「特撮映像館」、大映妖怪シリーズ第三作の『東海道お化け道中』をご紹介いたします。時代劇といえば東海道道中、ということで、父を探す幼い少女と渡世人が旅をします。そこに妖怪がどう関わってくるか…じっくりとご堪能ください。

怪奇特撮時代劇シリーズの第三作目は股旅物。


「鬼塚」と呼ばれる妖怪を祀った塚守りが、年に一度日本中の妖怪が集まるといわれる日に、塚でやくざの刃傷沙汰に巻き込まれ切られてしまう。
この場所で血を流してはいけないと何度も忠告した上でのことだった。自分の不正を暴かれるのを恐れた勘蔵と、その子分たち「火車組」は、その直後から怪異な現象に襲われ、告発する書状を見失ってしまう。たまたまその近くにいた塚守りの幼い孫娘、美代がそれを持っているのではないかと追うのだが、美代は塚守りのいまわの際に聞かされた父親を訪ねて東海道を一人旅するのだった。

そんな美代と知り合い父親の元まで送ろうとするのが、不正を告発しようとして勘蔵に殺された仁兵衛の子分、百太郎。百太郎自身も勘蔵の手下たちに命を狙われながら、美代とともに東海道を旅していく。

妖怪は、第一作『妖怪百物語』同様、人間の身勝手さや強欲に対して祟っているようだ。もっとも本作のストーリー自体は美代の父親探し的なものが主体で、妖怪はどこか取ってつけたような印象もないではない。もう少しストーリー自体に絡んでいたらという気がしてしまう。

登場する妖怪の大半は前作、前々作に登場したもので、本作が初登場というものは少ない。主演の本郷功次郎はガメラ、大魔神、そし妖怪シリーズと大映特撮作品を総なめという感じ。もっとも本作公開時に併映だった『ガメラ対大悪獣ギロン』には出演していなかった。個人的には本郷より戸浦の印象が強い。仁兵衛の子分で百太郎の弟分でもありながら、勘蔵の側に付く複雑な役柄ということもあるが、戸浦六宏という俳優の演技を堪能できる一本でもあるように思える。

ラストシーンはシリーズを通しての百鬼夜行的なものになってはいるが、本作では「鬼塚」に消えていくということで夜行というには少し趣向が違っているような気もする。本作を加えて「妖怪三部作」とされているわけだが、登場する妖怪がかぶっているという点をのぞけば、タイトルに「妖怪」が付かないこともあり独立した作品と見られないわけではない。あえていえば「妖怪三部作」以外に作られた『四谷怪談』などの怪談映画とオリジナル作品である「妖怪シリーズ」の中間に位置するようなものではなかったのではないだろうか。なんといっても前作、前々作に見られたユーモラスなシーン(妖怪絡みの)がないというのが大きな違いだろう。

監督/安田公義、黒田義之
キャスト/本郷功次郎、戸浦六宏、穂積ぺぺ、古城門昌美、左 卜全、ほか。
1969年/78分/日本

(文:猫目ユウ)