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運動会で最も過酷な競技「プログラム0番」に参加してみた

 運動会の競技といえば、昭和生まれの筆者にとって、騎馬戦、棒倒し、と猛々しい競技から、女子と手をつなげる滅多にないチャーーンス!フォークダンスが思い出されます。手をつなぐっていっても軽く重ねる程度だったのですが、気になる子が回ってくるのをドキドキしながら心待ちにしたものです。でもそんなに上手くいくはずもなく、回ってくる前に音楽が終わったりして……。まぁ、人生とはそんなものです。

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    運動会の様子

     その運動会で、今や父親になっている友達や仕事仲間から、「プログラム0番」なる最も過酷な競技があることを耳にしました。飲みの席で「プログラム0番」で盛り上がるオヤジ達……。「今度の日曜プログラム0番参加するんだ…」「あれマジつらいよね」などなど笑いながらも愚痴をこぼしています。プログラム0番?子供の頃には聞いたこともない競技。詳しく話を聞いてみるとなんてことないただの「運動会の場所取り」の話でした。

     以前から言われていたことですが、運動会の場所とりは毎年熾烈を極めているとかで、人によっては「場所取りレース」とも呼ぶとのこと。そしていつの頃からか、親達の間で「プログラム0番」や「プログラムNo.0」と呼ばれるようになっているそうです。ネットで調べたところ確かに「プログラム0番」「プログラムNo.0」が運動会の場所取りの隠語として使われていました。

     このところは、先着順ではなく時間指定の抽選方式がもっぱらとのことですが、折角なのでと友人にお願いしてその「プログラム0番」とも「場所取りレース」とも言われる競技に参加してみることにしました。

    ■プログラム0番には色々ルールがあるらしい

     運動会当日、友達に指定された待ち合わせ時間は朝の5時50分。待ち合わせ場所の駅から学校まで徒歩10分と見越して指定したそうです。抽選式の場合には並び始める時間が指定されており、それより前に並ぶのは禁止なんだとか。

    ▼抽選列のルール
    ・参加者は朝6時に校門前集合で、それより前の待機は禁止。
    ・何人来ても1家族1回しか引けない。親戚などの代理参加はOK。

     そんな話を聞きながら駅に向かう途中、続々お仲間達が増えていきます。お父さんらしき人がほとんどですが、中にはおじいちゃん、おばあちゃん、お子さん連れのお母さんも。そして自然と歩道に固まるよう歩いて行くのですが、次第になぜか皆早歩きになっていました。周囲につられて自分も……。

     顔は皆平静を装ってますが、まっすぐ正面をみて早歩きする姿はまるで陸上競歩の選手のよう。静かなる戦いがどうやら既に始まっているようでした。

     到着してその理由が判明。6時ぴったりに到着したのに既に100人ほどの列ができていました。さっきの早歩きは、6時にあわせ残り数秒単位での静かなレースがおこなわれていたようです。場所取り順は抽選で決められますが、あまり人数が多いとくじを引くまでに最初よりも後の方が待たされるとかで、くじ順もできるだけ早い順から並びたいとの話。抽選列締め切りとなる15分には、さらに人数はふくれあがり後から聞いた話によると最終的に約300家族が並んだとのこと。児童数が700人の学校なので約半分近くが並んだことになります。

    ■順々にグラウンドに放たれるオヤジ達 いろんな意味で圧巻

     そして始まった大抽選会。友達に頼んで代わりにくじを引かせてもらいました。番号は可もなく不可もなくの120番。

     先生からの指示に従いグラウンド入り口にくじ順ごとに整列すると、次はルール説明が行われました。事前にプリント配布も行われたそうですが、改めて説明がありました。なんだか徐々に競技っぽくなってきます。その時、聞いたルールは次の通り。

    ▼場所取りのルール
    ・5人ずつ一斉にスタート。合図は先生が出してくれる。
    ・次の間隔は10秒~15秒。
    ・走るのは禁止。歩いて希望する場所まで向かうこと。(お年寄りもいるので)
    ・1家族1スペースのみの確保が可能で、広さはその家族分のみ。
    ・大きいサイズのブルーシートは以前クレームがあったので禁止。

     全員整列したら、先頭から5人ずつ今度は横一列に。子供の頃の個人競争を思い出します。スタートの合図は早朝ということもあり先生の「よーい、どん!」。その瞬間、グラウンドに次々とオヤジ達が放たれていきます。(先頭はほとんど父親しかいなかった)走るの禁止といわれていますが、次々と後がスタートするため自然と走る人もでてきます。すると先生から「そこー走らないでくださいー!!」の注意が。

    ■ひたすら歩みを進める姿はまるで競歩レース…これは間違いなく競技だ!

     そうなると次に自然発生するのが早歩き。今度は一斉に競歩のように歩みを進めていきます。冷静に見るとちょっと微妙な光景ですが参加者は皆真剣そのもの。

     レジャーシート片手にひたすらお目当ての場所へ歩みを進めていきます。その光景はまさしく「競技」。ちなみに次々グラウンドに人が放たれていくので、フジテレビのバラエティ番組「逃走中」も見ながらぼんやり思い出していました。

     そうしてやってきた自分の番。合図とともにスタートするも、すでに先人らがあらかた良い場所を確保していたので、とりあえずわずかに空きのある奥へ奥へと歩みをすすめます。その途中も背後から「よーい、どん!」の声。これは焦る……。

     気づけば自分も早歩きになっていました。走らず急ぐというのは、あれですね。尻にキュッと力が入りますね。そんな話は良いとして、そんなこんなで何とか場所確保してゴール。

     筆者がゴールしたのは7時過ぎ。長い……長いレースでした。参加してみて思いましたが、確かにこれは言われるとおり単なる場所取りではなく、もはや「場所取りレース」という競技の域。学校によっては「走ってもOK」というところもあるそうなので、そうなると一層レース感が増すそうです。これは間違いなく「プログラム0番」だ!

    ■運動会は子よりも親が何倍も頑張ってると思った

     しっかし、朝から待機して、抽選、列確保まで1時間とすこし。これを毎年繰り返している世のお父さん、お母さんらは本当に偉大!これ毎年はきつい!

     さらに人によってはPTAや「オヤジの会」という父親だけの会の活動もこの後あるとかで、運動会終了後の撤収まで16時か17時までそのままいるそうです。子供の頃は、運動会は「自分達が一番頑張るもの」ぐらいにしか考えてませんでしたが、いやいやいやいや。その何倍も見守る親達が頑張っているのが分かりました。お母さんに至ってはお弁当作りもあるわけですからね。本当にただただ頭が下がるばかりです。

    (文:HideI)

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