「特撮映像館」65回目は『帝都大戦』です。前作『帝都物語』よりも単純にわかりやすいサイキックアクションを目指して制作された本作ですが、見どころは主人公・雪子を演じた南果歩の演技といえるでしょう。
昭和20年、辰宮雪子は自らの能力を畏れ看護婦としてひっそり暮らしていた。が、東京大空襲をキッカケに多くの人々の血が流れた帝都では怨霊が目覚め、ふたたび加藤保憲が目覚めるのだった。
また戦況の悪化を打開すべく、政府は密かに呪術による連合国首脳の暗殺を計画し、実験を勧めていた--。
前作『帝都物語』がサイキックSFホラーであると同時に、明治・大正・昭和の帝都をパノラマ的に見せてくれたのとは対照的に、本作では嶋田久作演じる加藤と、サイキック能力を持つ中村を演じる加藤雅也との超能力対決が軸となっている。
監督は前作でもプロデューサーだった一瀬で、今回は監督とプロデューサーを兼任。また総監督、アクション監督に香港映画から人材を得て、ワイヤーアクションを多用した迫力ある画面となっている。その他、特殊メイクもハリウッドからスクリーミング・マッドジョージを呼び、グロテクスなクリーチャーなどで観衆を圧倒した。
とはいえ評判はあまり芳しくなく、ネットのレビューでも7~8割りは否定的な意見。
特に原作のファンからは酷評で、荒俣宏の本作の映像化の難しさを感じる。
今回、改めて鑑賞したところ、南果歩の演技力のすばらしさに目を見張った。
少ないセリフながら、表情や体の演技で十二分に主人公雪子を演じていて、南だからこそできたのではないかと思えるほどの出来ばえ。
しかしながら演技がすばらしすぎたのか当の南が浮いて見えてしまうという本末転倒な印象も否めないのが残念だ。
大戦末期の東京の風景も前作ほどではないにしろ見事に再現しているし、映画の中での時間経過が前作よりも短いこともあって分かりやすい内容だとは思うが、続編にありがちな「とってつけた」感がないわけではない。
だいたい東京大空襲で焼け野原になってしまっている東京を、改めて将門の霊を呼び起こして破壊する必要が感じられなかったりもするのだ。
中村が超能力を発揮するときに一瞬現れたりする幼いころの映像を挿入する手法は、その後『ローレライ』で樋口監督も用いていたものを思い出す。
超能力を持った子供を実験体として扱うというところも共通しているが、これは大友克洋の『アキラ』あたりからの流用になるのだろうか。
余談だが、作品中、外国人俳優を使ってヒトラーを登場させているが、むしろ日下武史に演じさせた方が似合っていたような気がしてならない。
監督/一瀬隆重
キャスト/加藤雅也、南 果歩、嶋田久作、丹波哲郎、日下武史、ほか。
1989年/107分/日本
(文:猫目ユウ)