スイスで開かれた「ダボス会議」が、2020年1月24日(現地時間)に閉幕しました。今年は各国政府のトップや企業経営者など、2800人以上が集まりましたが、その裏側には会議を安全に行えるよう、3か国の戦闘機が空を守っていました。
スイス東部グラウビュンデン州のダボスで毎年開かれる世界経済フォーラムの年次総会、通称「ダボス会議」。各国首脳や閣僚をはじめ、中央銀行総裁、企業経営者などが様々なテーマで話し合う場です。今回は環境問題が主なテーマとなり、50を超えるセッションで様々な方策が話し合われました。
世界中からVIPが集まるダボス会議では、そういった人々を狙ったテロの懸念がつきまといます。このため、開催地であるスイスをはじめ、隣接するオーストリア、ドイツの3か国が協力してダボス周辺の空を守っていました。
ダボスの周辺半径25海里(約46km)の範囲には、1月17日の13時から17時、そして会議の開幕前日となる1月20日8時から会議閉幕翌日の1月25日17時にかけて飛行制限空域が設定されます。これは飛行機やヘリコプターだけでなく、グライダーや模型、ドローン、パラグライダーなども対象となっており、事前に申請・許可を受けたもの以外、進入することができません。
このダボス周辺に設定された飛行禁止空域には、オーストリアのフォアアールベルク州とティロル州の一部が含まれます。このため、空域の警備にはオーストリア空軍と、さらにオーストリア空軍の応援でドイツ空軍も参加。接近する飛行物体があった場合は、警戒待機中の戦闘機がスクランブルし、進入を防ぐ仕組みです。
スイス軍は地上部隊を含め、1日平均約4900人体制で警備にあたりました。オーストリア空軍では「デーダルス(ダイダロス)2020」作戦と銘打って、1000名の兵士とスクランブル待機の戦闘機のほか、警戒監視用と救難用を含む10機の飛行機と10機のヘリコプターを動員して警戒に当たっています。1月23日にはタナー国防大臣が視察に訪れました。
ドイツ空軍は、オーストリアのザルツブルク州ザンクト・ヨーハン・イム・ポンガウにあるオーストリア空軍作戦司令部に要員を派遣。オーストリアに近いノイブルク・アン・デア・ドナウ空軍基地では、第74戦術航空団のユーロファイターがスクランブル体制で警戒にあたりました。
オーストリア空軍によれば、飛行制限空域を通過した航空機は、オーストリア内務省など事前の承認を受けたものが121機、さらに空軍作戦司令部の承認を受けたものが63機。なお、小型機1機が飛行制限空域を知らず進入する事態がありましたが、上空で警戒監視にあたっていたオーストリア空軍のPC-7により、トラブルもなく退去させられています。
世界各国から要人が集まるだけでなく、その人々にアピールしようと様々な団体がデモのために集まるダボス会議。トラブルなく終えられるのは、警察や消防、軍の人々が万一に備えて待機しているから、といえるでしょう。
<出典・引用>
スイス国防省 ニュースリリース
オーストリア国防省 ニュースリリース
ドイツ空軍 ニュースリリース
Image:スイス国防省/Bundesheer/Pusch/Koppitz Markus/Bundeswehr
(咲村珠樹)