ボーイングは2020年6月17日(現地時間)、F/A-18E/Fスーパーホーネットの最新モデル「ブロックIII」の試験機2機をアメリカ海軍に納入したと発表しました。納入されたのは単座のE型と、複座のF型が1機ずつ。見かけは大きく変化していませんが、コクピットをはじめ内部の機器が刷新されています。

 現在、アメリカ海軍で運用されているF/A-18E/Fスーパーホーネットは、レーダー能力などが強化された「ブロックII」と呼ばれるモデルが主力となっています。スーパーホーネット・ブロックIIは、2020年5月に納入されたE型の322号機(ボーイング社内呼称:E322)が最終となる見込みです。

 ブロックIIに代わり、2021年から納入される予定の新世代モデル「ブロックIII」は、ステルス戦闘機であるF-35Cと同時に運用されることを前提に、大幅な改良を加えたもの。外見上は、胴体上部に航続距離延長のため増設された燃料タンク(コンフォーマルタンク)により、少しボリュームアップした感じです。

 外見以上に変わったのは中身です。機体構造が強化され、設計寿命が6000飛行時間から1万飛行時間に延びるほか、新しいレーダーや赤外線センサー(IRST)により、目標の探知範囲も拡大されます。

 また、F-35Cなどと協調して戦闘を行なうため、新しいデータリンクシステムを搭載。より多くの情報を短時間でやりとりすることが可能となります。

 コクピット内部も大幅に刷新され、アドバンスド・コクピット・システム(ACS)というものが採用されました。目につくのが、10インチ×19インチ(254mm×約482mm)という大画面のタッチパネル式マルチディスプレイ。これまで個々に独立していた3つのディスプレイが1つにまとめられ、レーダーや航法用地図など、必要な情報を適切な大きさで選択して見ることが可能なほか、ソフトウェアの書き換えで容易にアップグレードすることができます。

 今回、アメリカ海軍に引き渡された単座(1人乗り)のE型、複座(2人乗り)のF型、それぞれ1機ずつ計2機のブロックIIIは、海軍における様々な試験に供されるもの。試験の結果はメーカーであるボーイングにフィードバックされ、より完成度を高める改良が施されます。

 ボーイングのF/A-18およびEA-18Gプログラムを統括する、スティーブ・ウェイド副社長は「海軍に納入された2機は、ブロックIIIにおける全てのミッションシステムが空母運用に適しているか、そして全体的な統合試験に供されます。この試験機により、パイロットらは実戦仕様の機体を受領する前に、新しい次世代システムに習熟する十分な時間が確保されることになります」とコメントしています。

 アメリカ海軍は2019年3月、78機のブロックIII新造機を3年かけて調達する契約をボーイングと交わしています。合わせて2019年5月には既存のブロックIIを23機、ブロックIIIに改修する発注も行なっており、ブロックIIIは新造機と既存改修機の2種類がアメリカ海軍で運用されることになります。

<出典・引用>
ボーイング ニュースリリース
Image:Boeing

(咲村珠樹)