こう暑いと色々やってられなくなりますが、暑い日に良く冷えたビールをグイっと飲むのは爽快感抜群!つい飲み過ぎた……という人も出やすい時期です。そんなお酒好きに呼びかけたつぶやきがツイッターで話題です。
「みなさーーーん!!! お酒は水分ではありませーーーん!!自分飲めないので感覚わかりませんが、暑いとこで飲むキンキンに冷えたビールは最高だと思います!!!でもそれと同じくらい水分摂りましょう!!! 毎年『水分はビール飲んでた』っていう脱水起こした患者さんがめっちゃきまーす!!!」
と呼び掛けているのは、とある病棟看護師のエレ子さん。そう、そうなんです。筆者も看護師ですが、救急搬送される急性アルコール中毒の患者さんの半分以上の人がこの言葉を口にします。「水分はビール飲んでた」、これ、大きな間違い。アウト。完全にダメです。リプライでもこれに補足する内容が次々と書き込まれたり、「スポーツジム行ってた頃は、インストラクターさんに、運動後アルコールを飲むと血管に吸収されるだけで、水分は摂れないので必ず水を飲んでから、お酒を飲んでくださいと口を酸っぱくして言われました」と受けたアドバイスで反応したりと大きな反響となっています。
https://twitter.com/fppraroifu/status/1018745337861689344
■ ビールや発泡酒の脱水作用
アルコールというだけで脱水作用がある事は段々知られてきています。飲んだアルコールは胃や腸でダイレクトに血液中に吸収され、肝臓へと運ばれていきますが、肝臓でアルコールを分解する際にアルコール脱水素酵素(ADH)の働きで有毒なアセトアルデヒドに変わり、さらにアセトアルデヒドを分解するために2型アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)という酵素が働き、酢酸に酸化されます。この二つの過程で体内の水分が使われる事がアルコール自体による脱水の主な原因となります。
さらに、ビールや発泡酒には欠かせない「ホップ」も強い利尿作用を示します。膀胱炎の漢方薬としても使われる事があるほどなので、ホップが入ったアルコール飲料はもうそれだけで脱水作用のある飲み物、と言えます。
■ 脱水は血液ドロドロから怖い病気に繋がる恐ろしい状態
体が脱水状態になると、熱の放散が妨げられます。この為、熱中症にもなるリスクも大幅にアップします。また、アルコールで酔うと脱水状態に気が付かないという事も多くあります。水の事故でアルコールを飲んだ後に死者が出やすくなるのは、酔って脱水状態に気が付いていない状態のまま水の中に入る事で脳が水分が足りていると勘違いしやすくなるため。実際に体の水分が足りていない状態なのに体の外は水で満たされているとのどの渇きや体内の熱を感じにくくなってしまいます。こうした何重にもわたる脱水が命の危険に繋がります。
体の脱水症状でもう一つ怖いのが、血液の濃縮。濃い血液はドロドロの状態、もし血管内に血栓のもととなるプラークが付いている場合、それが細い血管の場合は簡単に詰まってしまいます。心筋梗塞や脳梗塞が夏場にも出やすくなるのはこのため。肺に栄養を送る血管が詰まった場合、肺塞栓という呼吸に危機的な状態になる恐れも。エコノミークラス症候群でも話題になった肺塞栓は血管が血栓によって詰まる事で詰まった先の部分の肺が機能しなくなり、命に関わる呼吸困難を引き起こします。
■ お酒を飲んだ時は同じ量以上の水で水分補給を
散々怖い病気を出して恐怖心を煽っている様な書き方だと思う人も少なくないかと思いますが、実際に毎年急性アルコール中毒やアルコールによる脱水症からの死者は出ています。酔うと楽しいし暑い時期の発泡アルコールはのど越しも気持ちが良くてやめたくないもの。なので、水!水を飲みましょう。500mlの水飲んだら塩分タブレット1個食べておきましょう。アルコール入りの麦ジュースの代わりに麦茶も良いものです。体の熱を冷ましてくれます。どうしても酔いを楽しみたいのであれば、飲んだ量と同量以上の水を飲む、を必ず心掛けてください。二日酔いの予防にもなるし脱水の予防にもなる、アルコール中毒も防げるといい事尽くめですよ。
<参考>
アルコールの吸収と分解 | e-ヘルスネット 情報提供 厚生労働省
【監修】一般社団法人 和ハーブ協会 イー薬草・ドット・コム ホップ,セイヨウカラハナソウ(西洋唐花草)
他
<記事化協力>
エレ子さん(@fppraroifu)
(梓川みいな/正看護師)