「うちの本棚」、今回は富野由悠季監督の『伝説巨神イデオン』、ふたつのコミカライズを収録した大都社版『伝説巨神イデオン』です。
テレビ版と劇場版、ふたつのコミカライズが1冊で読めるのはなかなか欲張りな単行本といえるかもしれません。
本書はサンライズ制作、富野由悠季監督のテレビアニメ『伝説巨神イデオン』およびその劇場版映画のコミカライズ作品である。テレビ版は放映に合わせて、秋田書店「冒険王」に古城武司によってコミカライズが連載され、劇場版は公開に合わせて講談社「コミックボンボン」に池原しげとによって連載された。
単行本は古城版が82年に秋田書店「サンデーコミックス」で刊行されたあと、本書にも収録。池原版は本書が初収録である。
池原しげとの劇場版はアニメ版のシナリオをほぼトレースする印象で構成されている(アニメ版とそのシーンに登場するキャラクターが一部異なっていたりする場面がある)。劇場版アニメをコミックでもう一度楽しむという意味での役割は十分に果たしているわけだが、アニメ版の完成度が高かったために、コミック版の物足りなさを感じてしまう結果となってしまった感は否めない。もともとストーリーが複雑な作品を低年齢向けコミック誌に掲載するのだから、ある程度の要約や省略は仕方ないだろうし、その上である程度の年齢の読者にも納得のできる内容に仕上げているのは、池原しげとの力量と言っていいのだと思う。
一方、古城武司によるテレビ版コミカライズだが、これもこれで古城の苦労がうかがえる作品である。
というのも「冒険王」は月刊誌であり、毎週放送のあるテレビ版のストーリーを月一回の連載でフォローしていくのだから、およそ4回分のシナリオを1回の連載で消化することになる。かつて古城が手がけていた『超人バロム1』など、1話完結の作品であれば、その月に放送される中から1話をチョイスすればよかったが、本作ではそれはできない。
連載当初はそれでもベースとなる1話を中心にした印象だったのだが、後半になるとかなりのスピードでストーリーを消化している感がある。
そして怒濤の最終回を迎えるわけだが、連載初出ではシェリルの独白で終了していて、打ち切りとなったテレビ版ともども、ぶっち切りという印象だったのだが、単行本化の際、最終3ページを描き下ろしていた。
秋田書店「サンデーコミックス」のカバー折り返しでは、「かぎられたページで、どこまでえがきあげることができたか…とにかく一生懸命とりくみました」と作者の言葉がある。まさのその通りだったのだろうと思う。またそこまで苦労した作品であるにもかかわらず、原稿が紛失しており、本書収録には秋田書店「サンデーコミックス」を原稿としてつかっている。
ちなみに『伝説巨神イデオン』は個人的にもっとも好きなロボットアニメで、思い入れも強い。今回取り上げたコミカライズ作品もアニメ版のイメージを損なうことのないもので、ある意味アニメ版を補完する作品といえるだろう。
初出:劇場版・講談社「コミックボンボン」1982年6月号~9月号
テレビ版・秋田書店「冒険王」1980年6月号~1981年3月号
書 名/伝説巨神イデオン
著者名/古城武司、池原しげと
出版元/大都社
判 型/B6判
定 価/880円
シリーズ名/STAR COMICS
初版発行日/1999年6月8日
収録作品/劇場版伝説巨神イデオン(接触編・発動編/池原しげと)、テレビ版伝説巨神イデオン(古城武司)
(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/)