おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【うちの本棚】210回 ここのつの友情/竹宮恵子

「うちの本棚」、今回ご紹介するのは竹宮恵子の『ここのつの友情』です。
 デビュー前の投稿作品をリメイクしたもので、作者としても思い入れのある作品のひとつのようです。

  • 【関連:209回 ガラスの迷路/竹宮恵子】

    ここのつの友情

     本書は「少年シリーズ(1)」とカバーに記されている。
    『ここのつの友情』は、デビュー前に投稿作品として描かれたもののリメイク。『ジョージの日曜日』はその後日談である。
     金髪に青い目の少年ジョージは、日本育ちで日本語もペラペラだが、その外見から周囲の人には敬遠され、自分でも殻に閉じこもるような状況だった。主人公の朗は、偶然ジョージと知り合い親友となり、ジョージが心を開いて仲間を作っていくのを見守る。
     実を言うと、この作品を読むまでは、9個の友情という意味だと思っていたのだけれど、実際は9歳という意味でした。

    『アンドレア』は「ウィーン少年合唱団」を描いた作品で、合唱団ものの初期作品。作者本人とその親友が登場する、フィクションとノンフィクションが交錯した作風は、その後のシリーズにも踏襲されている。

    『会話』は、親友の双子の姉に恋するトッポが描かれているが、「あとがき」によれば、トッポとその親友サリュウの長い物語の一部とのこと。雰囲気からは、トッポと男女の双子の三角関係が想像されるのだが…。

     最後に収録されている『漫画狂の詩』は「楳図かずお伝」のサブタイトルで、楳図かずおについて描かれたものなのだが、竹宮本人が面識のないところで仕事を請けていて、結果的に伝記というより、楳図かずおの印象を描いている。ある意味「永遠の少年」とも言える楳図かずおだから、「少年シリーズ」として収録してしまっても間違ってはいないかもしれない。

     全体として、前向きな明るい傾向を持った作品ばかりで、ドロドロとした愛憎や一度踏み込んだら抜け出せないような異世界が描かれていないことが、逆に意外な作品集だ。もっとも、この明るさは作者本人の印象に近いのではないかと思ってしまうのだけれど。
     ちなみに『ここのつの友情』の扉ページは、タイトルも含めてアシスタントを使わず竹宮恵子がひとりで描いたとのことである。

    初出:ここのつの友情/小学館「週刊少女コミック」昭和46年30号、ジョージの日曜日/小学館「週刊少女コミック」昭和49年27号、アンドレア/小学館「別冊少女コミック」昭和51年10月号、会話/白泉社「LaLa」昭和51年9月号、
    漫画狂の詩/小学館「週刊少年サンデー」昭和50年8月5日増刊号

    書 名/ここのつの友情
    著者名/竹宮恵子
    出版元/小学館
    判 型/新書判
    定 価/320円
    シリーズ名/フラワーコミックス(FC-151)
    初版発行日/昭和52年1月5日
    収録作品/ここのつの友情、ジョージの日曜日、アンドレア、会話、漫画狂の詩、<デビュー記念作>とわたし

    (文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

    あわせて読みたい関連記事
  • 華の会メール・バナー
    PR

    オトナ世代の恋愛マッチング

  • 華の会メール・バナー
    PR

    趣味でつながる30代からの恋愛マッチング \華の会メール/

  • 商品・グッズ

    竹宮惠子の御朱印帳第2弾は「地球へ…」

  • ニュース・話題

    ふるさと納税の返礼で竹宮恵子先生のエッセイや画集が手に入る!

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】217回 ファラオの墓/竹宮恵子

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】216回 集まる日,/竹宮恵子

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】215回 ここのつの友情・作品集版/竹宮恵子

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】214回 空が好き!/竹宮恵子

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】213回 魔女はホットなお年頃/竹宮恵子

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】212回 森の子トール/竹宮恵子

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】211回 アストロツイン/竹宮恵子

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】209回 ガラスの迷路/竹宮恵子

  • 猫目 ユウWriter

    記事一覧

    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
    仮想空間「Second Life」やってます^^

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • コラム・レビュー

    複数社から発売された『墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)』を振り返る

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】262回 こいきな奴ら/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】259回 デザイナー/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】258回 わらってクイーンベル/一条ゆかり

  • トピックス

    1. 松屋「担々麺ハンバーグ」を実食 記憶が混乱するレベルに美味しい……!

      松屋「担々麺ハンバーグ」を実食 記憶が混乱するレベルに美味しい……!

      松屋は8月19日から一部店舗限定で「担々麺ハンバーグ」を販売中です。鉄板にのったハンバーグに担々麺が…
    2. 7億円の当せん番号決定の瞬間を目撃!「サマージャンボ」抽せん会参加レポ

      7億円の当せん番号が決まる瞬間を現地取材!サマージャンボ抽せん会レポート

      1等・前後賞合わせて7億円が当たる「サマージャンボ宝くじ」と、1等・前後賞合わせて5000万円が当た…
    3. 加藤茶、伝説の“カトケンゲーム”に挑戦 新番組「第三学区」放送開始

      加藤茶、伝説の“カトケンゲーム”に挑戦 新番組「第三学区」放送開始

      お笑いタレントの加藤茶さんが、まさかの“自分ゲー”に挑む。テレビ神奈川の新番組「第三学区」(だいさん…

    編集部おすすめ

    1. たいちくんX投稿より

      ゆりにゃさん元パートナー、Xで未練吐露→ネットの反応は冷ややか

      インフルエンサー・ゆりにゃさんの、公私にわたる元パートナーである「たいちくん」こと齊藤太一氏が、8月17日に自身のX(旧Twitter)を更…
    2. 匿名質問文化を支えた「Peing-質問箱-」終了 2017年の誕生から8年

      匿名質問文化を支えた「Peing-質問箱-」終了 2017年の誕生から8年

      匿名で質問やメッセージを送れるサービス「Peing-質問箱-」が、2025年8月29日をもって終了することが発表された。運営は8月15日付で…
    3. マクドナルドのポケカ騒動 期間中の店舗を訪れた記者が感じた“異様な雰囲気”

      マクドナルドのポケカ騒動 期間中の店舗で感じた“異様な雰囲気”

      マクドナルドは8月11日、ハッピーセット「ポケモン」のポケモンカードキャンペーンを巡る混乱について公式サイトで謝罪しました。期間限定カードを…
    4. 「珍しい苗字」より盛り上がる? 地域特有の苗字をまとめた地図が話題

      「珍しい苗字」より盛り上がる? 地域特有の苗字をまとめた地図が話題

      大学進学や就職で交友関係が広がると、今までの人生で見たことがない苗字を持つ人と知り合いになることがよくあります。見慣れない苗字に遭遇したとき…
    5. 「オラと博士の夏休み」初のスマホ版がでたゾ!でも日本は対象外……

      「オラと博士の夏休み」初のスマホ版がでたゾ!でも日本は対象外……

      累計販売90万本を超える人気作「クレヨンしんちゃん『オラと博士の夏休み』~おわらない七日間の旅~」が、初めてスマートフォンで遊べるようになり…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト