おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

アメリカ海兵隊が3Dプリンタで兵舎を建設

update:

 3Dプリンタが様々なところに用いられるようになりました。部品を1個単位で作れたりと、もの作りに革命が起きていますが、アメリカ海兵隊では3Dプリンタを使って500平方フィートの面積を持つ兵舎を作ってしまいました。

  •  これは2018年8月、イリノイ州にあるアメリカ陸軍の技術開発試験センターで行われた実証試験でのこと。海兵隊システムコマンド(MCSC)の建設チームが第1海兵遠征軍(I MEF)と共同で、コンクリートを使った世界最大の3Dプリンタを使って、兵舎がどれくらいの時間で作れるかという試験を行いました。

     実際の試験では、海兵隊だけでなく、陸軍と海軍の工兵も協力して建設が行われました。鉄骨の足場のようなフレームと、コンクリートを供給するパイプラインなどで構成された巨大な3Dプリンタを試験場所に据え付け、コンピュータのデータに基づいて兵舎の建設を開始。ニュルニュルとホイップクリームをケーキに絞り出すように、コンクリートが次々と重ねられて建物の壁を作っていきます。

     この間、人間は仕上がりをチェックしながら、コンクリートを作って3Dプリンタに供給する作業を行います。丸一日過ぎても建設作業……というかコンクリートの塗り重ね作業は続き、工事が終了したのは40時間後のことでした。

     さすがに「一夜城」という訳にはいきませんでしたが、2日たらずでコンクリート造りの兵舎が完成したことになります。見てくれはちょっと不恰好ですが……建物としての強度は十分保証されているといいます。初めて作ったにしては上々でしょう。3Dプリンタでコンクリートの建物を作れることを証明した訳ですから。

     今回、建設に40時間かかった主な理由は、人間がセメントをこねてコンクリートを作る作業をぶっ通しで行ったことによるものだそうで、これを機械化できれば24時間以内に建設することも不可能ではない、と今回の実証試験の責任者、フリーデル大尉は言います。

     現在、合板を用いたプレハブ兵舎の建設作業は、10人がかりで平均5日かかるといいます。つまり、兵舎の建築に10名の兵を5日間も持っていかれることになり、その間戦闘力が低下している訳です。戦闘に関係ない部分に人員を割くことがなくなれば、その分だけ高い戦闘力が維持できます。また、最短1日で兵舎ができれば、従来建設作業中に野営していた4日分も節約され、その分休息を十分に取ることもできるという訳です。

     また、無人で速やかにコンクリートによる建物ができるということは、自然災害などでの人道支援任務にも役立てられます。この3Dプリンタとセメントを持参し、そして骨材となる砂利と水を現地調達すれば、少ない時間と人員で仮設住宅を建設することが可能です。

     これからも海兵隊システムコマンドでは、もっと早く、そしてしっかりした形のコンクリート建物を3Dプリンタで作れるよう、技術開発を進める予定です。今は不恰好な建物ですが、様々な希望を背負っているといえるでしょう。

    Image:USMC

    (咲村珠樹)

    あわせて読みたい関連記事
  • メキシコ料理店「マイクス」で人気のタコサラダに入ったモントレーファヒータ
    宇宙・航空

    アメリカ軍人に人気のメキシコ料理店「マイクス」に行ってきた

  • 衛星通信アンテナを展開するアメリカ海兵隊員(画像:USMC)
    宇宙・航空

    アメリカ国防総省 極超音速兵器を探知する人工衛星網構築計画を明らかに

  • 発射される迎撃ミサイル(Image:アメリカミサイル防衛局)
    宇宙・航空

    アメリカ弾道ミサイル防衛システム「3段目を使わない」迎撃ミサイル試験に成功

  • 記者会見するブリンケン国務長官(左)ストルテンベルグNATO事務総長(中)オースティン国防長官(右)(Image:NATO)
    宇宙・航空

    アメリカ軍とNATO軍 アフガニスタンからの撤退を正式決定

  • 対中タスクフォース設立を発表するバイデン大統領(Image:ホワイトハウス)
    宇宙・航空

    バイデン大統領 国防総省内に対中国タスクフォース設置を発表

  • 空中発進式戦闘ドローン「LongShot」のコンセプトイラスト(Image:Northrop Grumman)
    宇宙・航空

    アメリカ軍 空中発進式戦闘ドローン「ロングショット」開発計画発表

  • 連邦議会で警備にあたる州兵(Image:U.S.National Guard)
    宇宙・航空

    大統領就任式警備の州兵「不適切なコメントや文章」などで12名が任務から除外

  • 宇宙・航空

    軍隊・自衛隊のチャレンジコインは連帯の証

  • 宇宙・航空

    アメリカの州兵が感謝祭恒例「幸せのおすそ分け」活動を実施

  • 宇宙・航空

    ロシアがリビアで軍事活動活発化 傘下の民間軍事会社を活用

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 京都アニメーションをかたる偽サイト複数確認 公式が注意喚起
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    京都アニメーションをかたる偽サイト複数確認 公式が注意喚起

  • 博多座、高額転売者の情報開示手続きへ 「看過できない」と強い姿勢
    エンタメ, 舞台

    博多座、高額転売者の情報開示手続きへ 「看過できない」と強い姿勢

  • 雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく
    社会, 経済

    雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく

  • 声優とAIの共存を模索 81プロデュースとイレブンラボが業務提携、オリジナルの声を守り多言語展開へ
    アニメ/マンガ, 声優

    声優とAIの共存を模索 81プロデュースとイレブンラボが業務提携、オリジナルの声…

  • Google、ダークウェブレポートを終了 実用的な対処支援へ重点移行
    インターネット, サービス・テクノロジー

    Google、ダークウェブレポートを終了 実用的な対処支援へ重点移行

  • 駅ホームでの“撮り・録り”が危険に? JR東日本が注意喚起ポスターと動画を展開
    社会, 経済

    駅ホームでの“撮り・録り”が危険に? JR東日本が注意喚起ポスターと動画を展開

  • トピックス

    1. Google、ダークウェブレポートを終了 実用的な対処支援へ重点移行

      Google、ダークウェブレポートを終了 実用的な対処支援へ重点移行

      Googleは12月16日、個人情報がダークウェブ上に流出していないかを確認できる「ダークウェブ レ…
    2. Gmailを受診している画面

      Gmailの仕様変更でPOP受信が終了 自分は対象?POP利用チェック

      Gmailの仕様変更により、外部メールを取り込むPOP受信機能が2026年1月より利用できなくなりま…
    3. イベント「清水 ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎祭」(清水駅前銀座商店街)

      仲村トオルが清水に凱旋 映画「ビー・バップ・ハイスクール」40周年イベント開催

      映画「ビー・バップ・ハイスクール」(1985年)の劇場公開40周年を記念したイベント「清水 ビー・バ…

    編集部おすすめ

    1. 「漆黒の指輪」は実在したものの……サン宝石、カプセルトイ「中二病が疼くリング」の“誇大表現”を謝罪

      「漆黒の指輪」は実在したものの……サン宝石、カプセルトイ「中二病が疼くリング」の“誇大表現”を謝罪

      アクセサリーや雑貨の販売で知られる「サン宝石」は12月16日、同社が展開するカプセルトイ「中二病が疼くリング」について、公式サイトおよびSN…
    2. 雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく

      雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく

      国土交通省と気象庁は12月16日、雨や洪水などの危険を伝える「防災気象情報」について、2026年(令和8年)の大雨シーズンから新たな運用を始…
    3. コミケの名物現象がまさかのグッズ化 「食べられるコミケ雲(わたあめ)」爆誕

      コミケの名物現象がまさかのグッズ化 「食べられるコミケ雲(わたあめ)」爆誕

      夏コミ名物、会場の熱気と参加者の汗が昇華して天井付近に発生するという伝説の現象「コミケ雲」。まさかそれを口にできる日が来るとは、誰が想像した…
    4. Reactに「CVSS 10.0(最高)」の脆弱性 IPAが注意喚起

      Reactに「CVSS 10.0(最高)」の脆弱性 IPAが注意喚起

      情報処理推進機構(IPA)は12月10日、多くのウェブサービスで使われている開発技術に重大な問題が見つかり、国内でも悪用したとみられる攻撃が…
    5. ライバー事務所4社に公取委が注意 「移籍しづらい」契約に懸念

      ライバー事務所4社に公取委が注意 「移籍しづらい」契約に懸念

      ライブ配信アプリ「Pococha(ポコチャ)」で活動するライバーをサポートしている事務所4社が、所属ライバーの“退所後の活動”を不当にしばっ…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト