「シーメール白書」「レディースコミック 微熱」では連載コーナーも担当。著書に『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』など。