そろそろ秋ということで、紅葉に食欲と色々楽しみが増える時期ではありますが、秋と言えば忘れてならないのが春とともにある「体育祭」シーズン。学校によっては春だけ、秋だけ、はたまた地域によっては春夏年2回実施するところも存在しています。
■組み体操「全面廃止」はその後どうなった?
そんな体育祭の花形種目、組み体操はこの数年、シーズンになる度に何かと騒がれ続けています。理由は演技の大技「ピラミッド」で大けがした子や、それ以外にも細かいけがをする子が続出しているから。
この問題は、2015年に特に大きく社会全体で議論され、いくつかの自治体では「市立小中学校の組み体操全面廃止」を平成28年度より実施すると決定しました。よく知られているのが柏市・松戸市など千葉県内の自治体。
その実施初年度となるこの4月以降、「全面廃止」を決めた自治体の対応はその後はどうなったのか?
新聞などの報道によると6月の運動会では柏市の場合、組み体操にかわりダンスが盛り込まれるようになったと伝えていました。でも、実際どのように運用されているのか気になっていたので、同僚ライターのお子さんの応援をかね、28年度から実施した自治体の一つ、千葉県柏市の“ある”市立小学校の運動会を見学してきました。
■組み体操はプログラムから消え、代わりにダンス
運動会当日、同僚に見せてもらったプログラムによると、全体の1/3が走る競技(リレーと個人走)、1/3がダンス(よさこい含む)、残り1/3を吹奏楽部の演奏、棒引き、玉入れ、保護者競技、来年入学児童用の種目、応援合戦、大玉転がしとなっていました。
ほうほう今はこんな感じなのか。と思いつつ、自分の時はどうだったっけ?なんて考えてみると、プログラムの一つ「よさこい」には新鮮なものを感じながらも、それ以外は組み体操がないくらいでほぼ同じという印象。6学年もいるし人数も人数なのでわりとあっさり目の種目が占めていました。もちろん、プログラムのどこにも「組み体操」の文字は見あたりません。
そして訪れた6年生の種目。例年ならば組み体操を行う学年ですが、プログラム上には「ダンス」と書かれていました。 まずは音楽が流れ、各児童は鈴や扇をもち、祭りをイメージしたようなダンスを展開していきます。これに周囲の保護者からも「組み体操がなくなったからダンスになったのよ」「あれ、組み体操なくなっちゃったの!?」なんて話声が聞こえてきます。
そうだよなー。全面廃止なわけだからあるはずないと思った次の瞬間、児童達が手にもった鈴や扇を地面に置いて次々仰向けになっていったのです。
■ダンスの振り付けとして組み体操!?意外な展開にビックリ
突然の展開にびっくりしつつ見守ると、仰向けから足を上げ「肩倒立」、次に「ブリッジ」。そして二人組になって「とんぼ」、一人の足をもう一人が持ち上げる「すべり台」に、仰向けになった子の上にもう一人がのり、互いの足首をつかみ支え合う「ボックス」。さらに5人になり「扇」と組み体操の技の一つ一つが行われていきます。もちろん、ピラミッドといった大技は行われませんでしたが、私の知る限りはこれは「組み体操」の技にしか見えませんでした。
どうやら比較的簡単な技をダンスの「振り付け」として取り込むことで、組み体操の技を生き残らせたよう。 全面廃止のための苦肉の策なのでしょうが、同じ地域でも学校によっては純粋にダンスだけのところもあるそうなので、担当する先生、そしてそれを見守る保護者たちの考えにより方針には若干ばらつきがあるようです。
組み体操「全面廃止」は全国でもまだ例が少なく実施地域は28年度で始めたばかり。そのため動きにばらつきがあるのは仕方ありませんが、今回実施されたような小技については、ケガも比較的少ないものばかりですので、一括りに「全面廃止」とせず、安全そうなものについては今一度見直して部分的に正式に続けさせてもいいような気がしました。少なくとも堂々と「組み体操」といえる分、子供達にとっても見る側にとってもすっきりするのではないでしょうか。
※初出時、プログラムの箇所で「棒倒し」としておりましたところ、正しくは「棒引き」の誤りでした。訂正しお詫びいたします。
(文:宮崎美和子)