おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

アメリカ空軍 アフガニスタンのCOVID-19患者を移動隔離システムでドイツへ

 アメリカ空軍は2020年4月11日(現地時間)、アフガニスタンの新型コロナウイルス感染症患者を3名、4月10日に医療設備の整ったドイツへ移送したと発表しました。移送には感染を防止するための移動隔離システム(TIS)が2014年以来初めて使用されています。

  •  新型コロナウイルスは世界規模で感染が拡大しています。長く続く戦乱で医療設備が破壊されたアフガニスタンでも患者が発生し、人工呼吸器が絶対的に不足しているため、重症化した場合は手の打ちようがありません。

     このアフガニスタンで、アメリカ政府の業務請負業者が新型コロナウイルスに感染しました。医療設備の整ったドイツにあるアメリカ軍の医療施設で治療を行うべく、アメリカ空軍が移送を担当することになったのです。

     アメリカ空軍には、他者への感染や機内の汚染を防ぎつつ、伝染性感染症の患者を安全に移送する「移動隔離システム(Transport Isolation System)」、略してTISと呼ばれる装備があります。軽量なアルミ合金製のフレームと防水性の高いビニールでできたTISは、2014年に西アフリカで発生したエボラウイルス感染症の人道支援に使用するために開発されました。


     航空輸送用の「463L」というパレット規格に適合するように設計されたTISは、C-130輸送機やC-17輸送機で空輸することが可能。システムには空気を浄化するHEPAフィルターが備えられており、空気感染する病原体も外部に漏れないような作りとなっています。

     このTISを運用するのは、専門の訓練を受けた救急救命航空輸送チーム(CCATT)の兵士。医官や看護師、呼吸療法士などで構成された、高度救急救命の専門家です。CCATTではTISのほか、個人用の隔離ポッドを使用した患者搬送の訓練を重ねています。

     今回、アフガニスタンから新型コロナウイルス感染症の重症患者をドイツへ移送する「REACH 725」と呼ばれる任務は、4月8日に始まりました。24時間以内に患者を収容するTIS2セットの移送準備を整え、アフガニスタンへ向かいます。


     命令を受けたのは、イリノイ州スコット空軍基地にある第618航空作戦センター(618th AOC)。アメリカ空軍ではこのような事態を想定して、3月下旬からラムシュタイン空軍基地の第86輸送航空団とサウスカロライナ州のチャールストン統合基地において、TISを派遣する即応体制を敷いていました。

     第618航空作戦センター司令官のジミー・キャンラス准将は、派遣されるクルーに対し、電話会議システムを使って最新のCOVID-19患者移送プランに沿った情報を提供。キャンラス准将は「この計画が発令されて数時間のうちに、REACH 725のクルーは、3名のCOVID-19患者をアフガニスタンから4000マイル離れたラントシュトゥール地域医療センターへ安全に移送するプロセスを検証しました」と語っています。

     アフガニスタンで患者を収容したC-17は、4月10日夜にドイツのラムシュタイン空軍基地に到着。無事3名の患者をドイツ西部のカイザースラウテルン近郊にある、アメリカ軍ラントシュトゥール地域医療センターへと搬送しました。



     アメリカ空軍の空中給油機・輸送機部隊を統括する航空機動軍団(AMC)司令官、マリアンヌ・ミラー大将は「この歴史的な任務を完遂した部下たちを誇りに思います。今回のREACH 725は、航空機動軍団の優れた即応性を示すものであり、この世界的なCOVID-19の流行に関係する支援要請に、迅速に対応できることを証明するものとなりました。人々の希望を実現したい、という志は空軍兵士たちの血に深く息づいており、困っている人々のために尽力する部下の姿に、私は深い畏敬の念を抱いています」とコメントし、今回の任務に携わった人々を称賛しています。

     航空自衛隊にも「機動衛生ユニット(AMES)」というコンテナ式の“空飛ぶICU”があり、急患搬送に利用されています。軍用輸送機ならではの汎用性と機動力は、このような任務でも持ち味をフルに発揮しています。

    <出典・引用>
    アメリカ空軍 ニュースリリース
    Image:USAF

    (咲村珠樹)

    あわせて読みたい関連記事
  • ワクチン誤情報で命が失われた? 東京大学などが明らかにした「もしも」の世界(画像:PhotoAC)
    社会, 雑学

    ワクチン誤情報で命が失われた? 東京大学などが明らかにした「もしも」の世界

  • 「マスクは顔の一部」中学生の娘が水色のマスクにこだわる理由とは
    インターネット, びっくり・驚き

    「マスクは顔の一部」中学生の娘が水色のマスクにこだわる理由とは?

  • ライフ, 雑学

    「ヤブかもしれない」医療関係アカウントの見分け方 トンデモ治療法より正しい知識で…

  • askenが「コロナ禍以降のダイエット意識と生活習慣実態」を調査
    社会, 経済

    約9割が夏に向けて「これからダイエットをしたい」 askenの調査「コロナ禍以降…

  • ところでこれは我が家のコロナ家庭内感染を抑えたヒーローアイテムのひとつ、トイペ芯です
    ライフ, 雑学

    コロナ禍ならではの使い方!トイレットペーパーの芯を活用したライフハック

  • 航空自衛隊のC-130Hを敬礼で見送るサンタ(画像:USAF)
    宇宙・航空

    航空自衛隊C-130が参加 人道支援任務「クリスマス・ドロップ作戦」

  • SOSはお早めに。コロナ閉店危機を前にしてホビーカフェガイアが発した「シグナル」。
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    三重県伊勢市の模型店「ホビーカフェ ガイア」の緊急告知に反響 かっこいい散り際よ…

  • 画像提供:あいちょう釧路公式Twitter(@ainori_aichou)
    インターネット, おもしろ

    釧路のスーパーが自宅療養に役立つ「お見舞いセット」を考案 SNSで注目集まる

  • 後世に「推し」を残すために。レストランオーナーが鳴らす警鐘に反響。
    社会, 経済

    後世に「推し」を残すために レストランオーナーが鳴らす警鐘に反響

  • 「今の子たちはマスクを外したがらない」フリーアナウンサー・安田さちの投稿が反響。
    社会, 経済

    もはや「顔パンツ」 顔を見られるのが恥ずかしい……「マスクを外したがらない子ども…

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 「ウォーキング・デッド」特化オークションが初開催 総額3億円超の落札集まる
    エンタメ, 映画

    「ウォーキング・デッド」特化オークションが初開催 総額3億円超の落札集まる

  • ヤマト運輸、「当日配送サービス」開始 同一都道府県内運賃も新設
    企業・サービス, 経済

    ヤマト運輸、「当日配送サービス」開始 同一都道府県内運賃も新設

  • 嵐・四宮社長が偽アカウント多発に注意喚起 「来年のツアー用新アカウントの予定もなし」
    エンタメ, 芸能人

    嵐・四宮社長が偽アカウント多発で注意喚起 「来年のツアー用新アカウントの予定も現…

  • カレーシチューに、フレンチサラダ、本当にまずかった脱脂粉乳他(2300円)
    イベント・キャンペーン, 経済

    昭和の“たのしい給食”が期間限定で復活 脱脂粉乳まで再現した「絶滅危惧食フェア」…

  • 新商品「うまかっちゃん<濃厚新味 あごだしとんこつ>」
    商品・物販, 経済

    焼きあごの香ばしさと細カタ麺の共演 「うまかっちゃん<濃厚新味 あごだしとんこつ…

  • 北海道産のチーズを2種類使った秋冬限定フレーバー「かっぱえびせん 北海道Wチーズ味」
    商品・物販, 経済

    北海道産チーズのW使い!「かっぱえびせん 北海道Wチーズ味」がこの秋登場

  • トピックス

    1. 汗冷え対策は「ヒートテックの下にエアリズム」 ユニクロ公式発の裏ワザが再び話題

      汗冷え対策は「ヒートテックの下にエアリズム」 ユニクロ公式発の裏ワザが再び話題

      屋内と屋外で寒暖差が大きく、着る服に悩みがちなこの季節、SNS上で「エアリズムの上にヒートテックを着…
    2. 「ドラクエ7リメイク」にキーファ再会エピソード追加 衝撃展開にSNSでは「恨み節」も

      「ドラクエ7リメイク」にキーファ再会エピソード追加 衝撃展開にSNSでは「恨み節」も

      2025年11月12日午前7時に配信された「State of Play 日本」にて、「ドラゴンクエス…
    3. アカウント1の投稿

      【前編】それでも私は、書くことを選んだ―― Temu不審アカウントに挑んだ無名記者の記録

      ある日の調査作業の過程で、SNS「X」上において、急成長中の越境EC大手「Temu」のサポート担当を…

    編集部おすすめ

    1. 床掃除はおまかせ!「モップ機能つき生ルンバ」と化すビションフリーゼがかわいい

      床掃除はおまかせ!「モップ機能つき生ルンバ」と化すビションフリーゼがかわいい

      頭をぐりぐり動かしながら、床の上を滑っていく1匹のワンちゃん。飼い主さんが「モップ機能つき生ルンバ」と呼ぶビションフリーゼ・せとくんの動画が…
    2. 工場労働者2138人、1万時間の作業映像をオープンソース化 ロボット向け学習に活用

      工場労働者2138人、1万時間の手作業映像をオープンソース化 ロボット向け学習に活用

      工場向け自動化ロボットの研究開発を行うテクノロジー企業、Build AIが、工場労働者2138人による合計1万時間の作業映像をオープンソース…
    3. お菓子の家……ならぬ「つまみの家」誕生 お酒が進むオトナの創作料理

      お菓子の家……ならぬ「つまみの家」誕生 お酒が進むオトナの創作料理

      「解体しながら飲む」が合言葉。童話でお馴染みの「お菓子の家」を、そのまま大人向けに置き換えたような、その名も「つまみの家」がXに登場しました…
    4. 作業でたき火を燃やす新感覚クリッカー「たき火と猫」登場 癒やしと集中を両立するチル系ゲーム

      作業でたき火を燃やす新感覚クリッカー「たき火と猫」登場 癒やしと集中を両立するチル系ゲーム

      作業中に「猫」と「たき火」の癒やしを感じながら集中できる……そんな新感覚のゲーム「たき火と猫」のSteamストアページが公開されました。本作…
    5. アカウント1の投稿

      【後編】それでも私は、書くことを選んだ―― Temu不審アカウントに挑んだ無名記者の記録

      ※この記事は前編からの続きです。前編では、Temuを名乗る複数のアカウントを調査する中で見えてきた構図をお伝えしました。ここからは、Temu…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト