おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

医療従事者に対する偏見差別に警鐘 「こどもの預かり保育拒否」や「タクシー乗車拒否」

 内閣官房に設置された新型コロナウイルス感染症対策推進室のTwitterアカウント(@Kanboukansen)が、医療従事者に対する偏見や差別について4月17日、警鐘をならすツイートを投稿しました。

  •  投稿によると、医師や看護師などの医療従事者たちの「こどもの預かりを保育所などが拒んだり」「タクシーに乗せてもらえない」といった事例が生じているとのこと。

     続くツイートでは「医療従事者は、感染防御を十分にした上で、患者の検査や治療、感染症のまん延を防止する対策を取られています。正確な情報を入手し,冷静な行動に努めましょう」と、冷静な行動をとるよう注意を促しています。

     また、厚生労働省のTwitterアカウント(@MHLWitter)は、このツイートを紹介しつつ、「正確でない情報により、医療従事者に対応することは慎むべきですし、場合によっては人権侵害になることもあります」と強くコメントしています。

     筆者は現在看護師ライター(正看護師)として活動していますが、もちろんもともとは病院などで働いていました。このため、現場の苦労や辛さが今でも沢山耳にはいってきますし、どんな混乱が起きているのか容易に想像もつきます。

     医療従事者や人と接触する機会の多い業種の人たちは、常に恐怖と背中合わせで働いています。そんな人たちに対し、「感染が怖いから偏見の目で見る」事は、天に唾する行為と同じです。

     今、ギリギリ踏ん張って頑張ってくれている人たちのやる気を削って何になるのでしょう?協力をしないで何になるのでしょう?もしそんな事がつづけば、現場を去る医療従事者が増えることは簡単に想像できます。心や体を壊す人だっているでしょう。医者や看護師だからって病気にならないわけじゃありません。心だって傷つかないわけじゃないんです。

    ■ 「自分がやらなきゃ誰がやる!?」の精神でギリギリ踏ん張ってる

     医療の最前線で新型コロナウイルスに晒されながら働いている人は、「自分がやらなきゃ誰がやる!?」の精神で皆ギリギリのところを踏ん張りながら仕事しています。少しでも多くの人を助けたい、その一心からです。

     中には、自分が幼い子どもや家族にウイルスを移すリスクを考え、家族と離れて一人で病院の近くで寝泊まりしながら働く女性医療従事者もいます。

     目の前で患者さんが高熱を出して息苦しさに耐えながらもうろうとしているのを看続け、そして悪化した肺炎で命を落としそうな状況の中、「私の肺を移植できませんか?」と涙ながらに訴えてくる患者さんのご家族に、どう言葉を返したら分からなくなるような気持ちになる医療スタッフも実際にいます。しかし、敵は、ウイルスであり肺炎はウイルスに打ち勝たなければ治らないのです。

     陽性患者に対応したらその都度変えなくてはならないはずのマスク、特殊な手技の時などにしか使わないゴーグル、感染症対策用のガウン、顔に飛沫がかからないためのシールド、そして消毒類。まだまだこれらの物が不足し続けている中で、目の前で人工呼吸器を付けたり、体外人工心肺(ECMO)を回している患者さんをみ続けて、「もしかしたら数日後の自分かもしれない」という思いを抱きながらも、みな踏ん張っています。

     それに病院にくる患者さんは新型コロナウイルスの患者さんだけではありません。様々な科の、様々な病気やケガで、やむを得ず病院に行かなければならない人も大勢病院に助けを求めに来る……その患者さんたちにも対応しなければならないのです。

     そんななか、交通事故で運ばれた患者さんのCTを撮ったら、思いがけず新型コロナウイルス感染症特有の肺の影が見えた、という話も医療関係者から出ています。もう、誰が感染していてもおかしくない状況まで来ているのです。外で誰かと何かの接触があった人は残らず、です。

    ■ 医療を崩壊させないためには

     偏見は不安からやってくるものです。そして不安は、見えないところにあるから不安なんです。ちょっと体調を崩したからPCR検査をやって欲しい、気持ちは分かります。

     でも、自分の安心を手に入れるために行う検査ではないのです。止まらない咳と発熱、CT撮影での肺炎像、新型コロナウイルス感染症特有の症状が疑わしい時に確定診断として行うのがPCR検査なのです。しかも、この検査は100%確実である保証もありません。

     今、私たち一般市民が医療を崩壊させないためには、正しい知識で極力不安を取り除き、正しく行動する事。その正しい行動とは、不必要に他人との距離の近い接触を増やさない、密閉された環境にむやみに立ち入らない、複数人での集まりを行わないという行動。そして、自己防衛を正しく行う事。それは、マスクの表面は絶対に手で触らない、外すときはマスクの耳ゴムから外して直ちに消毒や専用の汚染用容器などに入れる、正しい手洗いを行う、消毒液の正しく適切な使用を行う、といった「一人一人が確実に行えばウイルスを防ぐことができる」行動です。

     そして、現在の状況は“だれもが新型コロナウイルスを持っているかもしれない”状況である事を、一歩でも外に出て買い物やどこかに出かける人たちは心得ておいて欲しい状況である事を、決してわすれてはなりません。

    <参考・引用>
    新型コロナウイルス感染症対策推進室(内閣官房)Twitter(@Kanboukansen)
    厚生労働省Twitter(@MHLWitter)
    ※画像は新型コロナウイルス感染症対策推進室(内閣官房)Twitterアカウントのスクリーンショットです。

    (梓川みいな/正看護師)

    あわせて読みたい関連記事
  • 華の会メール・バナー
    PR

    オトナ世代の恋愛マッチング

  • 華の会メール・バナー
    PR

    趣味でつながる30代からの恋愛マッチング \華の会メール/

  • 高校生が模擬手術室で機器操作に挑戦 J&Jイベントを取材、医療の未来探る
    企業・サービス, 経済

    高校生が模擬手術室で機器操作に挑戦 J&Jイベントを取材、医療の未来探る

  • ワクチン誤情報で命が失われた? 東京大学などが明らかにした「もしも」の世界(画像:PhotoAC)
    社会, 雑学

    ワクチン誤情報で命が失われた? 東京大学などが明らかにした「もしも」の世界

  • セルフケアに積極的な新社会人はワークライフバランス重視の“二刀流”!?第一三共ヘルスケアの調査で明らかに
    社会, 経済

    セルフケアに積極的な新社会人はワークライフバランス重視の“二刀流”!?第一三共ヘ…

  • 日本人の0.5%!珍しい「Rhマイナス」血液型のXユーザーが献血を続けるワケ
    インターネット, びっくり・驚き

    日本人の0.5%!珍しい「Rhマイナス」血液型のXユーザーが献血を続けるワケ

  • HPVワクチンのキャッチアップ接種、期間が延長されているの知ってた?
    社会, 経済

    HPVワクチンのキャッチアップ接種、期間が延長されているの知ってた?

  • 井上咲楽さん公式Xより
    エンタメ, 芸能人

    女優・井上咲楽、気づくと右目が緑色に!心配の声が上がるも「大丈夫なやつです」

  • Geroさん公式X(@Gero2525)より引用
    エンタメ, 芸能人

    Geroさん、尿路結石再発も「ビッグサンダーマウンテン療法」に異論

  • (写真左から)江崎グリコ株式会社 健康イノベーション事業本部 商品開発部の池田紀子さん、日本料理店「和敬」店主の竹村竜二さん、江崎グリコ株式会社 執行役員の木村幸生さん
    企業・サービス, 経済

    江崎グリコ、「おいしく減塩」に挑戦 減塩食品の革命を宣言

  • 「カロリAI」で食事の写真を読み込ませた画面。AIが分析して材料や量、カロリーを推定する
    インターネット, サービス・テクノロジー

    カロリー管理続かない人が作った「カロリAI」が話題に 管理をスマート化して“自分…

  • ケガしたときは傷口を水道水で洗う(画像:イラストAC)
    インターネット, 社会・物議

    傷口は海水ではなく水道水で洗って!医師が注意喚起

  • 梓川みいな看護師(正看護師有資格者)

    記事一覧

    一般内科、呼吸器科、整形外科、老年科、発達障害などを得意とする。医療・介護福祉等に高反応。雑多なネタも紹介していきます。
    娘二人(ともに発達障害あり)とネコ二匹の母。シングル。

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 災害ボランティアに行く前にやっておくべき大切なこと
    社会, 雑学

    災害ボランティアに行く前にやっておくべき大切なこと

  • お餅での事故を防ぐ ここがポイント!(出典:政府広報オンライン)
    社会, 雑学

    お餅での事故を防ぐ 3つのサインと3つのポイント!

  • 【ナースなコラム】MRIに禁忌なアレコレ え?増毛パウダーも!?
    ライフ, 雑学

    【ナースなコラム】MRIに禁忌なアレコレ え?増毛パウダーも!?

  • みかんは体に良いってほんと? 効能は?適量は?
    ライフ, 雑学

    みかんは体に良いってほんと? 効能は?適量は?

  • 【看護師コラム】実はこれやっちゃダメなんです!処方薬の使いまわし
    ライフ, 雑学

    【看護師コラム】実はこれやっちゃダメなんです!処方薬の使いまわし

  • エクストリーム! 全自動マーブルチョコの色分けが装置爆誕
    インターネット, おもしろ

    エクストリーム! 全自動マーブルチョコの色分け装置が爆誕

  • トピックス

    1. 松屋「担々麺ハンバーグ」を実食 記憶が混乱するレベルに美味しい……!

      松屋「担々麺ハンバーグ」を実食 記憶が混乱するレベルに美味しい……!

      松屋は8月19日から一部店舗限定で「担々麺ハンバーグ」を販売中です。鉄板にのったハンバーグに担々麺が…
    2. 7億円の当せん番号決定の瞬間を目撃!「サマージャンボ」抽せん会参加レポ

      7億円の当せん番号が決まる瞬間を現地取材!サマージャンボ抽せん会レポート

      1等・前後賞合わせて7億円が当たる「サマージャンボ宝くじ」と、1等・前後賞合わせて5000万円が当た…
    3. 加藤茶、伝説の“カトケンゲーム”に挑戦 新番組「第三学区」放送開始

      加藤茶、伝説の“カトケンゲーム”に挑戦 新番組「第三学区」放送開始

      お笑いタレントの加藤茶さんが、まさかの“自分ゲー”に挑む。テレビ神奈川の新番組「第三学区」(だいさん…

    編集部おすすめ

    1. たいちくんX投稿より

      ゆりにゃさん元パートナー、Xで未練吐露→ネットの反応は冷ややか

      インフルエンサー・ゆりにゃさんの、公私にわたる元パートナーである「たいちくん」こと齊藤太一氏が、8月17日に自身のX(旧Twitter)を更…
    2. 匿名質問文化を支えた「Peing-質問箱-」終了 2017年の誕生から8年

      匿名質問文化を支えた「Peing-質問箱-」終了 2017年の誕生から8年

      匿名で質問やメッセージを送れるサービス「Peing-質問箱-」が、2025年8月29日をもって終了することが発表された。運営は8月15日付で…
    3. マクドナルドのポケカ騒動 期間中の店舗を訪れた記者が感じた“異様な雰囲気”

      マクドナルドのポケカ騒動 期間中の店舗で感じた“異様な雰囲気”

      マクドナルドは8月11日、ハッピーセット「ポケモン」のポケモンカードキャンペーンを巡る混乱について公式サイトで謝罪しました。期間限定カードを…
    4. 「珍しい苗字」より盛り上がる? 地域特有の苗字をまとめた地図が話題

      「珍しい苗字」より盛り上がる? 地域特有の苗字をまとめた地図が話題

      大学進学や就職で交友関係が広がると、今までの人生で見たことがない苗字を持つ人と知り合いになることがよくあります。見慣れない苗字に遭遇したとき…
    5. 「オラと博士の夏休み」初のスマホ版がでたゾ!でも日本は対象外……

      「オラと博士の夏休み」初のスマホ版がでたゾ!でも日本は対象外……

      累計販売90万本を超える人気作「クレヨンしんちゃん『オラと博士の夏休み』~おわらない七日間の旅~」が、初めてスマートフォンで遊べるようになり…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト