おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【特撮映像館】Act.1 大怪獣ガメラ

update:

ナナメ観!特撮映像館書籍コラムと平行して特撮映像のコラムも連載させていただくことになりました、ライターの猫目ユウと申します。ヨロシクお願いいたします。
初めてお目にかかる方も多いかと思いますが、「GON!」などのサブカル誌、レディースコミック誌、アダルト誌などで記事を書いてまいりました。マンガやアニメ、特撮に関してもそこそこマニアな傾向にありますが、ブログ以外でそういった内容の記事を発表する機会がなかなかなかったので、こちらの記事を読まれている方には馴染みがないかもしれません。

  • この連載では、まず「昭和ガメラシリーズ」そして「ゴジラシリーズ」を1本ずつ取り上げ、みなさんのご支持がいただけるようであれば、さらにそのほかの特撮作品についても取り上げていきたいと考えておりますので、ヨロシクおつき合いくださいませ。

    Act.1■大怪獣ガメラ

    監督/湯浅憲明、特殊撮影/築地米三郎
    キャスト/船越英二、山下潤一郎、安美千子、霧立はるみ、北原義郎、ほか。
    1965年/日本/78分

    1965年当時、東宝ではゴジラシリーズの『怪獣大戦争』などが公開されていて「ゴジラブーム」的な時代だったと思う。そんなとき「大映でも怪獣映画を」ということから社長命令で『大怪獣ガメラ』が制作されたという話しが伝えられている。この当時、前後して松竹では『宇宙怪獣ギララ』、日活では『大巨獣ガッパ』が制作・公開されているが、ゴジラに対抗するようにシリーズ化できたのは、このガメラだけである。

    すでにアイドル的な方向に傾きかけていたゴジラに対し、恐怖の対象として大怪獣を登場させるにあたって、モノクロを選択したのは正しかっただろう。正直なところ、以後の「子供の味方」になったガメラの方を先に観てしまっているので、巨大ガメの恐怖感というのは感じられない(これを最初に観たとしても同じだったかもしれないが)。しかし巨大な生き物が街を破壊していくというモノクロの映像の迫力は十分で、映像的には成功していると思う(ちなみに、スタッフ座談会によれば、大映としての最初の本格的な特撮映画ということもあり、技術的なこともあって、スタッフからモノクロでの制作が進言されたらしい)。

    古代アトランティスの伝説に語られる巨大なカメと火喰いガメという伝説を合わせ、さらにジェット噴射で空を飛んでしまうという突飛なアイデアもうまく処理してストーリーの中に収めている。
    ガメラ出現の発端は、北極海で核弾頭を搭載した国籍不明機が撃墜されたことによる核爆発であるが、ゴジラのようにその背中にテーマを背負ってはいない。
    確かに当時の、東西冷戦の状況や、始まったばかりの国内の原子力発電も顔を見せてはいるが、ガメラはあくまでも、ただ巨大なだけの生物という位置づけであり、その動物の本能によって街が破壊されたりするのである。これは、その後の『ウルトラマン』に登場する怪獣に近いもので、怪獣は自然災害のようなものという思想である。

    人間の身勝手な開発によって、生息環境を失った野生動物が街に現れて騒ぎになる、というのは現実にも見られるが、それと同様のことが巨大な生物によって起こされたものと考えればいい。
    ガメラに、人類に対する明確な敵意はない。生きるためにエネルギーを欲し、発電所を襲う。とはいえ人間社会に相いれない怪獣を野放しにはできない。そこで「ガメラを倒せ」ということになるのだが、通常兵器は核弾頭の爆発にも耐えたガメラには通用しない。そこで計画中だった火星探検ロケットに乗せて宇宙に追放しようという「Zプラン」が実行されることになる。
    通常兵器の効果がないからという消極的な理由ではあっても、生きたまま地球の外に追い出そうとするところに、人類を敵視し破壊を続けるのだからとにかく抹殺しようとする「ゴジラ」との違いを感じる。ラストシーンも、「ゴジラ」が抹殺されながらも暗鬱な雰囲気を残すのと違い、大空に向かって「ガメラ、さようならあ」と手を振る少年の笑顔というすがすがしいものである。
    また、「ゴジラ」が、第1作が常に基本にされるのと違い、「ガメラ」ではそのルーツではあってもこの第1作が特別視されることはない。
    確かにゴジラ同様、第3作からガメラの性格も変わっていくのだが、それでも人類と同じ地球に生きる生命のひとつという概念からだろうか、分離して捉えられることは少ないようだ。ゴジラのように死んでいないこともその理由にはあるかもしれない。
    まずは、シリーズ後半とは違った凶暴なガメラの造形を楽しむのが、本作の観方のひとつかもしれない。

    あわせて読みたい関連記事
  • 華の会メール・バナー
    PR

    オトナ世代の恋愛マッチング

  • 華の会メール・バナー
    PR

    趣味でつながる30代からの恋愛マッチング \華の会メール/

  • 給油口の位置が運転席から分かるって知ってた? 意外と知らないドライバーのための豆知識
    ライフ, 雑学

    車に潜む「モイランの矢」って知ってる? 給油口の位置を示す小さな矢印

  • 学生時代の“謎文化”が続々集結!「○○してたら恋人募集中」アンケート結果まとめ
    ライフ, 雑学

    学生時代の“謎文化”が続々集結!「○○してたら恋人募集中」アンケート結果まとめ

  • “視える世界”を歩く 霊能者監修「視える人には見える展 -零-」体験レポ
    オカルト・ミステリー, 雑学

    “視える世界”を歩く 霊能者監修「視える人には見える展 -零-」体験レポ

  • 男も日傘を差す時代へ アラフォー男性が1年日傘を使って感じたメリット
    ライフ, 雑学

    男も日傘を差す時代へ アラフォー男性が1年日傘を使って感じたメリット

  • イルカは「体当たりされるだけでやばい、でかい野生生物」
    ライフ, 雑学

    「イルカ=友好的」は間違い!元水族館職員の絵本作家が伝えたい“危険性”

  • ワクチン誤情報で命が失われた? 東京大学などが明らかにした「もしも」の世界(画像:PhotoAC)
    社会, 雑学

    ワクチン誤情報で命が失われた? 東京大学などが明らかにした「もしも」の世界

  • 詐欺電話に“うっかり出た”読者の実体験 あなたの不安に付け入る手口とは(画像:PhotoACより)
    社会, 雑学

    詐欺電話に“うっかり出た”読者の実体験 あなたの不安に付け入る手口とは

  • 画像:筑波大学発表プレスリリースより
    社会, 雑学

    ツクツクボウシの「合の手」に規則性 筑波大が発見

  • 汚れたサクラクレパスのお手入れ方法を公式が指南 巻紙は無料印刷も可能
    季節・行事, 雑学

    汚れたサクラクレパスのお手入れ方法を公式が指南 巻紙は無料印刷も可能

  • 不動産営業マン直伝、訳ありの「事故物件」をネット上で探す方法
    ライフ, 雑学

    不動産営業マン直伝、訳ありの「事故物件」をネット上で探す方法

  • 猫目 ユウWriter

    記事一覧

    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
    仮想空間「Second Life」やってます^^

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • コラム・レビュー

    複数社から発売された『墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)』を振り返る

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】262回 こいきな奴ら/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】259回 デザイナー/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】258回 わらってクイーンベル/一条ゆかり

  • トピックス

    1. 令和のインターネットを侵略完了!イカ娘コスの11年越しビフォー・アフターが話題

      令和のインターネットを侵略完了!イカ娘コスの11年越しビフォー・アフターが話題

      「人類侵略のため、11年の時を経て再びイカ娘になったでゲソ!」11年ぶりに同じキャラクターのコスプレ…
    2. 松屋「担々麺ハンバーグ」を実食 記憶が混乱するレベルに美味しい……!

      松屋「担々麺ハンバーグ」を実食 記憶が混乱するレベルに美味しい……!

      松屋は8月19日から一部店舗限定で「担々麺ハンバーグ」を販売中です。鉄板にのったハンバーグに担々麺が…
    3. 7億円の当せん番号決定の瞬間を目撃!「サマージャンボ」抽せん会参加レポ

      7億円の当せん番号が決まる瞬間を現地取材!サマージャンボ抽せん会レポート

      1等・前後賞合わせて7億円が当たる「サマージャンボ宝くじ」と、1等・前後賞合わせて5000万円が当た…

    編集部おすすめ

    1. たいちくんX投稿より

      ゆりにゃさん元パートナー、Xで未練吐露→ネットの反応は冷ややか

      インフルエンサー・ゆりにゃさんの、公私にわたる元パートナーである「たいちくん」こと齊藤太一氏が、8月17日に自身のX(旧Twitter)を更…
    2. 匿名質問文化を支えた「Peing-質問箱-」終了 2017年の誕生から8年

      匿名質問文化を支えた「Peing-質問箱-」終了 2017年の誕生から8年

      匿名で質問やメッセージを送れるサービス「Peing-質問箱-」が、2025年8月29日をもって終了することが発表された。運営は8月15日付で…
    3. マクドナルドのポケカ騒動 期間中の店舗を訪れた記者が感じた“異様な雰囲気”

      マクドナルドのポケカ騒動 期間中の店舗で感じた“異様な雰囲気”

      マクドナルドは8月11日、ハッピーセット「ポケモン」のポケモンカードキャンペーンを巡る混乱について公式サイトで謝罪しました。期間限定カードを…
    4. 「珍しい苗字」より盛り上がる? 地域特有の苗字をまとめた地図が話題

      「珍しい苗字」より盛り上がる? 地域特有の苗字をまとめた地図が話題

      大学進学や就職で交友関係が広がると、今までの人生で見たことがない苗字を持つ人と知り合いになることがよくあります。見慣れない苗字に遭遇したとき…
    5. 「オラと博士の夏休み」初のスマホ版がでたゾ!でも日本は対象外……

      「オラと博士の夏休み」初のスマホ版がでたゾ!でも日本は対象外……

      累計販売90万本を超える人気作「クレヨンしんちゃん『オラと博士の夏休み』~おわらない七日間の旅~」が、初めてスマートフォンで遊べるようになり…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト