ロシアとアメリカの宇宙飛行士3名を乗せ、国際宇宙ステーションへ向かうソユーズMS-16宇宙船を搭載したソユーズ2.1aロケットが2020年4月6日(現地時間)、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地の発射施設にセットされました。打ち上げは4月9日を予定しています。
ソユーズMS-16は、これまでのソユーズFGに代わって、新しいソユーズ2ロケットを使用する初めての有人ミッション。ソユーズ2自体は人工衛星の打ち上げや、ソユーズ宇宙船をもとに開発されたプログレス補給船の打ち上げに使用されており、ソユーズ宇宙船の打ち上げも2019年8月22日、人間の代わりにロボット宇宙飛行士のSkybot F-850を載せたソユーズMS-14で安全性の検証を済ませています。
今回、ソユーズMS-16に乗り組むのは、コマンダーを務めるロシアのアナトリー・A・イヴァニシン宇宙飛行士(元空軍戦闘機パイロット)をはじめ、ロシアのイヴァン・V・ワグナー宇宙飛行士(元ロケットエンジニア)、NASAのクリストファー(クリス)・キャシディ宇宙飛行士(元海軍特殊部隊SEAL・チーム3)の3名。
ワグナーさんは初の宇宙飛行ですが、イヴァニシンさんは2011年のソユーズTMA-22、2016年のソユーズMS-01に続く3回目、キャシディさんも2009年のスペースシャトルSTS-127(帰還時にJAXAの若田宇宙飛行士が搭乗)、2013年のTMA-08Mに続く3回目の宇宙飛行となります。
新型コロナウイルスが世界的に感染拡大している現在、究極の閉鎖空間である国際宇宙ステーションにウイルスを持ち込むと、あっという間に蔓延して重大な事態が生じます。このため、普段の打ち上げでも外界と隔絶された状況で打ち上げ前の日々を過ごす宇宙飛行士ですが、今回はメディア関連の取材スケジュールはすべてキャンセルされました。
宇宙飛行士たちは、ロケットに搭載される前に宇宙船の実機を使い、ドレスリハーサルも実施。4月1日に最終の訓練項目もクリアしました。
ちなみに訓練項目には、無重量状態で身体の血液が頭に昇る状況に慣れるため、ベッドに横たわって頭を下げた状態にする、生理学的な訓練もあります。この訓練はロシアだけでなくNASAやJAXAでも行われており、地上で感覚を養うには有効なものであることが分かります。
宇宙飛行士の最終訓練が終わると、ロケットと宇宙船の最終組み立てが始まります。バイコヌール宇宙基地のロケット組立棟では、4月25日打ち上げ予定のプログレスMS-14補給船も最終チェック中。そっくりな2つの宇宙船が並ぶと、プログレス補給船がソユーズ宇宙船をもとに開発されたのがよく分かります。
最終訓練が終わると、宇宙飛行士たちは打ち上げ前の穏やかな日々を過ごします。チェスなどのテーブルゲームのほか、卓球台やビリヤード台もあり、軽く体を動かすことも可能です。
ディーゼル機関車によって牽引され、専用の貨車に載ったソユーズロケットがロールアウト。宇宙基地の発射施設へ向かいます。
普段ロシアの人はマスクをする習慣がありませんが、今回は新型コロナウイルスの世界的流行を受けて、マスク姿で作業にあたる姿が確認できます。
発射施設で垂直に立てられたソユーズ2.1aロケットは、打ち上げまでの最終確認を行う整備塔に包まれます。
今後、ソユーズMS-16の打ち上げは4月8日に開催される委員会に諮られます。打ち上げ承認が得られると、モスクワ時間の4月9日11時5分6秒(日本時間4月9日17時5分6秒)に打ち上げられる予定です。この様子はYouTubeのTVロスコスモスのチャンネルのほか、NASA TVで生配信されることになっています。
<出典・引用>
ロスコスモス(ロシア宇宙庁)ニュースリリース
Image:Roscosmos
(咲村珠樹)