おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

国税庁から「最終通知」のヤバ目なメール……どう対応すべき?

 近ごろではSNSを舞台にすることが多い「ネット詐欺」ですが、意外にも最も古典的手段である「詐欺メール」もまだ絶滅していません。

 「詐欺メール」や「迷惑メール」と呼ばれる手段は、インターネット黎明期から存在していますが、なくならないということは「騙される人がいる」ということ。今回は読者からの調査リクエストがあった「国税庁を騙る詐欺メール」について紹介していきます。

  • ■ 国税庁を騙る不審なメール

     編集部では、ネット詐欺に関する調査をこれまで数多く実施してきました。「SNSにいる怪しいアカウント」から「偽広告を入り口にした副業詐欺」「怪しいアルバイト」など。すると近ごろでは「これを調べて欲しい」という情報が寄せられることも増えており、今回寄せられたのが「国税庁を騙る不審なメール」。

     「【最終通知】滞納した税金がございます!【税務署】」というタイトルのメールです。

    国税庁を名のる不審なメールが届いた

     最近は、電子化が進みついに「国税庁」もメールで送信してくるのか……と勘違いさせる内容ですが、もちろん「ウソ」。メール送信者の「罠」であります。

     確かに国税電子申告・納税システム(e-Tax)などは存在していますが、それ以前にまずメールの内容からしてカナリ不自然な箇所が多い。

     内容は以下のとおりです。なお、★の箇所は編集部にて伏せてあります。

    国 税 庁より重要なお知らせです、あなたが納税すべき国税等につきましては、いまだ納められていません。

    ▼以下のリンクをアクセスし、記載されてる方法で直ちに全額を。
    https://★★★★

    また既に金融機関等で納税された場合も必ずご連絡ください。期限までに納税の確認ができない場合、(国税通則法37条) により財産を差
    なお、指定期限にかかわらず、緊急を要する場合等には差押えを執行することがあります。

    〇指定期限 2023年12月13日
    この期限までに納付の確認ができない場合には滞納処分が執行されます

    ——————————–
    (連絡事項)
    納税確認番号:★★★★
    滞納金合計:50000円
    納付期限: 2023年12月13日
    最終期限: 2023年12月13日 (支払期日の延長不可)
    ——————————–
    ※ 本メールは、「国税電子申告・納税システム(e-Tax)」にメールアドレスを登録いただいた方へ配信しております。
    なお、本メールアドレスは送信専用のため、返信を受け付けておりません。ご了承ください。
    ——————————–
    発行元:国 税 庁
    〒100-8978 東京都千代田区霞が関3-1-1 (法人番号★★★★)
    Copyright (C) 2023 NATIONAL TAX AGENCY All Rights Reserved.

    (★の箇所は編集部で伏せました)

     送信者は「国税庁」となっており、記載されたURLにアクセスして、期日までに入金するよう促しています。ちなみに記載されている住所は本物の国税庁のものです。

     突然「【最終通知】滞納した税金がございます!【税務署】」というメールが届くと、一瞬慌ててしまう人がいるのかもしれません。ただし冷静になれば、不自然な内容ばかりです。

     そこで参考までに、不自然な箇所をまとめてみましたので、今後このようなメールを受信した際に「おかしいな」「怪しいな」と感じるきっかけに繋がればと思います。

    ■ メールでおかしい点

    1、メールの送信アドレスが違う組織

     まずおかしいのが、メールの送信アドレスが別の組織のものになっています。
    e-Tax(国税電子申告・納税システム)の場合には「★★@e-tax.nta.go.jp」と、「.go.jp」と「政府ドメイン」が正規。日本の政府機関など特定の組織しか取得できないドメインです。

     しかし今回は全く別の組織(なぜか大手クラウドソーシングサービス)から送信されていました。変なメールが届いたな、というときにはまずは送信先アドレスを確認してみましょう。

    2、「e-Tax」を利用していないのに送られてきている

     次の不審点は、メールを受信した人物が「e-Tax」を利用していないこと。つまりメールアドレスの登録すらしていないのです。にもかかわらず、送られてきているのは、明らかに不自然。

     政府に限らず、企業・組織が配信する「請求」に関するメールは、「100%登録者」にしか送りません。不審なメールが届いたら、そのサービスに登録した記憶や記録があるかをまず確認しましょう。近ごろでは、銀行系、クレジットカード系、ETCカードなどを騙る悪質メールも存在しています。

     なお、誰かがなりすましてサービス登録した可能性も0ではありません。不安な場合は、メールに書かれているアドレスから連絡するのではなく、ネットなどで問い合わせ先を調べて、自分で調べた結果の問い合わせ先に連絡するようにしてください。

    3、ところどころ日本語がおかしい

     メールの文章をよく読むとわかるのですが、「以下のリンクをアクセスし、記載されてる方法で直ちに全額を。」など、ところどころ日本語がおかしい。本件に限らず、詐欺メール全般に言えることですが、日本語があまり適切ではないケースが多いようです。

     また、国税庁の表記も「U.S.A」よろしく「国 税 庁」となぜか空白がはいっている点も不自然。

     冷静に文章を読むだけで見抜けるポイントです。突然の請求メールがとどいたら、まずは落ち着いてしっかり本文を読むようにしましょう。

    不審なメール

    ■ 問題のサイトにアクセスしてみた

     さて今回は調査のため、メールに記載されている問題のサイトにもアクセスをしてみました。

     結果、繋がりませんでした。

     Whoisなどドメインの所有者を調べたのですが、情報が表示されず、サーバのステータスコードを確認したところ「無効なURLです」と返ってきました。

     そもそも存在しないアドレスのようです。

     となると、アクセスしても理論上何も起きないのですが、念のため一切アクセスしないように心がけたほうが良いかと思います。

    国税庁を語る不審なメールからアクセスしたサイト

    ■ 無視するとどうなるの?

     最後に「無視するとどうなるの?」と心配になる方も多いかと思います。

     近頃同様のメールが多くの人に送られているようで、SNSには「税金滞納メールが国税庁からきたんだけど詐欺?ガチ?」「国税庁からメール来ちゃった」「焦った」など、不安の声が投稿されています。

     結論を言いますと、今回メールが届いた主には「何もおきていません」。つまり無視してOK。

     そもそも、ホンモノの「国税庁」は、メール・ショートメッセージで差し押さえ案内を送ることはありません。

     「国税庁」の公式サイトでは、次のような注意喚起が行われています。

    ・リーフレット「国税庁をかたった不審なショートメッセージやメールにご注意ください!」をご確認ください。

    ・国税庁(国税局、税務署を含みます)では、ショートメッセージにURLを記載した案内を送信することはありません。

    ・国税の納付を求める旨や、差押えに関するショートメッセージやメールを送信することはありません。

    ・不審なショートメッセージやメールを受信した場合や、国税庁ホームページになりすましたサイトを発見した場合は、アクセスすると被害を受けるおそれがありますので、アクセスや支払いなどしないようご注意ください。

    (引用:国税庁公式サイトより)

     今後も「詐欺師」はありとあらゆる手を使って、ターゲットの心を揺さぶってきます。何か送られてきて不安になったら、まずは一呼吸。落ち着くことが最も重要。それでも不安になった場合には「自分で調べる」こと。たったこれだけで避けられる被害はあります。本当に送金してしまわないよう、くれぐれも注意しましょう。

    ※初出時、国税庁は、メール・ショートメッセージで「URL」を記載した案内を送ることはない、と記しておりましたが「メール」の場合は送ることがありました。この点、訂正しお詫びいたします。(参考:「税務署からのお知らせ」等のメールが届いた方へ

    <参考・引用>
    不審なメールや電話にご注意ください(国税庁)

    (たまちゃん)

    あわせて読みたい関連記事
  • “警察からの電話”実は偽装 提供番号の悪用で通信会社が謝罪
    社会, 経済

    “警察からの電話”実は偽装 提供番号の悪用で通信会社が謝罪

  • 菊水産業「お菊社長」なりすましに接触 ウザ絡みして目的を探ってみた
    インターネット, おもしろ

    菊水産業「お菊社長」なりすましに接触 ウザ絡みして目的を探ってみた

  • 警告ポップアップで強引に広告誘導 悪質業者が仕掛ける正規サービスを悪用した罠
    インターネット, サービス・テクノロジー

    警告ポップアップで強引に広告誘導 悪質業者が仕掛ける正規サービスを悪用した罠

  • 怪しい電話を意図せず撃退してしまう?黒電話ユーザーの詐欺対応が話題
    インターネット, おもしろ

    怪しい電話を意図せず撃退してしまう?黒電話ユーザーの詐欺対応が話題

  • 「ふくぎょうのおしごと!」既視感満載の怪しい広告が勧めてくる“副業”とは?
    インターネット, 社会・物議

    「ふくぎょうのおしごと!」既視感満載の怪しい広告が勧めてくる“副業”とは?

  • 偽ファッション広告
    インターネット, 社会・物議

    偽ファッション広告がGoogle広告に大量出現 サポート詐欺被害に注意

  • ちょ、まてよ。それ何のドラマだよ!「勇者」出演の偽キムタクとLINEで対峙した一部始終
    インターネット, 社会・物議

    ちょ、まてよ。それ何のドラマだよ!「勇者」出演の偽キムタクとLINEで対峙した一…

  • しょこたんを救いたい、ザビエル、暗黒面に落ちた波平……必死過ぎる迷惑メールの珍件名まとめてみた第2弾!
    インターネット, おもしろ

    しょこたんを救いたい、ザビエル、暗黒面に落ちた波平……必死過ぎる迷惑メールの珍件…

  • 偽公式からの当選通知を追跡!行き着いたのは「能登半島応援」を騙る悪質詐欺
    インターネット, 社会・物議

    偽公式からの当選通知を追跡!行き着いたのは「能登半島応援」を騙る悪質詐欺

  • AIで生成されたフェイク動画
    インターネット, 社会・物議

    一瞬本物かと……有名人の顔と声までAIで再現!進化する投資詐欺の実態とは

  • たまちゃんWriter

    記事一覧

    元秒刊SUNDAYライター。炎上ネタからグルメネタまで得意とするも、現編集部(おたくま)では炎上ネタは封印。おだやかに書いております。静岡県浜松市在住です。

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • Gmailを受診している画面
    インターネット, サービス・テクノロジー

    Gmailの仕様変更でPOP受信が終了 自分は対象?POP利用チェック

  • 警告ポップアップで強引に広告誘導 悪質業者が仕掛ける正規サービスを悪用した罠
    インターネット, サービス・テクノロジー

    警告ポップアップで強引に広告誘導 悪質業者が仕掛ける正規サービスを悪用した罠

  • マクドナルド非公認レシピ「改造てりたま」
    グルメ, 作ってみた

    マクドナルド非公認レシピ!夏のてりたま欲を満たす「改造てりたま」を作ってみた

  • LINEの画面って拡大できないの?タイトル画像
    インターネット, サービス・テクノロジー

    ピンチ操作が効かないLINE画面も拡大!iPhoneの隠れ便利機能「ズーム」活用…

  • AIで生成されたフェイク動画
    インターネット, 社会・物議

    一瞬本物かと……有名人の顔と声までAIで再現!進化する投資詐欺の実態とは

  • “ネット詐欺のベストアルバム”に遭遇!「○○プレゼント」詐欺体験レポート
    インターネット, 社会・物議

    “ネット詐欺のベストアルバム”に遭遇!「○○プレゼント」詐欺体験レポート

  • トピックス

    1. テキストエディター「EmEditor」でセキュリティインシデント 公式サイトのダウンロード導線に不正改変か

      テキストエディター「EmEditor」でセキュリティインシデント 公式サイトのダウンロード導線に不正改変か

      テキストエディター「EmEditor」を提供するEmurasoftは12月23日、公式サイトのダウン…
    2. 今、令和だよな?「魔法のプリンセス ミンキーモモ」31年ぶりの新作OVA制作決定

      今、令和だよな?「魔法のプリンセス ミンキーモモ」31年ぶりの新作OVA制作決定

      1980年代と90年代、多くの少女たちを夢中にさせた伝説の魔法少女が帰ってきます。「魔法のプリンセス…
    3. 「LINEグループ作成」を要求する詐欺メールに注意 海外のサイバー監視が日本向け攻撃を警告

      「LINEグループ作成」を要求する詐欺メールに注意 海外のサイバー監視が日本向け攻撃を警告

      海外のサイバー脅威情報を発信する「Hackmanac」が12月19日、日本国内の複数の組織を標的とし…

    編集部おすすめ

    1. シートタイプのWebMoney

      WebMoney、事業をビットキャッシュへ承継 一部サービスは終了へ

      オンラインゲームの課金手段として知られる「WebMoney」が事業の節目を迎えます。auペイメントは2026年3月31日付でWebMoney…
    2. 「完全在宅」「未経験OK」のはずが…求人をきっかけに高額契約 消費者庁が注意喚起

      「完全在宅」「未経験OK」のはずが…求人をきっかけに高額契約 消費者庁が注意喚起

      育児などを理由に在宅で働きたいと求人サイトを利用した人が、結果的に高額な契約を結ばされるケースが相次いでいます。「完全在宅」「未経験OK」と…
    3. Netflix映画『10DANCE』

      Netflix「10DANCE」、海外SNSで広がる“困惑と魅了” 「情緒が崩壊した」人も

      Netflixで12月18日に配信が始まった映画「10DANCE」が、海外SNSで大きな反響を呼んでいます。BL作品であることに戸惑いながら…
    4. 「漆黒の指輪」は実在したものの……サン宝石、カプセルトイ「中二病が疼くリング」の“誇大表現”を謝罪

      「漆黒の指輪」は実在したものの……サン宝石、カプセルトイ「中二病が疼くリング」の“誇大表現”を謝罪

      アクセサリーや雑貨の販売で知られる「サン宝石」は12月16日、同社が展開するカプセルトイ「中二病が疼くリング」について、公式サイトおよびSN…
    5. 雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく

      雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく

      国土交通省と気象庁は12月16日、雨や洪水などの危険を伝える「防災気象情報」について、2026年(令和8年)の大雨シーズンから新たな運用を始…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト