Twitter発の漫画がアニメ化されるなど、現代のクリエイターにとってSNSは重要な存在。とはいえ、SNSというものは強力なファン獲得ツールになる反面、炎上がきっかけで評判を落とすこともあります。

 これからクリエイターを目指す人は、SNSをどう使っていけばいいのでしょう?とあるクリエイター養成系の専門学校で講師を務めていた漫画家が、当時の講義をもとにした漫画をTwitterに発表し、話題となっています。

 この漫画をツイートしたのは、漫画家のぬこー様さん。専門学校のイラスト科で、講師を取りまとめる学科長をしていた頃に導入した「クリエイター向けSNSの使い方」カリキュラムでの一場面だそうです。

 ぬこー様さんによると、カリキュラムの主眼は「SNSでファンを取り逃さない、減らさない」ということ。「取り逃さない」というのは、SNSからもファンを獲得できるということであり、逆にSNSでの振る舞いでファンを幻滅させないよう、使い方を学びましょうというわけです。

 信頼は時間をかけて徐々に積み重なっていくものですが、ファンも同様で一気に増えることはまずありません。なので、まず考えることは「既存のファンを減らさないこと」。

 ファンも信頼も、失うのは一瞬。ですからSNSでの言動は気をつけなければならず、まずは「やっちゃいけないことを頭に入れましょう」と学生たちに語りかけます。

 大前提として挙げたのが「悪口を言わない」と「口論しない」。これはどちらも言葉遣いが悪くなりがちで、文字として残る分、声で言われるより強い印象を与えます。いわゆる「品性が疑われる」というものです。

クリエイターがSNSでやっちゃいけないことを説く(ぬこー様さん提供)

 学生からほかの例はないか、と水を向けると、ゲームの「ガチャで限定キャラを当ててもスクショを投稿しない」という声が返ってきました。これには2つのリスクがあって、まずスクショを投稿する時点で著作権侵害の可能性があること、そして限定キャラを引いて「嫉妬される」という点です。

 これをきっかけに、学生から色々な例が飛び出します。「突然政治的思想を熱く語り始める」「唐突なグロ画像」「病みツイート連投で構ってちゃんする」……どれも目にする側にとっては、作品のイメージとはかけ離れていて当惑してしまうものばかり。

 さらに「過剰なリア充アピール」に対しては、ぬこー様さんは「あー」とにこやかに答えます。これもやはり、多くの人の嫉妬を買ってしまう行為といえるでしょう。

学生からの意見が続々(ぬこー様さん提供)

 最後の「猫画像めっちゃアップする」に対しては「猫はイんだよ」と答えてオチとなります。……というのも、ぬこー様さん自身がよく愛猫の画像をTwitterに投稿しているから。枠外に「いつもすみません……」とのお詫びが入っています。

猫はいいんです(ぬこー様さん提供)

 このツイートに付加されたスレッドには、漫画に書ききれなかった「べからず集」が綴られており、これ以外にも「制作途中の作品を小出しにアップする」「本気じゃないアピールしながら投稿する」「金配り、アマゾンギフト配り、懸賞関係をやたらリツイートする」「武勇伝を語り出す」などが挙げられています。

 基本的には自分の作風、そこから想像される作者像(ファンが自分をどう見ているか)を意識し、そこから大きく逸脱しない方が無難だといえるでしょう。ちなみに、猫は世界的にTwitterで愛されている存在のようで、世界各国に人気の猫アカウントが存在します。

 漫画に描かれたカリキュラム、ぬこー様さんに学生たちの反応についてうかがうと「概ね好評だったと記憶してます!」とのお答え。「やはり、ほとんどの学生はブランディングを意識してませんので、脳内垂れ流しでした」というSNS利用状況だったので、自身がどう見られるかを意識するのは、新鮮な経験だったのかもしれません。

 講義においては「若い子はトラブルに巻き込まれやすいし、自分からも起こしがちなので、そこはしっかり指導していました」といいますから、SNSを利用する際の主体性についても教えていたようです。SNSは一見仲間内だけのようなコミュニティに感じますが、実は世界中に発信されていることは意識した方がいいですね。

 ぬこー様さん自身は、SNSとどう付き合っているのでしょう。まずは「カッとなってもスパム以外は絶対ブロックをしない」と信条を語ってくれました。

 「SNSには悪意をぶつけるのが目的になってる人が、悲しいけど存在します。そういう人はブロックすると余計エスカレートするので適当にいなしてます」

 いかに口論しないようにするか。幸い、SNSは相手が目の前にいるわけではありませんから、心が落ち着くまで放置しておくのも一考でしょう。強い言葉が重なると互いにヒートアップしますから、のらりくらりとかわすテクニックも必要かもしれません。

 また、自分の言葉が100%間違いなく伝わるとは思っていない、とのこと。「情報発信する際は曲解されることも許容しています。うまく伝わらなくても相手を責めず、自分の伝え方が悪かったんだと思うようにしています。これで大体トラブルは避けられます」と、自身の能力の限界も見据えた上で発信しているそうです。

 これらの注意点は、人から見られる立場のクリエイター以外にも当てはまりそう。SNSは公開の場なので、世界中から様々な人が発信した情報を見ることができます。つまり自分の発信した情報も自分が見ているのと同じくらい、いやもしかしたらそれ以上の人にまで伝わっているかもしれません。

 この特性を頭に入れておけば、自分がどう見られたいのかを考え、情報発信を心がけるのも可能だと思います。しかし、猫は大丈夫とはいえ、あまり猫の画像や話題ばかり投稿していると、クリエイターであることが伝わらなくなるので、程々にしておいた方が良いかもしれませんね。

<記事化協力>
ぬこー様さん(@nukosama)

(咲村珠樹)