今回の「特撮映像館」は「大魔神」シリーズ最終作、『大魔神逆襲』を紹介します。
前2作とは雰囲気の違う大魔神は、子供たちのヒーローに軸足を向けた結果といえます。また本作では魔神の遣いの大鷲が登場し、魔神が宝剣を抜くといった前2作には見られないシーンもあります。
『大魔神』シリーズの第3作。本作で子供が主人公に据えられたのは監督の強い意向だったという。また、テレビの特撮作品や『ガメラ』『ゴジラ』といった劇場作品によって怪獣ブームに火がつき、子供たちのヒーローとしての巨大ヒーローというものが特撮作品の流れになってきたことを受けたものでもあったようだ。
本作は併映なしの2番館上映だったこともあってか興行的には不振に終わり、第4作の企画もあったようだがシリーズは終了した。
「妖怪シリーズ」も第3作は旅物になっていたが、本シリーズもこの3作目は子供たちの旅を追う形でストーリーが進行する(「妖怪シリーズ」よりも本作の方が制作は先になるが)。そのため前2作とは印象が違って感じられる。魔神が目覚めるキッカケも前2作では「清らかな乙女の祈り」だったが、本作では「無垢な子供の祈り」となっている。
本作では、魔神の使いとして大鷲が登場しているが、第1作でも鳥のような光が登場していた。また魔神が宝剣を抜くシーンも本作が最初で最後となる。
前2作では湖の中の島のような場所に武神像があり、地域の信仰の対象となっていたわけだが、本作では山の中に武神像はあり、その山自体が足を踏み入れることをはばかられる場所として知られている。
子供たちが父や兄が捕らえられている隣国へ向かうため、無謀ともいえる魔神の山を越える旅をする過程は確かにストーリーの進行に目が離せない。とはいえ最終的に魔神にすがって助けを乞い、それを受けて魔神が目覚めるというのはいささか安易な印象ではある。というのも前2作が武神像自体に対する冒涜が悪役側からあったのに対し、本作では大鷲に対して鉄砲を撃つというものくらいだからだ。ほぼ100パーセント子供たちの祈りを受け入れて魔神が目覚めるというのも前2作と違う点かもしれない。これは大魔神が巨大ヒーロー化したためともいえる。子供の観客には分かりやすいし、自分たちのヒーローとして受け入れやすくもあるだろうが、この路線でシリーズが続けられるよりはここで終わってよかったのかもしれない。
それにしても大魔神の造形は素晴らしい。人間を射すくめる橋本 力の目の演技はもちろんだが、石像が動いているという臨場感が伝わってくるこの造形は他の特撮作品を圧倒している。ガメラ、ゴジラに並んで特撮映画の代表的な存在になったもの頷けるというものだ。
監督/森 一生 特技監督/黒田義之
キャスト/二宮秀樹、堀井普次、飯塚真英、長友宗之、北林谷栄、安倍 徹、ほか。
1966年/87分/日本
(文:猫目ユウ / https://suzukaze-ya.jimdo.com/)