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「植物だったらゲノム解析されてそう」…インテリ悪口ってなに? 「教養(インテリ)悪口本」の堀元見にきく(深水英一郎氏寄稿)

 著者本人に著書を紹介いただく「著者著書紹介」。2022年の第1回は、光文社から発売されている「教養(インテリ)悪口本」著者の堀元見(ほりもとけん)さんにお話をききます。

  • —— 堀元さん、あけましておめでとうございます。よろしくお願いいたします。早速ですが、今回の著書を紹介お願いします。

    【堀元見】:

     今回出版したのは「教養(インテリ)悪口本」という本でして、先日12月22日に初版が出ました。色々な学問のちょっと面白い知識を使って、テクニカルに人をバカにする「インテリ悪口」を37個紹介しています。

     インターネットには「こいつ無能。死ね」といった知性もユーモアも宿っていない悪口が氾濫していますが、それを見て楽しいと思う人はいません。

     そんな時に「無能だ」と言う代わりに「植物だったらゲノム解析されてそう」と言うとちょっと面白いし「どういうこと?」と知的好奇心が湧きますよね、と。そんな感じのジョーク本です。

    ——特にどのような読者に読んで欲しい本ですか?

    【堀元見】:

     おもしろ雑学が好きで、ちょっと底意地が悪い人です(狭い!)。

    ——私も非常に楽しく読ませてもらったのですが、確かに自分も底意地が悪いところがありますね(笑)。堀元さんがこの本で一番伝えたかった事は何ですか?

    【堀元見】:

     抽象的な話になってしまいますが、「知識を無駄遣いしてふざける楽しさ」ですね。僕はここ数年「勉強して得た知識を無駄遣いしてふざける」というコンセプトでコンテンツを作って生活しておりまして、消費者としても作り手としてもそういうコンテンツが好きです。

     たとえば、今回の本で言うと「まるでギムワリをやっているようだ」という悪口を紹介した章があります。

     これは、フランスの文化人類学者マルセル・モースの『贈与論』(岩波文庫、ちくま学芸文庫など)という古典的名著を読んでいたときに出てきたフレーズです。つまり、めちゃくちゃマジメな本のめちゃくちゃマジメな知識なんですが、僕はふざけた視点でいつも本を読んでいるので、「これ、割り勘が細かい人に対して悪口として使えるなぁ」などと考えるワケです。

     そうすると、学者の「堅くて、やや読みにくい文章」が、急に身近で愉快なものに思えている。マジメなものにふざけて向き合うと楽しいんです。

     そういう喜びが伝わるといいなと思って書いた本ですね。「これ悪口に使えそう」みたいなふざけたノリで古典を読む人が増えるといいなと思っています。

    ——本書を読み進めていると、堀元さんが古典的名著を含むさまざまな本を新しい角度で読み解いて楽しんでらっしゃる様子が伝わります。最終的に悪口に変換されるわけですが、悪口といいつつも読書で得られた知恵を現代の自分たちに当てはめるひとつの例を見せられているような気分です。とても独創的な切り口でこれまでに見たことがないものだなと思いました。この本を書くきっかけってなんだったのでしょう?

    【堀元見】:

     もう2年以上、「しょうもない人をインテリ悪口でバカにする」がメインコンテンツの有料マガジンをnoteで書いておりまして、結構人気を博してそれだけで生計を立てられるようになりました。

     で、知り合いの編集者に「これ本になりそうだから企画書にして送ってよ」と言われて、送ったらなんだかんだで本になりましたね。全て成り行きで生きてます。高校生の頃は「人の心に温かく染み入る青春小説」とかを書く作家になりたかったのですが……。

    ——堀元さんが今一番興味を持っていることは何ですか?

    【堀元見】:

     「学問知識をエンタメ化する」です。「ためになるから」とか「必要だから」という以上に、「面白いから」という理由で色んなジャンルに首を突っ込んで勉強する人が増えるといいなと思ってます。皆の知的好奇心を暴走させたい。

     僕は「ゆる言語学ラジオ」というYouTubeチャンネルをやっているのですが、その視聴者はかなりの頻度で我々のチャンネルから言語学の小難しい本を買ってくれています。そういう形で、皆が学問を面白がる入り口になれたらいいなと。

     「教養悪口本」でも、「社会理論と社会構造」(ロバート・K. マートン著)というかなり分厚い骨太な社会学の本を参考文献にしているのですが、僕の文章をきっかけにこれを読み始めたという報告を何人かからいただいており、嬉しい限りですね。

    ——次に書きたい本はどんな本ですか?

    【堀元見】:

     今回の本を担当してくれた光文社の編集者と「次出しましょう」と話しているのは、「教養(インテリ)言い訳本」または「教養(インテリ)開き直り本」みたいなヤツですね。

     あと、既に決まっていて書き始めているのが徳間書店から出る「ビジネス書って同じことばっかり書いてない?100冊読んで検証してみた」みたいな本です。

     僕は軽薄なビジネス書があんまり好きではないので、それをうっすら茶化したいと思ってます。

     今までの話とも繋がりますが、僕はちゃんとした学問の知識が好きなので、「どうせならビジネス書じゃなくて古典とか学者が書いた骨太な本とかを読もうぜ」という心情があります。そんな心情をうっすら伝える本にできたらなと。

    ——ブログでも話題にされていたビジネス書の話の書籍化が進んでいるんですね、それは楽しみです。ビジネス書って良いものといまいちなものがひとくくりにされてわかりにくくなっていますが、単なる焼き直し本や内容が薄い本の見分け方などがわかるだけでもありがたいですね。それでは最後に、堀元さんの今後の活動予定について教えてください。

    【堀元見】:

     作家/YouTuber/Podcasterの三足のわらじをやりつつ、同じような活動をする人を増やしていきたいと思ってますね。

     「ゆる言語学ラジオ」がかなり当たって伸びたので、フランチャイズ化して別番組もいっぱいプロデュースしたいなと思ってます。詳しくはゆる言語学ラジオの2022年1月1日公開の動画で話しておりますので、皆さんよろしければこちらを見てください!

    ——ありがとうございました!

    【「教養(インテリ)悪口本」著者プロフィール】
    堀元 見(ほりもと けん)
    (たぶん)世界で唯一のインテリ悪口専業作家。慶應義塾大学卒業後、就職せず「インターネットでふざける」を職業にする。
    初年度の年収はマイナス70万円。2019年に開始した「インテリ悪口で人をバカにする有料マガジン」がウケてそれだけで生活できるようになったため、インテリ悪口作家を名乗り始めた。飲み会で職業を聞かれると「悪口を書いてます」と答えて相手を困惑させている。他の代表作に、YouTubeチャンネル「ゆる言語学ラジオ」などがある。
    著者Twitter https://twitter.com/kenhori2

    (インタビューききて・深水英一郎 / https://nitsuite.jp/fukamie

    ※本稿は、メールマガジンサービス「まぐまぐ」の開発・発案者で「メルマガの父」と呼ばれ、未来検索ブラジル元代表、ニュースサイト「ガジェット通信」の立ち上げ等もおこなった深水英一郎氏からの寄稿記事です。

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