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リスカしても心の痛みはごまかしきれないよ?心の辛さを上手に表現するために

update:

 リストカット、いわゆるリスカは心に何かを抱え込んでしまっているとやってしまう人が結構いる、自傷行為。その理由は様々ですがリスカをやってしまうときは自分に対する強い否定感や自罰意識、生きていることに対する辛さや恐怖などからの逃避が自傷行為に繋がることが多く見られます。

 心の声に耳を塞ぎたくなる、心の声を自分でうまく受け止めきれない。自分の中で感情が処理しきれなくなって生きている感覚すら分からない。そんな時に自分の体を切りつけ感じる痛みと流れる血を見ることで、生きている事を実感したり心の辛さを紛らわせたりする……。でも、体を傷つけた後しばらくして訪れる冷静さは、心への痛みをさらに深くします。

 こんな事やってはダメなのに、傷が残ってしまうのに、生きるの辛いけど死ぬのも怖いのに。本当に生きたくない人は本当にあっけなく自分の命を捨て去ります。自傷行為は、「本当は生きたい」「死にたくないけど生きている辛さを何とかしたい」という心の叫びであることが多いのです。

  • ■精神科病棟での患者たちの話から

     精神科病棟に入院している人で、「死にたいという願望から農薬を一気に飲んで死のうとしたけど、家族に発見され一命をとりとめた」という人と、「どんぶり1杯分の睡眠薬をひたすら飲んで死のうとし、やっぱり家族に発見されて集中治療室から精神科病棟に移された」という人に話を聞いたことがあります。

     二人とも、「うつ病」という診断名が付いていました。
    二人とも普通の主婦のはずでした。家族仲も悪くはなさそうで面会に来ていた夫ともにこやかに話をしていたのが印象的でした。二人に共通していたことは「どうしても死にたい気持ちをうまく抑えきれなかった」ということ。

     胃洗浄の激しい苦しさからの、集中治療室で身動きの取れない入院生活……もう二度と経験したくないと言います。「今は入院しているからいいけど、これが日常に戻った時にまた死にたくなるんじゃないかと思うとそれがすごく怖い。でも家族にはもう迷惑はかけられない」にこやかに話す中でも真剣さを帯びた言葉に、ただ相槌を打つ事しか私はできませんでした。

     また、別の若い女性患者は初夏の日差しの暑い時でもアームカバーを外すことはありませんでした。「これ外すと(傷跡が)見えちゃうから。引くでしょ」と話す彼女は何度も自傷を繰り返し、心の辛さに耐えきれずに暴れた結果の入院だったそうです。
    「血を見ると落ち着く。何か分からないけど。あぁ私生きてるんだなって」入院中は自分を傷つけるものは一切手元に置くことは禁じられる為、自傷のリスクは大きく減ります。
    「まだ退院した後にどうなるか分からないし不安。入院していたほうが安心」と笑っていましたが、その目はとても不安さを帯びていました。「また傷つけたくなった時にどうしたらいいか、入院中にちゃんと覚えておきたい」と言う一方で、「今は楽だけど死にたいって気持ちをどうしたらいいか分からなくなりそう」と。

     入院中、診察と薬物治療、作業療法や集団レクリエーション、臨床心理士の講義などのプログラムを継続していく事で、日常生活に支障がない状態に向かえる様リハビリを重ねていきます。心のコントロールを覚えることで自殺や自傷をしなくて済む状態へと持っていくのです。

     しかしこうした治療で心の治療が完全に終わるのかといえば、実はそうでもない事を知っている人も多いかと思います。心の病、精神的な病気というのは実は脳の病気のひとつとされており、その脳は他の臓器と違い非常に複雑であり、構造もまだ全部解明しきれていません。

     そして今でも脳の感情や思考などをつかさどる部分に対する研究と、その不具合に対する治療薬の研究は途上のさなか。とても効く薬でも副作用が出てしまって使えないという場合も多くあります。

     薬自体、自己コントロールのための補助的なもの。自転車を上手く乗りこなせない子供に使う補助輪みたいなものです。うつなどの治療には薬物療法は非常に重要なものですが、社会生活に支障をきたさない程度になれるためには考え方や感じ方を変えていく事も非常に重要となるわけです。その為に入院や通院による治療と、デイケアといったリハビリ施設などでのトレーニングや臨床心理士によるカウンセリングなどの両側面でのアプローチが肝心となるのです。

    ■SNSで愚痴っても病んでもべつにいいじゃない。それがガス抜きになるのだから

     今、SNSでは自傷行為やうつの話題が投稿されると、そこへの返信という形で自身の自傷行為の過去や現在進行形の話を書き込んでいる人があちこちで見られます。ネットが発達した現在、華やかな情報だけでなくネガティブな話題も簡単に共有できるようになりました。

     ネガティブな話題自体の共有は悪くないと思います。心の中の辛さは誰かに聞いてもらうだけで軽くなります。同じ気持ちを共有し共感する事で、自分だけじゃないという安心感も得られます。この安心感は得るべき安心感。自傷に走る人は自分自身が許せなく自分に罰を与えるという感覚で体に傷をつける事も多くあります。

     しかし、これだけいろんな人が同じように心に痛みを感じ、苦しく辛い思いをしている。自分だけが悪いとか処罰しなければいけないなんて事は一つもなくて、誰かも同じ辛さ苦しさを背負っているかもしれない……。

     自分だけ悪いんじゃないのなら、自分を処罰する必要なんかないのです。たくさんの人が同じような心の荷を背負っていることに気が付くと、全員でなくても同じ人がいるんだっていう気持ちになれるのではないでしょうか?自分一人ではないという事は同じ気持ちを分かってくれる味方がいるっていう事です。

     少し前に自殺願望者をSNSで募り一緒に死のうと持ち掛けた連続殺人犯がいました。「一緒に死のう?」って言葉は本当に辛くて、でも一人で死ぬのは本当は怖い人にはすごく甘い誘いの言葉になります。でも、本当にそれでいいの?確かに死んでしまえば苦しい気持ち、辛い思いから逃げ切れるかもしれない。しかし無事に死に切れる保証なんてどこにもないばかりか、殺人事件に巻き込まれるケースも実際に起こっているのです。

    ■辛ければ逃げてもいい。でも逃げる方向は間違えないで。

     辛ければ逃げても大丈夫。でも逃げる方向だけは間違えないでください。誰かに伝える方向に逃げてください。とはいえ、誰でもいいからとネット上で出会った見知らぬ人にいきなり会って聞いてもらうのは危険です。自殺願望者や心の弱った人たちが犯罪に巻き込まれるケースは先に触れた事件だけではなく、いくつも起きています。

     しかし、インターネットにはそうした悪い人がいる一方で、話だけを聞いてくれる人も沢山います。とにかく「助けて」とSOSを発信してみる。「つらい」「苦しい」「悲しい」そうした思いは全て言葉で発さなければ誰にも伝わりません。それに、ただ書くだけでスッキリすることもありますしね。死にたい欲求が起こると周りの事など見えなくなってしまいますが、そうなり始める前に、わずかでも誰かに話を聞いてもらう行動を起こすと少しは心の荷が下せるはずです。

     受け皿が少ないのが歯がゆくて仕方ないのですが……。孤独が一番の毒です。成人の4人に1人は自殺願望を持った事があるという厚生労働省の調査もありますが、世知辛い世の中で様々なものから逃げられない、行き場がない、そんな思いを抱えている人ばかりなのでは。そしてそれは大人も子供も変わらないと思います。

     一つ言えるのは、死にたい時ほど周りが見えなくなっているという事。逃げ道はあるはずなのに見えなくなっているんです。孤独になると誰も逃げ道を示してあげられない。こんな自分なんてと思っている自分自身を「こんなだって別にいいじゃない」と肯定してもらえない。「こんな自分」だっていいんです。大丈夫。

     生い立ちが最悪でも、否定され続けて育てられて自分に自信がなくても、何らかの障害を抱えていても、それは100%自分が悪いわけじゃない。だから辛くなったら遠慮なく誰かに助けを求めてみてください。ツイッターでもFacebookでもLINEでも、悩みを相談できる窓口はあちこちに広がってきています。ただ、まだ完全にネットワーク化されていないのは今後の課題であると言えると思います。

     昨年秋に長野県がLINEを利用した悩み相談窓口を開設し好評となっていますが、こういった試みが機能するためには寄せられた悩みにいかに寄り添えるか、適切な助言ができるかに大きくかかってきます。

    長野県のLINEを使った相談画面イメージ

     各自治体でこうした取り組みを始めているようですが、自治体により悩みの相談窓口の質などにはかなりバラツキがあるのもまた事実。悩める現代社会、一人でも心の荷物を軽くできるように声を掛け合えられる様になるといいですよね。

    <参考>
    専門相談機関・相談窓口|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイトこころもメンテしよう ~若者を支えるメンタルヘルスサイト~
    LINEと長野県による、LINEを利用したいじめ・自殺相談事業の中間報告資料を公開

    (梓川みいな/正看護師)

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  • 梓川みいな看護師(正看護師有資格者)

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    一般内科、呼吸器科、整形外科、老年科、発達障害などを得意とする。医療・介護福祉等に高反応。雑多なネタも紹介していきます。
    娘二人(ともに発達障害あり)とネコ二匹の母。シングル。

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