2018年6月20日(現地時間)、スウェーデン南部にあるカールスクルーナで、スウェーデン海軍の潜水艦ゴトランドの能力向上改装(Mid-Life Upglage=MLU) 終了を意味する「再進水式」が行われました。2015年から進められてきたこの能力向上改装は、船体を豪快に輪切りにするという大規模なもの。将来のA26級潜水艦に使われる技術も一部先取りして、再び海へ戻りました。
ゴトランドは、スターリングエンジンを用いた非大気依存推進(AIP)を採用した、世界初の量産型潜水艦、ゴトランド級の1番艦。1995年に進水し、1996年から就役しました。姉妹艦にはウップランド、ハッランドがいます。時代を先取りした艦ではありましたが、就役から20年が経過して陳腐化した部分も出てきました。これからも長く就役するために、様々な部分をアップグレードすることになった訳です。
まず、船体を中央部にある「ミッドタンク・セクション」の部分で輪切りにし、間に2mの新しいセクションを挿入。このセクションには能力を向上させた冷却システムが入っており、北極や南極から赤道直下まで、無理なく行動範囲を広げることができます。
また、AIPシステムも最新型のV4-275R Mk.IIIに換装。これは一足先に海上自衛隊のそうりゅう型潜水艦で、川崎重工によってライセンス生産されたものが運用中です。このほか潜望鏡などの光学装備、サイバーセキュリティが向上した作戦システムやセンサーシステム、そして長期間の潜航でも快適性を損なわないよう、乗員区画のシステム改修も行なっています。自動化が進み、海上自衛隊のそうりゅう型に比べると半分以下となる、わずか25人で運用できるゴトランド級ですから、もともと艦を上下の区画に分け、上部を居住区画、下部を兵装や機器スペースに当てる設計をしていたのですが、さらに居住性が増したようです。
改装を終えたゴトランドは、全長が2m延びた62m、基準排水量も80トン増加の1580トンとなりました。この能力向上改修で装備されたシステムは、ゴトランドでの運用を通じて改良され、次世代潜水艦のA26級に採用されることになるといいます。
再進水式には乗組員のほか、軍関係者、この改装に当たったサーブ傘下のコックムス関係者らが出席。生まれ変わったゴトランドの門出を祝いました。スウェーデン海軍では女性も潜水艦に乗り組んでおり、ゴトランドの航海長は女性です。
改装を終え、再進水したゴトランドは各種試験ののち、2018年の終わりから2019年にかけて戦列に復帰する予定です。この後姉妹艦のウップランド、ハッランドも同様の改装を受け、ゴトランド級潜水艦は2025年以降も現役にとどまる予定です。
Image:SAAB
(咲村珠樹)