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大手メディアが求める「オタク像」には違和感を覚える

update:

オタク(おたく)という言葉が誕生してから30年程がたとうとしている。

秋葉原

オタクという言葉はそもそも、アニメや漫画を愛好する人を侮蔑する言葉として誕生したが、たくましきかなオタク達はそれを自嘲的に受け入れ、今では発端となった侮蔑語から、一般的な言葉にまでその存在意義を昇華させつつある。


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    しかし悲しいことに、世間の認識はまだ30年前とさほど変わらない部分もあり、今だ「オタク=変質者、大人なのにアニメや漫画が好きな異常者、ダサい、コミュニケーション障害者、ロリコン」など、現代に生きる実際のオタク像とかけ離れたイメージがつきまとっている。

    本媒体は媒体名が「おたくま経済新聞」と名乗っているだけあり、以前からちょこちょこテレビ局含む大手メディアから「○○オタクを紹介して欲しい」という相談を受けることがある。
    そうした度に、知り合いやライター仲間をあたって該当者を紹介するのだが、彼らが想像する「オタク像」が、どうも現代の一般的な「オタク像」と異なるようで、実際の出演にまで至らないケースが多い。

    紹介した人から、後にメディアの反応を聞くと、どうも彼らが求めるのは以下のような人物像らしい
     
    ――大手メディアが求めるオタク像

    ▼男性の場合
    ○体格:
    太っている人が最も好ましい。もしくは極端に細身。

    ○服装:
    ・ズボン:ジーンズもしくはチノパン。スーツのズボンも可。できれば裾を折り曲げているのが好ましい。
    ・シャツ:Tシャツもしくは普通のボタン付きシャツ。そしてシャツインは基本。キャラクターがプリントされたTシャツならば尚可。
    ・ベルト:GIベルト(別名:がちゃベルト)が基本。
    ・頭:できればバンダナをしているのが好ましい。
    ・荷物:リュックが基本。できればポスターなどを挿している絵が好ましい。
    ・メガネ:分厚くて、フレームは地味目のもの。そして使い古した感があるものがより好ましい。
    ・流行:できれば流行遅れ。全体的にダサいものが好ましい。

    ○日常の行動:
    ・フィギュア店やアニメ専門店などに毎週のように出入りしている。
    ・アニメは全てチェックしている。できればプリキュアなど幼女向け、もしくは萌えキャラが多数登場するアニメが好ましい。
    ・趣味のためにじり貧の生活を送っている。

    ○食事:
    ・高級料理や凝った手料理はNG。
    ・ファストフードや牛丼チェーン店、激安ショップで購入した格安おかず、手料理でもパスタを湯でた程度などじり貧を匂わすものは可。

    ○性的嗜好:
    ロリコンか極度なアイドル好き。

    ○言葉:
    ・とりあえず「~萌え」をよく使う
    ・他人の言葉を引用するとき「~曰く」という
    ・一人称は「拙者」
    ・他人を呼ぶときは「貴君」「貴殿」
    ・語尾に「~でござる」をつける

    ○特技:
    ・オタ芸が打てる
    ・アニソンは完全網羅

    ○性格:
    ・屁理屈
    ・一人語りが多い
    ・人の目を見て話せない
    ・“一般人”との協調性がない

    ○自宅:
    フィギュアや、抱き枕、萌えグッズがところ狭しと置いてある。

    ○恋人:
    ・いない方が好ましい。
    ・できれば「俺の嫁」としてアニメキャラなどを紹介してくれることを期待している。

     
    ▼女性の場合

    ○体格:
    特にこだわりなし。

    ○服装:
    ・全体:基本あまりこだわりはないがロリータなら尚可。
    ・バッグ:キャリーバッグが基本。ハンドバッグ類については、キャラものやロリータ風など目立つものが好ましい。
    ・髪型:前髪パッツンが基本。そして結び方はツインテール、三つ編みなどロリータをイメージするものが好ましい。

    ○日常の行動:
    ・池袋の乙女ロードに毎週通ってる
    ・声優のイベントに通ったりやグッズを集めている
    ・ボーイズラブに熱中している
    ・同人誌即売会には頻繁に通っている。ボーイズラブ作家なら尚可
    ・コスプレも趣味

    ○食事:
    特にこだわりはないが豪華なものはあまり望ましくない。

    ○性的嗜好:
    「ボーイズラブのカップリングを妄想するだけで満足です。」という処女性が最も好まれる。

    ○言葉:
    特にこだわりなし。

    ○特技:
    ・コスプレの衣装製作
    ・同人誌執筆

    ○性格:
    ・内向的
    ・男性が苦手

    ○自宅:
    ボーイズラブを連想するポスターやグッズがところ狭しとならんでいる。本棚に同人誌がずらっと並ぶのは基本。キティちゃんなど女性を連想するグッズなどがあるのは可。

    ○恋人:
    特にこだわりはないが、ロリータ風の人ならば「男性の場合」で紹介したオタク像の男性とのカップリングが最も望ましい。

     

    長々と書いてしまったが、まとめるとどうもこうした人物が求められるよう。

    私はこちら側(オタク側)の人間なので、勿論最近のオタク業界の状況もよく理解している。
    その上で言わせてもらうと(趣味の部分は否定できないが)、「こんなオタクは絶滅危惧」。もしくはいても「テレビ用」。そう断言させていただきたい。

    現代に生きるオタクはそのほとんどが一般人となんら変わりのない生活を送っており、恋人がいる人も少なくない。見た目もカッコイイ・可愛い人が多いし、性格についても一般人とほとんどかわりない。貧乏度合いについては人によりけりだが、それも一般にいる「貧乏さん」とほぼ変わらないレベルだと思う。

    それなのに、何故こうまでも「オタク」に対し長らくネガティブなイメージばかりがつきまとっているのか。
    原因は明らかで、大手メディアが「オタク」という存在を紹介する際、わざわざ「大手メディアが求めるオタク像」を探してまで、さもそれが「オタク全体」として報道しているからである。

    日本の文化の一つ「オタク=ポップカルチャー」を国が世界に大々的に発信しつつある昨今。
    時流はポジティブにも関わらず、足を引っ張るよう大手メディアが報じる「オタク像」には、どうしても違和感を覚える。

    もしかすると、現代に生きる「一般人風のオタク」を報道したのでは、「数字」が取れないということもあるのかもしれない。だからといって、実際とは違う局所的な「オタク」ばかりが世間に広く報道されるのはいかがなものなのだろうか?と考える。

    (文:宮崎美和子)

    訂正:冒頭で触れていたオタクの起源について40年ほどと表記しておりましたが、30年の誤りでした。訂正してお詫びいたします。(40⇒30訂正2箇所)

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