「特撮映像館」、今回は「ガメラ生誕40周年作品」として制作・公開された『小さき勇者たち~ガメラ~』を取り上げます。昭和・平成のガメラシリーズと根底でつながりながら、まったく新しい視点が描かれたガメラをお楽しみください。
2006年のゴールデンウィークに公開された、現時点で最後の「ガメラ」作品。金子監督の「平成ガメラシリーズ」の完結から7年ぶりの新作だった。また「ガメラ生誕40周年作品」でもある。
本作の感想をザックリと言えば、昭和ガメラと平成ガメラを足して二で割ったような、といえるだろうか。というのもジュブナイルとして仕上げられていることで昭和ガメラシリーズの主人公の少年目線でのストーリー展開であり、テレビのニュース報道といったリアリティーでは平成ガメラ的な現代感覚も見られるからだ。乱暴な言い方をすればいいとこ取りとも言えるかもしれない。
ガメラの造型は昭和ガメラのそれよりも、平成ガメラ第1作の印象に近く、さらに丸みを帯びた成長過程の子供っぽさが印象的だ。ゴールデンウィークの家族向け作品でもあり、対象年齢も小学生当たりを狙ってのことだと思うが、「怪獣」としては可愛らしすぎるところは個人的には好きではない。
敵怪獣として登場するジーダスはトカゲ型で、ガメラに対してリアルな造型となっている。動きなどからハリウッド版ゴジラの印象も受けるのだが、見方によっては「ガメラ対ゴジラ」が観られたとも言える。途中襟巻きのようなヒレ(?)も出て、ゴジラ=ジラースというイメージまで浮かんでしまった。
本作では1973年に、ギャオス4体と闘ったガメラが、自爆してギャオスを倒す。そして2006年、主人公の少年が卵を発見し、新たなガメラが生まれる。生まれたガメラは手のひらに乗る大きさで、少年と亀の成長物語が前半に描かれるだが、このあたりではシーンによって円谷プロの『ウルトラQ/鳥を見た』のイメージを彷彿とさせる。
また今回のガメラは完全に陸ガメとして設定されていて、海に帰ったり海中で傷を癒したりというシーンは観られない。その意味では昭和、平成を通じてまったく別の視点から描かれた作品ということができるのかもしれない。
とはいえ平成3部作を踏まえた上で、という印象が冒頭のギャオスとの戦いに観られるし、年代設定は昭和ガメラを意識しているとも言える。
実は本作を劇場で鑑賞した際、不覚にも涙があふれてしまった。平成ガメラ3部作も泣ける映画だったのだが、劇場ではなくDVDで鑑賞してからだったので、劇場で泣けた映画として印象に残っている。そのときは連休も終わって観客もまばらであり、あまり恥ずかしい思いもしなかったのだが、同じように大人の鑑賞者(特に男性)が周囲でも泣いていたのをおぼえている。
本作はガメラ作品としては「異色」と言ってしまっていいと思うのだが、根底に流れるテーマは昭和、平成を通じて共通したものがある。
次にどのような形でガメラが姿を現してくれるのかわからないが、いずれまたガメラに会いたいものである。
監督/田崎竜太 特撮演出/金子 功
キャスト/富岡 涼、夏帆、津田寛治、石川眞吾、成田翔吾、寺島 進、石丸健二郎、田口トモロヲ、奥貫 薫、ほか。
2006年/96分/日本
(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/)