おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

台風のとき避難したら笑われた…体験漫画が伝える「災害に対する危機感のずれ」

 台風や洪水、地震など、自然災害に事欠かない日本。自宅が被災して避難所で寝泊りする事態も起きますが、避難のタイミングというのは早ければ早いほど、そして経験を積んでいるとより確実です。土砂災害警戒区域に自宅のある漫画家が、Twitterで早めの避難を呼びかける4コマ作品を発表しています。

  •  この4コマ作品は、漫画家のきよまろさんが2019年に「避難したら笑われた」という経験を漫画にしてTwitterで発表したもの。台風10号が九州に接近しつつある2020年9月6日、あらためて「『避難した方が良いかな?』って少しでも思ったらやはりそれは避難すべきだと思う。今年はソーシャルディスタンスの事もあり避難所が満員って所もあると思う。早め早めの行動を!」とリツイートしていました。

     きよまろさんのご自宅周辺は、大雨があった場合に土砂災害の発生しやすい場所、として「土砂災害警戒区域」に指定されているそうです。これは1999年6月の広島豪雨災害を契機として2000年に成立・公布された土砂災害防止法(土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律)に基づき、地形や地質、土地の利用状況などを踏まえて現地調査を実施し、大雨が降った際に地滑りや土石流といった土砂災害の発生する危険性が高い場所として、都道府県が危険の周知や警戒避難体制の整備を行う区域のこと。

     土砂災害警戒区域は2017年3月31日現在、全国で48万7899区域が指定され、さらに警戒が必要な土砂災害特別警戒区域は33万1466区域が指定。指定された区域では、自治体がハザードマップを配布したり、警戒避難態勢を整備したりしているほか、地域で土砂災害を想定した避難訓練なども実施しています。

     住んでいるのはそういう土地だ、という自覚があるきよまろさんは、2019年の台風19号でも、自治体から避難勧告が出された時点で最寄りの避難所に家族と避難。幸い大きな被害もなく帰宅されたそうなのですが、後日近所の方から「この間の台風、避難所行ったんですってね」「え~エラ~イ、うちなんてスマホ一晩中警告音うるさいから切ってた~」と言われてしまったそうです。

     確かに今回は被災しなかったけれども、このような心構えで実際に被災したとしたら、どうするのだろう……と考えてしまう話です。結果として何事もなかったとしても、それは幸運だったと感謝して帰宅すればいい、という心がけは防災の基本ともいえるものだと思うのです。

     筆者の実家は九州にあります。今回の台風10号接近に際して、筆者の親は「念のため」と初めて最寄りの避難所へ避難しました。避難するタイミングは「明るい昼間、台風が接近して風雨が激しくならないうちに」というもの。車を使っていないため、徒歩で移動することを念頭においた行動でした。

     避難所で一夜を明かし、帰宅した後に連絡してみると「実際に避難所生活を経験できたのはよかった。テレビで報道される避難所の風景だけでは、分からないことがたくさんあった。あそこに滞在している時の心理的なストレスや、避難所に持っていくといいものを知ることができた」という返事が返ってきました。

     詳しく聞いてみると、早めに避難所へやってくる人たちは慣れているために、避難所であると便利なものなどを万全に準備して、少しでも居心地が良くなるような工夫をしていたとのこと。実際に「避難所」を経験することで、避難する際にどうすればいいか、行動がシンプルになって落ち着いて行動できるようです。

     自治体によっては、自治会と一緒に「避難所体験」をする取り組みをしているところもあります。筆者も自治会長をしていた際、この「避難所体験」を開催したのですが、実際に体験するだけでも、被災した際にどうなるか、想像しやすくなります。

     自宅で急に被災してパニックになるよりも、避難所が開設されたタイミングで早めに避難し、結果として何事もなく帰宅する経験をしておくだけで、災害時の心構えが変わってきます。被災せずに避難所から帰宅できたことを「緊急事態に備えた『おためし』避難」と考え、本当の緊急事態で慌てないようにしておきたいものです。

    <記事化協力>
    きよまろ@4コマ漫画さん(@sobomiyako98)

    (咲村珠樹)

    あわせて読みたい関連記事
  • 災害関連死ゼロを目指す「EDAN」発足 フィリップ モリスら民間団体が連携
    企業・サービス, 経済

    災害関連死ゼロを目指す「EDAN」発足 フィリップ モリスら民間団体が連携

  • 「水害にあったときに」~浸水被害からの生活再建の手引き~
    インターネット, 社会・物議

    豪雨被害の中で頼れる一冊 「水害にあったときに」が行動の道しるべに

  • 元自衛官が「背負いやすいリュックの詰め方」を解説 災害時の“逃げやすさ”に直結
    インターネット, 雑学・コラム

    元自衛官が「背負いやすいリュックの詰め方」を紹介 災害時の“逃げやすさ”に直結

  • 3センチほどある釘
    インターネット, 社会・物議

    靴底に刺さった小さな釘にゾッ……消防士が身を持って教える「足元の危険」

  • 防災意識は高まっても備えは不足?経験者と非経験者のギャップ 第一三共が調査
    企業・サービス, 経済

    防災意識は高まっても備えは不足?経験者と非経験者のギャップ 第一三共が調査

  • 災害用伝言ダイヤルの利用方法
    インターネット, 雑学・コラム

    災害用伝言ダイヤル(171)は毎月1日と15日に体験利用できる 有事への備えを

  • 推しグッズが心の支えに
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    停電時に推しのペンライトが支えに 地震による停電経験者が語る備えのススメ

  • 地震から身を守るために!学習漫画「巨大地震のサバイバル」発売
    商品・物販, 経済

    地震から身を守るために!学習漫画「巨大地震のサバイバル」発売

  • 警視庁がすすめる蒸さない蒸しパン
    グルメ, 作ってみた

    警視庁がすすめる蒸さない蒸しパンを家にあるもので作ってみた 災害時にも

  • 大規模な災害時に役立つLINEの機能を紹介
    インターネット, サービス・テクノロジー

    大規模な災害時に役立つ「LINE安否確認」など LINEが改めて紹介

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 京都アニメーションをかたる偽サイト複数確認 公式が注意喚起
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    京都アニメーションをかたる偽サイト複数確認 公式が注意喚起

  • 博多座、高額転売者の情報開示手続きへ 「看過できない」と強い姿勢
    エンタメ, 舞台

    博多座、高額転売者の情報開示手続きへ 「看過できない」と強い姿勢

  • 雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく
    社会, 経済

    雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく

  • 声優とAIの共存を模索 81プロデュースとイレブンラボが業務提携、オリジナルの声を守り多言語展開へ
    アニメ/マンガ, 声優

    声優とAIの共存を模索 81プロデュースとイレブンラボが業務提携、オリジナルの声…

  • Google、ダークウェブレポートを終了 実用的な対処支援へ重点移行
    インターネット, サービス・テクノロジー

    Google、ダークウェブレポートを終了 実用的な対処支援へ重点移行

  • 駅ホームでの“撮り・録り”が危険に? JR東日本が注意喚起ポスターと動画を展開
    社会, 経済

    駅ホームでの“撮り・録り”が危険に? JR東日本が注意喚起ポスターと動画を展開

  • トピックス

    1. Google、ダークウェブレポートを終了 実用的な対処支援へ重点移行

      Google、ダークウェブレポートを終了 実用的な対処支援へ重点移行

      Googleは12月16日、個人情報がダークウェブ上に流出していないかを確認できる「ダークウェブ レ…
    2. Gmailを受診している画面

      Gmailの仕様変更でPOP受信が終了 自分は対象?POP利用チェック

      Gmailの仕様変更により、外部メールを取り込むPOP受信機能が2026年1月より利用できなくなりま…
    3. イベント「清水 ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎祭」(清水駅前銀座商店街)

      仲村トオルが清水に凱旋 映画「ビー・バップ・ハイスクール」40周年イベント開催

      映画「ビー・バップ・ハイスクール」(1985年)の劇場公開40周年を記念したイベント「清水 ビー・バ…

    編集部おすすめ

    1. 「漆黒の指輪」は実在したものの……サン宝石、カプセルトイ「中二病が疼くリング」の“誇大表現”を謝罪

      「漆黒の指輪」は実在したものの……サン宝石、カプセルトイ「中二病が疼くリング」の“誇大表現”を謝罪

      アクセサリーや雑貨の販売で知られる「サン宝石」は12月16日、同社が展開するカプセルトイ「中二病が疼くリング」について、公式サイトおよびSN…
    2. 雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく

      雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく

      国土交通省と気象庁は12月16日、雨や洪水などの危険を伝える「防災気象情報」について、2026年(令和8年)の大雨シーズンから新たな運用を始…
    3. コミケの名物現象がまさかのグッズ化 「食べられるコミケ雲(わたあめ)」爆誕

      コミケの名物現象がまさかのグッズ化 「食べられるコミケ雲(わたあめ)」爆誕

      夏コミ名物、会場の熱気と参加者の汗が昇華して天井付近に発生するという伝説の現象「コミケ雲」。まさかそれを口にできる日が来るとは、誰が想像した…
    4. Reactに「CVSS 10.0(最高)」の脆弱性 IPAが注意喚起

      Reactに「CVSS 10.0(最高)」の脆弱性 IPAが注意喚起

      情報処理推進機構(IPA)は12月10日、多くのウェブサービスで使われている開発技術に重大な問題が見つかり、国内でも悪用したとみられる攻撃が…
    5. ライバー事務所4社に公取委が注意 「移籍しづらい」契約に懸念

      ライバー事務所4社に公取委が注意 「移籍しづらい」契約に懸念

      ライブ配信アプリ「Pococha(ポコチャ)」で活動するライバーをサポートしている事務所4社が、所属ライバーの“退所後の活動”を不当にしばっ…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト